【ニュース・イギリス】2023年のEU離脱後の基本計画:英国が「科学超大国」を目指す方法

 
2023年1月2日、Express.co.ukは2023年の年頭の科学大臣George Freemanとのインタビューで、2023年の科学技術分野における目標を伝え、英国は「科学超大国」への道を歩むことができると主張した。この主張は何年も前から言われ続けており、近年の歴代の首相が、数年間で英国を科学技術分野の最前線に押し上げるという公約をあげている。しかし、財政省の財政が圧迫される中、財務大臣であるJeremy Hunt氏が秋の予算案でNHSなどの公共サービスを優先することが予想され、研究者は資金削減を恐れている。しかし、多くの業界を驚かせたのは、科学技術分野はそれを免れ、代わりにHunt氏は英国を「世界第2のシリコンバレー」にすると公約を掲げた。

 
とはいうものの、多くは「科学超大国」という言葉を作ったと主張するFreeman 氏に多くの仕事が委ねられることになる。実際、科学・研究・技術・イノベーション担当大臣は英国の予算の75%である年間110億ポンドに対して責任を負う。科学担当大臣は「科学超大国」となることは十分可能であると信じており、そして、今年はそれを利用するための大きな機会があるという。

 
Freeman氏はExpress.co.ukに対して、「科学や技術は英国の成長のためだけでなく、地政学的安全保障にとっても基盤的なものである。その理由として、我々は世界の競争にあり、また中国とロシアへの敵対心を理由として、科学と技術を利用する準備ができているからである。」

 
「英国にできることは、真の科学や技術、専門知識及び集結力が必要とする世界中の緊急課題の特定の分野に的を絞ることである。」

 
「例えば、極地研究である。北極、南極は地政学的にその価値が高まっており、衛星通信という面からも軍事的な争いが絶えない。我々は、北極と南極を攻撃的な主権獲得者から保護し、軍事的な工業利用から確実に守る強い国際リーダーである。」

 
「しかし、地球の両端には巨大な科学の機会がある。英国はリーダーとしては適任者である。南半球、英国南極観測所、南太平洋は英国、チリ、オーストラリア、ニュージーランドに属している。」

 
Freeman氏は、それらの国々と多国間協定を結び、科学超大国の組織を築く可能性がある事を示唆した。また、北極においてカナダ、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、グリーンランド、フィンランドと共同協定を結ぶ機会があることを述べた。

 
Freeman氏は、「我々はそれらの国と大変良い関係にある。私はNorthern Ministerial Baltic/Nordic Science Forumの議長を務めており、すでにそれらの国々に対してもっと協力し、もっと投資し、局地研究の奨学金を設置し、データ共有をしたいと提案した。」

 
これらは全て気候変動から人工知能までのあらゆる研究に取り組む研究者に対して助成金を提供するEUの800億ポンドのホライズン・ヨーロッパから英国が除外された後に起こったことである。これはEUの主要なイノベーション計画で、英国の研究者がEUの名誉ある助成金を利用してヨーロッパの研究者と共同研究を実施することができるものだった。

 
2020年に貿易・協力協定の一部として、英国がプログラムに参加することが合意された。しかし、北アイルランド議定書の論争で、EUは英国に対して政治的な闘争が解決するまで参加を認めないことを報告した。

 
英国の科学界は、提携が重要であることを何度も主張し、英国はこのプログラムに参加しなければ「科学超大国」の地位にたどり着かないと警告してきた。

 
一方、Freeman氏は提携が重要であることに同意しており、EUの名誉あるホライズン・ヨーロッパへの参加も含めてその重要性を認識しているが、Freeman氏のプランBは「もっといい選択」である可能性を語っている。Freeman氏はいまだに政府が参加を優先としているため、科学界の進歩を妨げているように見える3年間の遅延を終了させるため、EUからの連絡を待っている。

 
しかし、その計画外で英国ができることはたくさんあり、Freeman氏は英国の科学者に多くの期待をもたらすはずであると主張している。Freeman氏のプランBにおける主要要素の一つは、ヨーロッパの共同研究をなくしてその穴埋めとして多国間提携をもたらすという目標である。

 
その他に取り組むべき分野は宇宙である。中国、ロシア、米国は多くの衛星を打ち上げている。特にルールはなく、いわゆる無法地帯である。宇宙の残骸問題も大きい。昨年ずっと我々はビジネスライクな規制が宇宙にも必要であると発言してきた。衛星を打ち上げる際には最初から空中のメンテナンスを行い、回収もできる必要がある。

 
「英国はこの分野でもリーダーであり、宇宙の持続可能に対処している国々と国際クラブを設立したらどうだろうか?それにはEU圏ではない宇宙の分野に長けているカナダ、ノルウェー、スイス、日本、オーストラリアが参加することになる。」

 
全体として、Freeman氏は英国が科学超大国の地位に達するためには6つの重要な課題があることを主張している。それには世界クラスの科学の競争の激化、世界の利益のために世界的なインパクトを作る、より多くの世界的な研究開発の投資の誘致などが含まれる。Freeman氏は「引き続き、世界クラスの研究で競争を行う」ことを確実にするため研究資金と研究者のキャリアのエコシステムの改革が必要であることを主張している。

 
しかし、ホライズン・ヨーロッパへの不参加とは別に、研究界ではまだ課題があり、科学担当大臣の最終的な目標を脅かす可能性がある。例えば、Freeman氏は英国の前首相であるBoris Johnson氏の辞任騒動で科学担当大臣を辞任した後、3か月間科学担当大臣不在の期間があった。

 
Freeman氏は、EUとのホライズン・ヨーロッパの交渉中であった英国にとって「失われた3か月間」であったことを認めた。しかし、University of Sheffield のJames Wilson教授は、次期役職に就くものは大臣不在の間に積み上げあげられた「膨大なやることリスト」を手に入れることになることを警告している。再度同じ役職に任命されたFreeman氏にとって、その損害を取り戻すのは彼次第である。

 
研究界によって、博士課程学生や若手、中堅の研究者の給与が低いことが問題視されており、UKリサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)からの更なる資金提供を要求している。しかし、Freeman氏はこれについても取り組んでいることを述べており、「科学超大国やイノベーション国家の使命の一環として、若手、中堅、引退間近の研究者への待遇の向上をしなくてはいけないことを明確にしている。まず、最初に中堅研究者に対することを新年から開始するが、ホライズン・ヨーロッパの影響をもっとも強く受けるのは我々であるということを確認したいと考えている。


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