【ニュース・イギリス】内務大臣の「深く分断する」発言に対して英国の関係機関の反対のキャンペーン

 
2022年10月14日、Pie Newsは、内務大臣による留学生とその扶養家族のビザの削減を意図する発言が相次いだことで、国際教育関係機関による反撃が続いていることを伝えた。University of Liverpoolの学長であり、以前英国大学協会(Universities UK: UUK)の会長を務めたJanet Beer氏は、内務大臣であるBraverman氏の発言に対して、「厄介で警戒するべきもの」であるとした。保守党大会でのBraverman氏の発言は、急速に注目を浴びたとして、Beer 氏はPolitics Home の記事で語っている。

 
Braverman氏の発言によると、英国に来る留学生があまりにも多く、決して成長に貢献しているわけでもなく、あまりに多くの扶養家族を連れてくるというので、Beer氏は、「ざっとデータを見ただけでその発言は間違っているということがわかる。」と述べた。「留学生は少なくとも年間259億ポンドの英国経済への純貢献者である。留学生からの恩恵を受けていない選挙区など一つもない。」と続けた。Beer氏は、Braverman氏の選挙区であるFarehamも含まれており、年間2,000万ポンド以上の純利益があると指摘した。

 
また、Beer氏は2030年までに教育輸出収入を350億ポンドに増やすという複数の省にまたがる政府の戦略目標を読者に伝えている。「これは英国全体で莫大な利益をもたらすことを認識する恥じることのない成長推進戦略であり、留学生は教育輸出収入の約70%を占めており、これが逆行することになれば、この野望の実現への大きな打撃となるであろう。」と述べた。Braverman氏の扶養家族に関する発言は、大学院の学生のみについて語っており、学部生は扶養家族を連れてくることが認められていないため、多くの関係分野では大学院の学生が不公平にもやり玉にあげられていると感じている。

 
英国留学生問題評議会UK Council for International Student Affairs: UKCISA)の最高責任者で高等教育専門のウエブサイトWonkHEにも記事の執筆をしているAnne-Marie Graham氏のコメント:

 
「世界レベルの教育の機会をどうして否定するのか?その機会は留学生が全額出費しており、英国の公的資金に何も悪影響はなく、留学生自身や扶養家族も、英国で学んでいる間は地元経済に貢献することを保証するものである。」
「このコメントの根拠が何であるかは不明であるが、内務省のデータに基づいていないことは確かである。内務省は留学生の扶養家族に関して明確な制限をしており、それらを厳重に監視している。」

 
UUKの最高責任者であるVivienne Stern氏のコメント:

 
「大学院の留学生の数が減少した場合、大学が研究にあてる金額に大きな影響を与えることになる。」
「大学での研究努力と留学生の学費収入の間でどれだけの相互関係があるか認識することが重要である。」

 
UUKの国際部の部長代理であるJamie Arrowsmith氏は、最近、「英国は世界中の留学生や優秀な人材を歓迎する渡航先である」ことの重要さについてPIE Newsで語り、Braverman氏の発言は「深く分断」させるものであると述べた。Arrowsmith氏はTimes紙に「多くの大学院レベルのコースで、留学生間のみに人気があるということだけで持続しているものがあり、国内の学生にとって選択肢を増やすことに役立っている。」と紙面上で述べている。

 
前大学大臣であったJo Johnson氏は「留学生が我々の大学や国への貢献を再び祝うために集まったことが、とても時期にかなっている」ということを指摘した。Johnson氏は留学生の経済的な貢献だけでなく社会的な利益も忘れないようにと求めた。「留学生は友情を持ち、それが貿易、商業、外交の絆となり、国に役立つことが望まれている。」と述べた。

 
「我々と一緒に勉強している人たちが、我々の世界観を理解し始め、我々の国を理解し、我々の制度と生活様式を理解していくことは、我々にとって大変助けになる。」と続けた。これは、英国のソフトパワーとしての偉大な財産であり、偉大なツールである。

 
Johnson氏は以前Time Radioのコメントで、Braverman氏のコメントは、「英国での輸出産業で最も将来の明るい1つの産業であるのに、これがBraverman氏のやり方なのであれば、率直に言って、内務大臣として先行きの悪さを示すものであろう。」と述べた。Johnson氏によると、「英国の高等教育機関は、世界でも数少ない競争力を持つ産業の一つである。」

 
「政府の目標である、世界の科学超大国になりたいのであれば、留学生がいなければ、その目標からは撤退することになる。」と述べた。

 
英国の閣僚たちは、増加する留学生に関する取組を撤回しないのであれば、その結果として、何十億ポンドの歳入減少が生じ、経済成長計画も企画倒れとなり、議員たちの選挙区の地域経済にも打撃を与えると警告された。

 
高等教育政策研究所(Higher Education Policy Institute : HEPI)と英国大学協会(Universities UK: UUK)の共同調査によると、留学生は英国経済に256億ポンド以上の正味のプラス(純収益)貢献をしており、留学生のおかげで、一人当たり平均390ポンドの財政的な恩恵を受けている。

 
留学生が我々の地域にもたらす社会的、文化的な恩恵は計り知れないが、留学生と留学生からの経済的な貢献は、政府自身が掲げている経済成長戦略の中心でもあり、現在の戦略は2030年までに教育輸出を350億ポンドに引き上げることを目的としている。今年初頭に政府は留学生数60万人という目標が予定より早く達成したので、祝杯を挙げていたばかりだった。

 
それにもかかわらず、最近の内務大臣の、あまりにも多くの留学生とその扶養家族がいるという発言は、その数を制限するべきであるとも聞こえる。英国の留学生数を制限することは、すべての国会議員が自分たちの選挙区での多額の歳入を失うことになる。その中では:

  • Suella Braveman内務大臣の選挙区Farehamでは2,020万ポンドの損失
  • Liz Truss首相の選挙区であるSouth West Norfolkでは1,600万ポンドの損失

UUKと英国大学協会国際部(Universities UK International: UUKi)は、内務大臣の留学生に対する発言の撤回、英国の将来の経済のための自身の計画に対する留学生とその扶養家族の重要性の再認識を求めている。


Pie News:
UK sector campaigns against home secretary’s “deeply divisive” rhetoric

英国大学協会(Universities UK: UUK):
Any policy change on international students would be a hammer blow to economy


地域 西欧
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組
国際交流 国際化、学生交流