【ニュース・イギリス】留学生のもたらす影響についての移民諮問委員会の報告

9月11日、政府の移民諮問委員会(MAC:Migration Advisory Committee)は、英国内で留学生のもたらす影響についてまとめた報告書を公表した。同報告書では、留学生が、経済、教育機関、国内の学生、また留学生が住む共同体へと及ぼす影響について調査がされており、学び終わった後に英国に残る学生と英国を離れる学生の両方の場合について考察した上、政策的な提言を行っている。

 

提言は8の項目に分かれており、概略としては以下のとおりとなっている。

1 留学生の受け入れ人数に上限のない状況を維持すべきであること
2 政府と教育界は、留学生の人数を増やすために共同での作業を続けるべきこと
3 留学生は移民実数統計から除外されるべきではないこと
4 学びながら働ける制度や、被扶養者の権利は変更されないままであるべきこと
5 ビザ区分をTier4(注:留学ビザ)からTier2(注:就労ビザ)へと変更する申請の機会を拡大しうること
6 適切性について徹底した検討を要するものの、修士学生に対する卒業後の猶予期間を6ヶ月へと延長すべきこと
7 課程を終えた日以降も英国に滞在できるよう、博士号を得た後の12ヶ月の滞在猶予は元々のビザの有効期間に組み入れられるべきこと
8 英国でレベル6以上(注:大卒程度を指す英国内の能力証明区分)を取得している従来のTier4学生は、現在国内でTier4からTier2への切り替えを行なうことができる制度と同様に、二年の間国外からTier2ビザを申請できる権利を与えられるべきこと

 

MAC:Migration Advisory Committee(MAC)report: international students

 

【参考】
Impact of international students in the UK[PDF:2.22MB]

 

【メディアの反応】

 

○Pie News
英国の教育関係メディアPie Newsは、このことについて以下のように報じた。
博士課程修了後の就業権利に関して緩和があったものの、学術界から提案されていた学生数を移民統計数から外すことについては除外された。報告書では、博士号ビザの延長、1年間就労ビザ発行の標準化、修士課程在籍者への期間延長に関して論じられている。これは英国のSTEM分野(注:Science、Technology、Engineering及びMathematicsの各分野を指す)を支援するために必要と見られている。

 

学部生市場のために、Tier2(就労ビザ)申請のための期間の延長が提案されている。現行では英国高等教育機関からの卒業生は課程終了後4ヶ月以内に異なるビザの申請が可能である。MACはこれを2年に延長することを示唆したが、卒業生はその全期間中英国への滞在が可能であると期待するべきでないともしている。

 

MACの委員長であり報告書の著作者であるAlan Manning教授は「我々は、博士課程学生は卒業後自動的に1年間の滞在許可取得を与えられるよう提案した。これは現在の修士号の予備期間についてすべての学生に6ヶ月間の延長がもたらされ、就労ビザ申請の機会を広げるということである。」と述べた。
しかし報告書は英国大学協会国際部(UUKi:Universities UK International)などが提案している卒業後の新しい就労ビザの設定に関して推奨するには至らなかった。MACは、MACの提案で望ましい効果が得られるとしている。

 

英国大学協会(UUK:Universities UK)の会長及びリバプール大学学長を務めるDame Janet Beer教授は“主要な提案内容には失望している。留学生の数を増やすため政府と高等教育関係機関が協力を継続することには同意する。しかし、成長というものは、移民制度が、優秀な留学生が英国を選ぶことを奨励するような制度である場合にのみ可能である。”と述べた。
同教授は、UUKが一週間ほど前に、英国を留学生にとってより魅力的な場所にするであろう新卒業ビザについて提案したことを指摘した。同教授は“改善された新卒業ビザなら、我々を米国、カナダ、オーストラリアなどが実施しているものと同列の地位に押し上げるであろう。”と述べた。

 

Manning教授は報告書で、“我々の提案では、学び終えた後に自動的に滞在を許可される猶予期間に関して、異なる卒業後ビザから同じような効果が得られるようには提言しない”とされている。。
また、Manning教授はさらに、留学生に長期の猶予期間を与えても“最も高度な技能を持つ人たち”を支援することにはならないとしている。“卒業後就業期間を長くしない理由の一つは、英国に残った卒業生の一部は驚くほど低所得で、長期滞在で大卒レベルの職を見付けるといった恩恵を被る学生は、最も高度な技能を持つ人たちではない。”
しかし重要なこととして、Manning教授は、この主張のための証拠が“それほど強くない” と認めており、違う報告書が直接PSW(注:Post-study work。卒業後に大卒レベルの仕事をできる期間)について論じるよう求めている。
“そうした評価作業の後、より長いPSWが当然だとされるのであれば、我々の助言内容は変わる可能性がある”と、報告書は結論している。

 

移民諮問委員会は、高等教育界の人々が留学生にとって、より卒業後の門戸が開くことを期待していたということは承知していた。しかし、“PSWに関する我々の提案内容が教育界を失望させるであろうことはわかっている。だが、英国の教育に対する要求は外国人の労働権を元にするべきではない。”と報告書には記載されている。

 

Pie News:UK: MAC report recommends post-study work, but not a new visa

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