2020年11月12日、高等教育政策研究所(HEPI)は、大学卒業者間の性別による賃金格差について考察した新たな報告書 “Mind the (Graduate Gender Pay) Gap” を発表した。
当該報告書では、どのように大学卒業者間の性別による賃金格差が時と共に変化してきたのかを考察し、その持続性を理解するためにこれまで
蓄積したデータ及び文献そして新たなデータ及び文献を使っている。報告書によると以下の点が指摘されている。
- すべての大学卒業者間の性別による賃金格差は、学部、出身大学の種類、以前の成績、社会的背景や民族性からは説明されていない。
男性は、より地理的に移動することを厭わないように思われる。これは出世の見込みを高める可能性が高いこともある。しかし、女性の
可動性を高めても、賃金のばらつきが大幅に縮小される可能性は低い。 - 男性は、女性よりキャリアの調査に重きを置いており、彼らは大学在学中からより早い段階でキャリアプランを立て始め、より多くの
応募書類を作り、一度応募をすれば、諦める可能性はあまりない。また彼らはより自信があること(おそらく自信過剰)も誇示し、
応募する仕事により投機的である。 - 一方で女性は面接を受けるとすぐ採用される可能性が高く、大学を卒業する際、雇用されなくなる可能性はあまりない。これは、女性
がより効率的に就職活動を行っていることによるかもしれない。しかし、それは女性が応募する仕事にあまり野心を持っていないことを
同様に反映しているのかもしれない。 - 女性は、男性よりパートタイム雇用で働く可能性が高く、これは大学在学中や大学卒業直後でもこの傾向が高い。一方で男性は大学在学
中にインターンシップに行く可能性が高く、これは仕事に応募する際に有利になる可能性がある。 - 雇用に対する態度に違いがある。女性よりも男性の割合が高い場合、高い賃金は良い仕事の証となる。一方で、女性は、安全かつワーク
ライフバランスがとれ、良い企業文化を持ち、自分の生きがいに貢献できる仕事を探す可能性がより高い。 - 女性は平均的に賃金があまり良くないにも関わらず、男性と女性は同様に仕事に満足している。
- 女性は男性より賃金が低いことを予期している。
また、報告書は以下のような提言を行っている。
- 高等教育機関は、大学卒業者間の性別による賃金格差の情報提供を促進すべきである。これにより学生は、自身の環境において
最良の決断をするためのキャリアプランを立てることができる。 - 大学は、女子学生がインターンシップ行くことを助けるため、特別に努力をするべきである。
- ラッセルグループや特別な分野を持つ大学は、特に卒業後の男女間の賃金の大きな格差の原因を調査し、それに対処するため
に適切な行動を起こすべきである。 - 雇用主の団体は、この報告書の調査結果を踏まえ、特に雇用慣習における無意識の偏見の可能性についてメンバーに警告し、
名前を伏せた採用を行うよう奨励すべきである。 - 現行の機会均等の法に基づいて事業をしている雇用主は、女性に対してインターシップやオンラインでの仕事の機会を提供する
など、特別に努力をするべきである。 - (大学における性差の平等性を測るために)大学を卒業した男性と女性の相対的な賃金は、大学ランキングの指標に含まれる
べきである。
なお、性差に基づいた影響を考慮して、政府、大学ランキングの編集者などはプログラムの価値や大学の評価の測定方法に賃金の比較を
使うべきではないとも提言している。
高等教育政策研究所(HEPI):
New report finds focus on graduate pay as an indicator of institutional quality is sexist in its implications and effects