【ニュース・イギリス】大学2年制の実現が近づく

2017年2月24日、教育省はより柔軟な教育制度と学生の選択肢の増加を目指した高等教育研究法案の修正案を発表した。最大の修正点は現在より中身を凝縮した2年制コースの設立である。

 

国会での承認が得られれば、2年制コースは授業料の上限をより高額に設定できる。これは多くの大学が現在の年間の授業料収入を確保する必要があるため従来の3年制コースを2年制にはできないという意見を踏まえて、授業料の設定にも柔軟性を持たせるためにできたものである。

 

政府は二度目の法案審議に先立ち、短縮コースの高額授業料の設定の仕方等について協議することとしている。その他の主な修正案は次のとおり。

  • 学生が習得単位を保持し、他の大学に移り易くするための修正。
  • 学生局(OfS:Office for Students)に対し、全てにおいて大学の機関自治を考慮するよう求める修正。
  • 大学の評価基準が高等教育関係機関によって決定されることを保証。
  • 個々の研究提案はその分野の専門家によって審査・決定するという“Haldane Principle”を初めて法律上に明記。これにより、今後すべての政府はHaldane Principleを考慮し、UKリサーチ・イノベーション(UKRI:UK Research and Innovation)の助成金や方向性を決めることになる。

Jo Johnson 大学・科学担当大臣は“制度の変更は長年の懸案であり、今回の法案は新しい学び方を導入するものである。学生は、入学後、現場で必要とされるスキルを身につけ、早期に職場に復帰できるようなコースを切望している。多くの学生のためにこれまでの3年制コースは残すが、選択肢がそれ一つではいけない。そのため学習に真の柔軟性をもたらすこの修正を提案する。

 

これらの修正は質の妥協や学位取得までの費用が上がることにはつながらない。短縮コースの学生の授業料が、より長い期間で同じ学位を取る者の授業料総額を上回ることはない。むしろ、学位取得までの期間が短くなることで生活費を節約でき、労働市場により早く入ることができるようになる。”と述べた。

 

GOV.UK:Two-year university courses come a step closer

 

【関係機関の反応】

 

○英国大学協会(UUK:Universities UK)
同協会の Dame Julia Goodfellow 会長は“より柔軟な高等教育制度を促す提案は、これによって様々な学生や雇用者の需要を満たし、その質が保証されるのであれば、とてもいいニュースである。

 

いくつかの大学では、すでに2年制や短期で学位を取得できるコースを提供しているが、現行システムでの需要は限られていた。多くの学生は現行の3年制を選択するであろうが、助成金や授業料のシステムを変えることで、より柔軟な制度となり、学生も興味を示すようになることはよいことである。

 

高等教育研究法案の修正案は非常に前向きな一歩であり、政府が、学術のレベルや大学の自治を懸念している高等教育機関の意見を聴き入れたということでもある。

 

また、教育評価制度(TEF:Teaching Excellence Framework)の修正案についても学科レベルでの導入時期やより厳格な研修の必要性について、我々の懸念を聴き入れてもらえたことをうれしく思う。”と述べた。

 

Universities UK:Response to minister’s plans for higher education reform

 

○ラッセルグループ(Russell Group)
同グループの事務局長代理である Tim Bradshaw 氏は“我々は高等教育における多様性と改革を支持し、政府が短縮コースの適切な収入についても受け入れてくれたことを歓迎する。数々の理由により、研究集中型大学には全日制の3年制コースが適している。現行の3年制の学生に悪影響を及ぼすことなく、短縮コースをどのように導入するか慎重な判断が必要である。”と述べた。

 

Russell Group:Two-year accelerated degree courses

地域 西欧
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組
行政機関、組織の運営 政策・経営・行動計画・評価
大学・研究機関の基本的役割 教育
人材育成 学生の多様性