【ニュース・イギリス】学生の財政状況に対する理解

 
2019年5月14日、ラッセルグループの上級政策分析官のDavid Thompson 氏は学生財政システムの既往に関してGuardian紙に寄稿した。

大学の財政の仕組みを多くの人、学生や卒業生、親に尋ねたところで正確な答えなどはかえってこないであろう。
 
多くの人々は、学生は5万ポンドの負債を持って卒業し、そのローンは高い金利を有すると聞かされてきただろう。学生ローンが支払い開始時期、猶予期間を条件としており、また「返還が収入次第である」ことを人々は前もって知っておく必要がある。最新の報告書によると、学生のたった40%しか、学生ローンの仕組みを正しく理解していないと思っている。ローンに適用される金利(RPI+0-3%)は、月々の返済の負担とはならない。卒業生の83%はローンの全額を返済しない。このことは、このシステムの意図的な特徴である。
 
ここまでのことが理解できただろうか? いや全く理解できていないだろう。本当に驚くことではあるが、そこに問題がある。学生の財政に関して広がりつつある誤解は、ローンシステムが持つ、大部分が進歩的で低価格で融資されており、学費支払い困難な人の補助をする、というポジティブな特徴を分かりにくくする。このシステムは完全ではないが、能力と意欲を持った若者が背景に関係なく大学に進学できるように計画的に設計されてきた。人々は、年収25,725ポンドを越えて初めて返済を開始することになっており、返済から30年が経過すれば、残額がどれだけ多額であっても小額であっても、負債は消滅する。高所得者が最も貢献することになる。
 
政府はなぜ学生ローンを、現実には全く異なるものであるのにもかかわらず、クレジットカードや銀行ローンなど普通の負債と同一視するのか。現在、絶望的な返済額が書かれた明細と毎月生じる利子のリストが、一年ごとに卒業生に送られてくる。その数字はまったく返済合計額とは関連がないものである。なぜだろうか。
 
明確な方針がないため学生ローンは正確に伝わってきていない。そのため、学生、卒業生は、個人的レベルでは十分な情報に基づく財政決定をすることに至っていない。例えば、我々は一部の卒業生が学生ローンを早期に返済するために、まだ到底全額返済が出来ないような低所得にもかかわらず、親からの借金や遺産を使うことがあると聞いている。
 
そして政治的には、現在のシステムの状況をめぐる混乱が、あらゆる政府にとっての重要な問題、すなわち我々がどのように高等教育に支出し、その請求書が学生と納税者どちらに送られるべきか、について議論する意欲を低下させている。
 
授業料についてのあなたの考えがどのようなものであろうと、我々はより正確な情報に対する必要性について同意できるはずだ。ラッセルグループにおいて、我々はMoney Saving Expertの創業者であるMartin Lewis氏とともに、より明確にシステムを説明し、無益で誤解を招く「負債」という言葉から解き放たれるよう、新たな卒業生のためのローン明細書を作るよう働いてきた。
 
我々は、卒業生が人生を通じて支払うことになるであろう金額を、卒業生の収入を基に算出する方法を有している。我々の提案する明細書は、大多数が30年の返済期間後帳消しにされるローンがあるが、実際どれだけ返済するかを表示している。この明細書に対しては6,000人対象のオンライン調査において、90%が支持した。ローン返済の最終日を示したり、月々の拠出の内訳を示すような新たな特徴も、同様に人気だった。
 
我々は、現在閣僚に対し、改良された明細を適用するよう求めている。政府の18歳以降の教育やファンディングに関する現在の見直しは、絶好な機会を提供するだろう。首相が見直しを始めたとき、授業料の額が再検討されたとしても学生ローンについてはやめるつもりが無いであろうことは明らかだった。そして、今こそシステム設計に関して公的な信用を構築する時である。我々が紹介した学生ローン明細は更なるプロジェクトの一部に過ぎない。しかし、学生ローンの意識改革をするための更なる透明性や意味ある数字と、我々がこれまで考え抜いてきた努力は、新しいシステムに導くことができるであろう。

 
2019年5月14日
 
Russell Group:Understanding student finance
 

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