【ニュース・イギリス】研究・イノベーションに関するアカデミーズの共同声明

7月19日、英国の7つのアカデミー※が、EU国民投票後の研究・イノベーションに関し、共同声明を発表した。

 

※7つのアカデミー:医学アカデミー、ブリティッシュ・アカデミー、王立工学アカデミー、王立協会、ウェールズ学会、エジンバラ王立協会、王立アイルランドアカデミー

 

<概要>

 

○英国の優れた研究・イノベーションの基盤は、経済・社会・文化的幸福の中核であり、我々に競争力の強さ、高い生産力と経済成長等をもたらしている。しかし、EU国民投票の結果、この優位性を保つのが難しくなると考えられており、現在の不安定な状況は憶測や多くの疑問を生じさせている。

 

○英国の各アカデミーは、それぞれの分野で最高の研究者やイノベーターを生み出し、英国及び北アイルランドが研究・イノベーションにおいて、世界をリードする立場を維持できるようにしていく。

 

○英国がこの卓越性を保ち、さらに伸ばしていけるよう、政府からの力強いコミットメントが求められる。

 

 

【人材】

 

 英国とEU加盟国の間での研究者の流動性は、優れた研究を行うための鍵であり、研究者、スタッフ、学生が不利益を被ることのないよう、強化されていくべきである。英国で働くEU諸国出身の研究者やスタッフ、あるいは今後それを希望する者がここで生活や仕事を続けられること、及び英国人研究者がEU諸国で経験を積めることについての保証が不可欠である。

 

【国際連携】

 

研究・イノベーションには、EUに提供されるような明確な長期的枠組みに頼るところが大きい。国際連携が研究に大きなインパクトをもたらしており、現に、英国の国際共著論文の60%はEU諸国のパートナーとのものである。地理的な利便性や歴史的な関係に加え、研究力も強いEU諸国の研究者との連携は、今後も英国が卓越した研究を続けるために必須である。EU諸国のパートナーに対しても、英国が現在及び将来の連携についてのコミットメントを示すことが必要である。

 

【財源】

 

・2007~13年の“枠組計画7(FP7: Framework Programme 7)”において、英国は£69億の研究助成を受けるなど、EUの研究プログラムは、英国の研究に非常に大きな貢献をしてきた。EU離脱により生じる研究助成の穴を埋めるため、短期的・中期的にどう対処していくか、喫緊の議論が必要である。その際、助成額のみならず、プログラムに参加することで英国の研究者だけで研究するよりもより大きな成果が得られたり、社会的利益のような共通の目標のために産業界とも連携する機会を得られたりする国際連携プログラムの特質についても議論されるべきである。

 

・加盟国として、英国は、EUの研究・イノベーションに係る政策形成に関わってきたが、引き続き英国のコミュニティがEUの研究・イノベーション政策に影響を与えていけるよう政府と連携していく。

 

【規制】

 

EU諸国を通じた共通の規則や規制基準が研究に関する人材、考え及びデータのための強い基盤を提供している。この共通ルールから外れると、英国が研究、学問、イノベーションを進める際の時間的・経済的な負担が増すことになる。EUの規則との調整が必要な規制分野を特定することは英国の競争力にとって重要であり、今後も規制基準の策定に英国の専門家が関わっていけるようにすることが不可欠である。

 

【前進すること】

 

政府がEUとの将来の関係について様々な選択肢を検討するに当たり、我々は、a)EUの研究プログラムとの最も達成可能な関係性を探ること、b)EU諸国からの優秀な研究者に英国で働く機会を与えるとともに、英国の研究者に他のEU諸国で働く機会を確実に保証すること、c)国際連携を促進し続けるための助成金を提供すること、によって、研究、学問、イノベーションにおいてこれまで築いてきた英国のよさを最大限守るよう、政府に要請する。

 

 

The Academy of Medical Sciences:Academies publish joint statement on research & innovation after the EU referendum

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