【ニュース・イギリス】移民制度に関する移民諮問委員会(MAC)の調査結果発表

9月18日、政府の移民諮問委員会(MAC:Migration Advisory Committee)は、欧州経済領域(EEA:European Economic Area)からの移民がもたらす影響に関しての報告を発表した。
これは、2017年に内務大臣より委託を受けたMACが、EEAからの移民が下記の分野で及ぼす影響について調査したものである。

  • 労働市場への影響
  • 生産性
  • イノベーション
  • 投資と人材養成への影響
  • 消費者物価と住宅価格への影響
  • 公的財政への影響
  • 公共サービスへの影響
  • コミュニティへの影響

この報告書では、英国にとって望ましいと考えられる移民制度を提言しており、MACの委員長であり報告書の著作者であるAlan Manning教授は、同報告書の序文で、EEAからの移民に関して“優先的アクセス”を基本とはしないシステムに移行することを提言している。
移民は、技能、雇用、年齢、公共サービスの影響などを含む要素に基づき判断されるべきであり、“基本的には国籍で選ばれるべきはない”と報告書は論じている。
また、EEAからの移民と非EEAからの移民に違うルールを課すことについて納得できる理由がない、と報告書は付け加えている。
また、高技能の移民に門戸を広げる一方で低技能移民の入国を制限するという政策は、用いうる材料から見てふさわしいものであろうと報告書は述べている。

 

【各機関の反応】

 

○ラッセル・グループ(RG:Russell Group)/Tim Bradshow事務局長
この報告書は、EEAからの移民が英国の失業率を上昇させず、給与を低下させず国内労働者の技能訓練にも悪影響を及ぼさないなどといった一連の“蔓延している移民神話”を打ち砕いていると述べた。ただ、そうというものの、同事務局長は報告書を“がっかりさせられた”、“提言内容は実行不可能”であると述べている。また“就労ビザの定員数や居住者労働市場テスト(Resident Labour Market Test)*を廃止するだけでは、すでに破綻しつつあるシステムにおける負担と官僚主義を軽減するには十分ではない。これは英国をより現代的で理にかなった制度に導く真の機会であったが、提言には想像力が感じられず実行不可能だ”と主張した。あわせて、“MACの提案内容では、EEAからの熟練労働者は英国に入国するために過度のお役所手続きを苦労して通り抜けなくてはならない。この、英国が海外の優秀な人材にとってより一層魅力的になるべき、まさにその時期にだ。”と述べた。

 

○英国大学協会(UUK:Universities UK)/Alistair Jarvis会長
MACの提言を歓迎し、政府がこの機会に移民制度を国際的な教育者にとって利益のあるものに“作り直す”ことを望んでいると述べた。また、同会長は“現行のシステムが許容するよりも幅広い範囲で雇用者や技能を雇用する上でことに役立つような就労ビザの延長・柔軟性向上を行なうというこの提案を歓迎する。最小限の障壁で、幅広い技能レベルの海外からの教職員を雇用可能であるということは、我々の大学が引き続き世界的な成功を収めるためには不可欠なである。EU離脱投票によって海外からの教職員の立場が大変不透明となっており、EU離脱の最終協定が合意に達しつつある時にこの勧告が発表されたことが重要である。政府が、優秀な海外大学の教職員が英国を選択することを促すような新しい移民制度を早急に打ち出すことを願う。”と述べた。

 

*居住者労働市場テスト:英国の雇用者が非EEA地域からの移民の雇用を必要とする場合に、その必要性を確認するために求められる手続き。

 

MAC:Migration Advisory Committee(MAC)report: EEA migration
Pie News:UK: Second MAC report splits opinion

 

【参考】
Migration Advisory Committee(MAC)report: EEA migration[PDF:2.22MB]

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イギリス
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