【ニュース・イギリス】学生の負債は£50,000以上に上昇(英国財政研究所発表)

2017年7月5日、BBCは英国のシンクタンクである英財政研究所(IFS:Institution for Fiscal Studies)の実施した学生の財務状況報告で、学生が学生ローンを借りた場合の借金は、卒業時に利息6.1%も含めて平均£50,800に上るということ発表した。
利息は入学直後から発生し、卒業時には利子だけで平均£5,800になっている。この利子は“高利”であり、他のローンと比べてもかなり高いと分析している。

 

報告書は、学費が£9,000に値上げされた2012年と£3,000であった2006年とを比較している。 学生ローン返済開始の収入基準も£21,000に上昇したため、卒業生で収入が低い者のほうが以前より恵まれている。返済開始収入基準は2012年より凍結されており、以前のローン返済制度に比べ、現在の方がすべての収入レベルにおいて状況が悪化している。
恵まれない環境にある学生は生活支援をより必要としているが、現在は返済不要の奨学金ではなくローンで支援を受けるため、卒業時には高額の負債を抱えることになる。
利子の上昇及び学費が年間£9,250に値上げされたことにより、卒業生の負債額が増加し、高所得者は利子だけでも£40,000を支払うことになるであろう。
報告書の著者Mr. Belfieldは、「現在のマーケットと比較しても、学生ローンの6.1%という利率は非常に高い。」と述べている。
しかし卒業後30年間返済がなければ、債務は免責される。報告書では、50歳代でも返済し続けている者がいる一方で、4分の3がまったく返済をしていないという現状があるとしている。
また政府は2012年以前の学生ローンがすでに売却開始されているように、学生ローンを個人投資家に売却することを望んでいる。

 

現在のシステムで恩恵を受けているのは大学と政府の財政であると報告書では述べている。大学は政府からの財政支援がなくなることを考慮して、学費を£9,000に値上げして以来、学生一人当たりに対する助成金を25%上昇させた。奨学金から学生ローンに切り替え、ローン返済基準金額を凍結したことで、政府は財政的負担を減らした。
卒業生のうちの3分の1を占める低所得者は、返済基準開始収入が£21,000になった2012年に比べ、30%も多額の借金を返済している。学生に負担が行くようになってから政府は長期的に£30億の負債を減らしたことになる。

 

総選挙での労働党の想定外の躍進は、毎年若者の間で話題となる学費廃止を選挙公約に取り入れたことである。
報告書では学費を廃止した場合の費用は年間£110億であると分析した。しかし「高額借金、高利子、低返済率」という状況を続けていた場合、卒業生と公共財政の両方に問題となると警告している。また最近の傾向として、大学独自の資金調達の増加、政府の高等教育に対する出資の減少の一方で卒業生、特に高所得の卒業生に対する負担の大幅な増加が特徴として挙げられている。

 

BBC News:Student debt rising to more than £50,000, says IFS

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