【ニュース・イギリス】産業戦略の中心となる大学の知識交換評価:TEF、REFに続く新評価制度KEF構想

2017年10月12日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE:Higher Education Funding Council for England)は2017年HEFCE会議にて行われた大学・科学担当大臣のJo Johnson氏のスピーチ内容の概略を発表した。

 

大臣は、大学の研究・知識交換について担当する新組織であり、UKリサーチ・イノベーション(UKRI:UK Research Innovation)に属するリサーチイングランド(Research England)に対し、高等教育イノベーション基金(HEIF:Higher Education Innovation Fund)への投資額増加の適切なレベルについての検討を依頼した。これはHEIFの年間の投資額を£2億5,000万(375億円*)にするべきというWittey Reviewの調査報告書の提言と、質の高い研究を支援するにあたっての根拠が必要であることによるものである。
大臣は商業化に成功した、既成概念を打ち砕くようなハイレベルの研究例としてNew York UniversityのRemicade(レミケード)やCancer ResearchのAbiraterone(アビラテロン)の事例を挙げた。

 

また、大臣はリサーチイングランドに対して、学生局(OfS:Office for Students)と共に、Keele University学長Trevor McMillan教授が主導して取り組んでいる知識交換評価制度(KEF:Knowledge Exchange Framework)に早急に協力することを指示した。KEFは知識の交換、交流、協働そして商業化を通じて大学が経済に及ぼす影響の大きさを測り評価するものである。知識主導型経済が今後進んでいく中で、大学は政府が注力する研究開発の中心となる役割を果たすこととなる。KEFは大学のパフォーマンス向上に貢献するばかりではなく、社会や地域へのアカウンタビリティも高めてくれるだろう。

KEFは毎年の高等教育調査(HE-BCI:Higher Education-Business and Community Interaction Survey)をもとに導き出される。今まで本調査により評価された大学は、HEIFのパファーマンス基金から資金提供がなされてきている。

 

HEFCEは科学関連予算から知識交換(knowledge exchange)に対し、1999年から予算支出を行っている。同時にHE-BCI調査の開発も行なってきた。HE-BCIは国際的、国家的、地域的な視点を含み、長期的社会貢献のための最も包括的なデータである。
HE-BCIの調査結果によると、知識の面について英国の実績は、初めてデータが発表された2003~2004学事年度の£25.3億から2015~2016学事年度は£42.1億と66%の伸びを示している。今年のデータでは大臣が主要分野とした分野において大きな成長を遂げている。大企業の収入は昨年に比べると5.1%、中小企業の収入は11%、知的財産の収入は13%の増加があった。

 

*£1を150円にて換算

 

Higher Education Funding Council for England:University knowledge exchange at the heart of the Industrial Strategy

 

<大学・科学担当大臣Jo Johnson氏のスピーチ全文>
GOV.UK:How universities can drive prosperity through deeper engagement

 

【各機関の反応】

 

ラッセルグループ(Russell Group)/Tim Bradshaw事務局長代理
我々は中小企業から多国籍大企業まで様々な企業や公共機関と提携をしてきている。メンバーの大学は年間20,000ほどの小規模企業と協力し、イノベーションや経済成長に貢献している。2016年はラッセルグループの卒業生やそのスタッフによる起業が688件に上った。これはまったく偶然の産物ではない。ラッセルグループの大学は知識交換にプライオリティを置いており、『研究から商業化へ結びつく発見数の増加』という政府の目標を共有しているためである。
知識化交換は幅広い活動分野と幅広い多くのパートナーに及ぶ。もし新しいKEFがすでに大学で行なっている素晴らしい業績を正しく判断しようとするのであれば、その多様性を評価のポイントに加える必要がある。大学とそのパートナーのために新たな有効なツールを作成しようとするのであれは、英国全体で行なわれている知識交換の全容を注意深く見極めて取り組む必要がある。

 

Russell Group:Knowledge Exchange Framework

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