【ニュース・イギリス】海外からの優秀な研究者の誘致と維持

 

2022年5月16日、英国大学協会(UUK)は現在のビザ制度の外国人研究者に対する問題に関する報告書を発表した。

 
英国の大学は科学とイノベーションの超大国としての英国の地位を確固とするため、英国政府の推進力を支持している。しかし、これには世界から研究やイノベーションに関連する優秀な人材が必要である。

 
政府は2027年までに研究開発(R&D)への投資を GDP の2.4%増やすという意欲的な目標を発表した。この目標を達成するために、政府は2024/2025年度までに R&D の投資を220億ポンド引き上げることを発表した。これは過去最高の支出増となる。

 
なぜ英国は研究者にとって魅力的な国なのか?

 
研究を行う魅力的な国として、すでに築かれた英国の名声を認識し、それに基づいて構築することは重要なことである。英国の国際研究実績は疑いの余地はなく、2007年以降 field-weighted citation impact において G7 国の中で首位にいる。

 
2018年に英国は世界で最も被引用数の多い出版物の14%を生産している。他の国と比べると英国は世界で最も被引用数の多い出版物の中で自国の研究の割合が最も大きい。

 
つまり、自分の能力以上の結果をだしている、ということである。

 

 
英国が研究に対する熱意である2.4%という目標を維持する場合、2030年までに研究開発部門には少なくとも15万人の研究者や技術者が追加として必要と推定される。英国人だけに頼るには不十分である。あらゆる環

 
境とキャリア段階の優秀な人材を引き続き誘致し、維持できるような研究界となる必要がある。

 
この事実は2021年の政府の人材・文化戦略においても容易に認識された。英国入国の方法を多様化し、広げるため様々な対処方法が紹介された。

  • グローバル・タレント・ビザは、海外の高い技術のある科学者や研究者が迅速かつ簡単に英国への入国ができるもの。
  • 卒業ルートの変更により、有望な若手の海外の卒業生が英国で熟練した仕事に就くことが容易になった。
  • 海外からの優秀な人材を英国に誘致するため「GREAT」というウェブでのキャンペーン開発を継続する。

これらの最近の移民改革は、海外の優秀な人材が、英国の科学や研究のエコシステムに貢献することの重要性を認識し、高等教育機関からも暖かく歓迎されている。しかし、2.4%の目標を達成し、国際競争の激化の中で引き続き海外からの研究者を誘致するためには、移民制度の更なる改定が必要である。

 
英国に海外の研究者を誘致し続けるにはどうすればよいか?研究者が目的の国や機関を決定するために考慮する点は様々ある。個人が何を優先するかはキャリアを通した研究者の状況や環境にもよる。英国が科学とイノベーションの超大国となる意欲を達成するには、我々はあらゆるキャリア段階において研究者を誘致するだけのものが必要である。

 
1.若手研究者(ECRs)の内務省への提案

  • ビザ申告費用を見直すための水準基準の責任を果たすべく、もし費用という理由で、もし競争的でない場合であったとしても競争国とは少なくとも同等であるようにする。
  • 申請者に対して移民医療付加金(IHS)の支払い全額を提示するのではなくビザの期間内に月払いを可能にするようにする。
  • ECRs の将来の進路に関する支援の重点を置く GREAT キャンペーンのウエブサイトの後半期の開発について、関係者と引き続き協力する。

 
2.中堅研究者(MCRs)の内務省への提案

  • 様々な家族形態をもっと含めるように「唯一の義務」のテストの見直しと改革。
  • 大家族の研究者のため経済的な負担を減らすため扶養ビザの料金の見直し。
  • 英国に定住する家族の支援として、特に住居、学校、育児支援など実用的な情報を含むGREAT キャンペーンウエブサイトの後半期の開発を関係者とともに協力する。

 
3.国際研究者

  • グローバル・タレント・ビザに合わせて扶養ビザで家族の申請者でも3年後に滞在許可証(LHR)を申請することを可能にする。
  • 申請者のビザの更新の時、ビザの更新費用を機関の間で移行できるようにする。

 
どのような問題に対処する必要があるか?

 
下記は現在研究者たちが直面している問題の事例を挙げている。

 
申請者は追加のビザや IHS の追加費用を避けるため、英国に短期滞在をしている。

 
ある機関では何人かの新規の研究者が、自身のビザ費用、家族のビザの費用、IHS の費用が大変大きな出費であると言い、支援を求めている。

 
5年間の Certificate of Sponsorship (CoS) を選択できる無制限の職務の場合、渡英のためビザの費用を支払いができる短期の期間で CoS を発行している事例がある。この機関ではビザの払い戻しや無金利ローン制度があるが、新規採用者は雇用が開始されてからのみ利用可能となる。

 
英国歳入関税局(HMRC)の規則などを含む複雑さから大学が雇用前に支援することは難しい。無制限の契約で雇用についているにもかかわらず、ある研究者はビザと IHS の費用が高額のため1年間の CoS しか発行されなかった。

 
高額な扶養ビザと IHS の費用は、研究者にとって家族を一緒に連れてくることが難しい。

 
ある研究者は副学長が主任研究員である助成金を原資とする研究員の職の打診があった。しかし、自分自身と妻と2人の子供のビザと IHS の費用を支払われないという理由から断った。その費用はトルコ人である研究者の通常の給与の10倍であることが分かった。彼はこの職種の唯一の候補者であり、大学は何度も再募集をかけたが未だに良い候補者が見つかっていない。

 
英国に留まろうとした研究者は同じビザに対して2つの承認書に署名

 
ある研究者は Tier4 の Doctorate Extension Scheme (DES) を取得していたが、期限付き雇用契約が切れるおよそ4か月前に期限切れることになっていた。彼は自身がグローバル・タレント1(研究もしくはイノベーションのプロジェクトで個人もしくはチームを指揮し指導できる)の基準を満たしていると考えて、上司もそれを確認した。彼は若手研究者でもあり申請時に職務契約が2年残っていないこと以外は、基準を満たしていたため Route 3 が好ましいとも考えたが、本人は Route 1 で申請を希望し、大学側は保証書を作成し彼の推薦申請を支援した。

 
しかし、承認はされなかった。再度の見直しを要求したが決定は覆さなかった。大学側は Skilled Worker のスポンサーの検討を始めたが、大変高額となり、ビザの期限切れと職務期限まであまり時間がなかった。

 
彼はグローバル・タレント4(Peer Review) で申請し、見事ビザを獲得した。従って、彼は同じビザであるにも関わらず承認書、扶養ビザ、IHS に対して大変な高額費用を2回支払わなくてはならなかった。

 
1月21日


英国大学協会(UUK)Attracting and retaining international talent  PDFファイル:こちら から


地域 欧州
イギリス
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
国際交流 国際化