【ニュース・イギリス】ホライズン・ヨーロッパに英国が参加するために確保していた資金が財務省に返還される

 
2023年2月21日、Science Businessは、英国がEUの研究プログラムへの参加もしくは、プランBのために確保していた16億ポンドを返却したと主要な圧力団体が発表したことを伝えた。英国政府は、2022/23年度の中央政府供給予測(Central Government Supply Estimates)を発表し、その中でビジネス、エネルギー、産業戦略省が、これまでホライズン・ヨーロッパもしくは国内の代替の計画に割り当てる予定であった16億ポンドが財務省に返還された詳細を報告している。

 
このニュースは、Campaign for Science and Engineering(CaSE)というロビー団体の事務長であるSarah Main氏によって明らかにされた。「政府は繰り返し研究開発予算は確保されており、その資金はホライズン・ヨーロッパ関連の研究開発費に割り当てられると述べてきた。」「研究開発費の16億ポンドの返却は、首相が主張する英国の未来にとっての科学とイノベーションの重要性と、その課題に取り組むため成立したばかりの新しい省庁の成立に傷をつけるものである。」とMain氏は述べた。Main氏は、政府に対して「科学とイノベーションのための野心に伴う、協調ある行動」と「政府全体の投資および、返却や誤った第一歩ではなく、政府全体への投資」を行うことを求めた。

 
英国王立協会(Royal Society)の会長であるAdrian Smith 氏は、CaSEの声明に対し「EUの研究プログラムへの英国参加を確実にするために行った全ての取組の失敗が、今まさに英国の科学は16億ポンドの損失となってしまった。この損失には、共同研究を継続するために英国を去った優秀な研究者も含まれる。英国を科学超大国とするという使命とどう折り合いをつけるのか?」と述べた。

 
この動きは、英国の科学界における世界的な地位を脅かすとロンドン大学衛生熱帯医学大学院の大学院長のLiam Smeeth 氏は述べた。また、英国はCovid-19の流行の対応での役割からも分かるように、健康研究では世界トップの大国であるという正当な評判を受けている。「英国がホライズン資金提供プログラムに対し引き続き完全な役割を果たすための合意が得られないことは、これまでの成功を著しく脅かす。EUの資金提供プログラムへの完全参加は第1の目的としてあり続けなければならないが、そのためにも、相当な政治的な手腕と覚悟が必要である。」と述べた。

 
今日まで、EU離脱のため発生した科学資金不足の穴埋めを約束すると政府は述べてきたが、「この動きはそのようなことはなく、科学とイノベーションへの投資の大幅な削減、EUの資金に関する不確実性の継続をもたらす。」とSmeeth 氏は語った。

 


HM Treasury:Central Government Supply Estimates 2022-23(PDF)
Science Business:Money set aside for UK participation in Horizon Europe returned to the Treasury


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