【ニュース・イギリス】教育評価制度のさらなる前進

2016年9月29日、教育省(DfE: Department for Education)は、教育評価制度(TEF: Teaching Excellence Framework)の試行2年目における評価方法の詳細を発表した。

 

TEFの枠組みについては、2016年5月に高等教育白書で発表されており、これから試行2年目に突入する。2年目の評価は来年早期に実施され、2017年5月に金、銀、銅の格付けで発表される予定である。その評価結果は、2017年秋に大学に進学する学生に、最高の教育を受け、最良の結果を得られるであろう大学はどこかという明確な情報を提供することになる。なお、試行2年目の評価においては、学生の満足度、在籍率、就業状況等の成果に焦点が絞られる。

 

Jo Johnson大学・科学大臣は次のように述べた。“大学にとってのインセンティブを明確にすることで、評価制度は大学の質をより向上させ、学生の選択の幅を広げるとともに、卒業後に必要な技術力を有する雇用者の創出に繋がると確信している。また、この評価によって、学生に最良の教育場所に関する情報を提供するだけでなく、初めて大学における教育の質が研究と同様に重要視されることになる。”

 

一方で、2年目評価に係る技術的検討(Teaching Excellence Framework: year 2- technical consultation)に対する回答において、今後の制度改善の進め方や、数々の提案を最終的にどのように評価に取り入れるかなどの提案もなされている。

 

また、スコットランド、ウエールズ、北アイルランドの大学については、希望すれば教育評価制度に参画しうると発表された。本評価制度は、英国の4国家が有する高等教育の独自性等を踏まえ、公平に評価できるよう調整してきたものであり、TEFの英国全体での実施が望まれる。

 

評価の中心となる項目は、学生の満足度、退学率や就業状況などであるが、各大学が提出する追加情報も加味される。また、評価は教育・学習の専門家、学生代表、雇用者代表等からなる委員会によって実施される。

 

GOV.UK:Teaching Excellence Framework moves forward

 

【関係機関の反応】

 

・英国大学協会(UUK: Universities UK)
同協会の理事長であるDame Julia Goodfellow氏は“英国の大学はその質の高い教育で国際的に高い評価を得ており、学生に何を提供できるか、常に改善しようとしている。大学は補助金改革以降、教育への投資を増やしており、学生の満足度も記録的に高くなっている。今回政府は大学側の相談や意見を聴き入れてくれた。スケジュールの変更、TEFを次の段階に進める前に評価し、試行することは喜ばしい。政府、大学双方にとっての課題は、英国の多様な高等教育を効果的に評価しうる1つの枠組みを作ることである”と述べた。

 

Universities UK:Universities UK response to government Teaching Excellence Framework plans

 

・ラッセルグループ(Russell Group)
同グループの事務局長であるWendy Piatt氏は、“政府はTEFの検討過程で我々が提起してきた懸念を踏まえてくれた。指標やそのウェイトのかけ方等について、よりよい方向に向かっていることをうれしく思う。英国の優れた高等教育システムを真に反映できる教育評価制度の開発には時間を要する。我々は政府に対して試行期間を延長し、規制による負荷をかけることなく、より公平・適切に教育を評価できる仕組みを構築するよう求めている。”

 

Russell Group:Statement on TEF technical consultation response

 

【メディアの反応】

 

・BBC News
二度目の授業料上昇の動きが伝えられた。2018年秋入学の大学生の授業料は£9,500を超える見込みである。政府は、高額の授業料は教育の質に見合ったものになるというが、教育省が発表したTEFの実施計画によると大学は3つの段階(金・銀・銅)に格付けされる。この3段階に入った大学はインフレ率にあわせて授業料を値上げできるが、銅の評価は“質を満たしている”が、評価項目によっては水準より低いものがあることを意味する。
なお、2018年以降は評価結果に応じ、授業料の値上げ幅が変わる可能性がある。

 

BBC News:Tuition fees heading over £9,500

 

・ガーディアン紙
政府は(TEFの実施により)教育の質に基づく新たなランキングができると発表した。学生は金・銀・銅の大学から進学先を選ぶことになる。
評価項目には、退学率、学生の満足度、卒業生の高技能職への就職率等も含まれており、どれも教育の質を直接測れるものではないとの意見もある。

 

The Guardian:English universities to be ranked gold, silver and bronze

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