【ニュース・イギリス】英国政府は「プランB」の資金展開を行うため、EUは英国からの資金を失う

 
2022年12月23日、Express紙はEUの800億ポンドの名誉のあるイノベーションプログラム参加のため、英国は150億ポンドの資金を用意していたが、EU離脱の激しい確執により英国の参加が禁じられていることを伝えた。

 
つまり、EUは、英国がこの名誉ある800億ポンドのイノベーションプログラムに参加するために用意していた資金を失うことになる。しかし、科学担当大臣であるGeorge Freeman氏はExpres.co.ukに対して、英国はその資金を「より良い」代替計画に資金提供することができると語った。2020年のEU離脱後の貿易・協力協定の一環として、英国はホライズン・ヨーロッパに参加するための交渉を行っていた。これにより、英国の研究者は名誉あるEUの重要な科学プログラムであり、その助成金を利用し、ヨーロッパの研究者とともに量子コンピューターから人工知能、気候変動の研究など研究に参加するはずであった。

 
英国は参加のため150億ポンドを用意し、それをブラッセルに支払って参加する予定であった。しかし、EU離脱の激しい対立の中で、EUは英国に対して北アイルランドの議定書の問題が解決するまで参加が保留することを告げていた。2年たった今でもこの問題は解決されておらず、助成金を約束された英国の何百人もの研究者は、中途半端な状態に置かれている。そして、現在、大臣は「時間切れである。」と警告している。

 
Freeman氏はExpres.co.ukに対し、英国が参加しない年ごとにEUは英国からの資金を失うことになると語った。また、「我々はホライズン・ヨーロッパへの支払金にまたがって、電話での知らせを待っているような状態である。ヨーロッパへのメッセージとして我々は現在その資金を別の形で国際研究に出資しようとしていると伝えたい。」「8年間のプログラムで、我々は資金を確保していたが2年間が無駄となった。EUは英国が出資し獲得するはずだった資金を失おうとしている。そのため我々はその資金を他の分野に投資することができ、今後順次展開していく。」
このプログラムの最初の4年間のため、財務省は2024/25年度までホライズン・ヨーロッパやそのほかの欧州連合の科学プログラムへの参加費用、もしくは国内の代替プログラムの資金提供として69億ポンドを確保している。

 
今週のFinancial Times によると、Rishi Sunak首相はFreeman氏のホライズン・ヨーロッパに対する「大胆なプランB」の「適切な青写真」の作成を急ピッチで行うように命じたが、既にFreeman氏は手掛けているようである。例えば、今週、政府は当初2021年11月に始まったホライズン・ヨーロッパを通じてEUの助成金を受け取る予定であった英国のホライズン・ヨーロッパ申請者の支援の延長を発表した。

 
Freeman氏の「プランB」の一環として、EUのプログラムからはじき出された研究者を支援するため、非常に強力な研究支援制度を立ち上げる予定である。Freeman氏はホライズン・ヨーロッパの主な利点の一つとして、またEUのプログラムへの参加の門戸を閉めない理由は、ヨーロッパ研究会議の研究支援制度での助成金獲得者にとって「大変な権威」であり、研究者にとって「名誉の証」であるためである。

 
現在英国では約120人のERCの資金を受けている教授たちがいるが、EUはその資金提供を維持するためにEUもしくはホライズン・ヨーロッパの参加国に居住するように警告している。Freeman氏は「我々は研究支援制度に対して真剣に取り組んでおり、大胆なもの、刺激的なもの、特定の分野で興味のあるものなどににすることができる。我々の研究は高く評価されており、もし我々が非常に真剣で、潤いのある資金があり、賢く構成された英国や国際的な査読の研究支援を開始することになれば、もし人々が真剣に見てくれない場合、私は驚くと思う。」と述べた。

 
Freeman氏は、失う可能性を考えるのではなく、EU計画の外で何ができるかということを構築していこうとしている。先週Freeman氏が訪れた日本のような他の科学超大国との協定を結ぶこともその一環としてある。「私たちとの協力に非常に熱心な国が世界中にあり、2年から5年で我々は非常に強力で、よりグローバルでより具体的な問題に的を絞り、小規模産業や中小企業の関与を優先させた良いものができるようになるであろう。」Freeman氏は、米国、韓国、カナダ、オーストラリアに至るまで科学分野での提携を希望している国のリストを発表した。

 
すでに多くの研究者たちが味方となってはいるけれども、Freeman氏は研究界を味方につける必要がある。英国では、ERCの研究支援が約束された研究者の10%はEUに移住した。その研究コミュニティの多くは、英国科学の将来のためにもホライズン・ヨーロッパへの参加は重要であることを繰り返し述べている。

 
University of Sheffieldの研究政策教授であるJames Wilsdon教授は以前、Express.co.ukに対して「Freeman氏は「大胆なブランB」があると主張しているが、それは決して一晩にして築けるものではない」と警告している。Wilsdon教授は「大規模な提携ネットワーク・プロジェクトの再構築のためのプランBは実際にはないのである。英国が世界の科学の最前線にあり続けるという野心を失速するものであることは確かである。」「共同研究は一般的に質が高く、影響力があるという点に十分な証拠がある。多くの分野では重要なグループとの共同研究をしないのであれば、重要な問題解決に取り組むことはできない。」「EU離脱後の状況であっても、EU以外の国でホライズンに参加している国は多くあり、政府はEU離脱をしてもこのプログラムに留まることを常に言っている。つまり参加しないということは英国の科学界にとって必要のない自傷行為となるのである。」と述べた。

 


Express紙:EU losing billions of UK’s cash as minister poised to ‘roll out’ funds for ‘Bold Plan B’


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