【ニュース・イギリス】秋期財政報告を前に、大学は世界のトップを行く英国の研究やイノベーションへの支援を呼びかける

 
2022年11月13日、英国大学協会(Universities UK: UUK)は、11月17日に発表される秋期財政報告を前に、財務大臣に対して研究開発(R&D)への投資を増加するよう再度要求した。この長期的な投資により大学は英国全体の成長や繁栄を引き続き支援することができるようになる。

 
UUKは100以上の企業、教育リーダー、個々の研究者とともに、政府が研究開発費を削減しないように財務大臣に書簡を宛てた。この助成金は成長の原動力であり、大学が投資や優秀な人材を引き付け、世界的な発見、知識の生産、そして英国全体で新しい、革新的な事業や雇用を作り、育んでいくことを可能にする。

 
研究やイノベーションが成長と機会を生み出す

この要請はUUKが最近発表した報告書「Our Universities: Generating Growth and Opportunity(我々の大学:成長と機会を創る)」の中で、大学は雇用や繁栄、スキルと機会の向上、地域社会に誇れる場所を築くことで経済成長を生み出す、より大きな役割を果たすことができることを強調している。

 
大学の研究は優れており、英国全体に地理的にも広く分散しており、最近の評価では提出された研究活動の80%は世界レベルもしくは国際的に卓越したものであると示されている。
大学主導の研究やインフラは新しいイノベーションによって築かれており、大学は新興事業や未来に向けた雇用に深く関与している。

  • Covid-19の流行にもかかわらず、2020/21年度だけでも4,936件の新規事業が大学から登場している。
  • 2020/21年において大学から始まった事業は95,503人の雇用を生み、70億ポンドを超える外部投資があった。
  • 同時期にはそれらの企業の推定売上高はおよそ130億ポンド以上となると推定されている。
  • 大学の研究とイノベーションは今後5年間の間に2万件の新規事業が展開されると推定されている。
  • 2020/21年度だけでも、革新的な商品とサービスの発展のため、大学は企業と75,500件のコンサルタントの契約、17,000件の施設や設備の契約を結んでいる。

研究開発への投資は、大学がコンサルタントや研究の契約を通じて地元や国内企業と提携し、専門的なアドバイス、革新的な製品の開発のため最新の施設や設備の利用を可能にする支援をすることになる。

 
EUの助成金の欠如

この秋期財政報告は、英国のホライズン・ヨーロッパへの参加に関する不透明さとEU構造基金が今年末終了する点と同時期でもある。UUKは政府に対してホライズン・ヨーロッパへの参加を求め、代替の基金を確保し、今年EUの基金が終了する、何百もの成長を促進する研究やイノベーションプロジェクトが危機に瀕することを避ける緊急な行動を強く要請している。

 
勢いを失わないように

前回の緊縮財政時代には、英国の研究生が国際競争という視点から勢いを失っているかもしれないという指摘があった。UUKとしては、成長することが戦略的に重要な優先事項であるときに、勢いを失うことはしたくない。
大学の研究とイノベーションへの公的資金は、英国全体の長期的な経済成長と繁栄の向上のための鍵である。確実な公的資金であれば、政府の野心の達成に必要な民間投資の活用にも役立つことになる。この資金が安定的で長期的に行われるのであれば、効果的な提携や高リスクのイノベーション活動を作り、Covid-19のワクチンなど転機をもたらすような飛躍的な発展につながる。

 
基礎研究への投資

大学は様々な方法で英国全体の成長をサポートしている。基礎研究や研究インフラへの投資は、革新的な製品やサービス開発に不可欠であり、経済成長を伸ばすことで新興事業や良い雇用を推進することになる。より柔軟性のある質関連(QR)資金は世界トップクラス、もしくは国際的に卓越した研究を行っている英国の大学に定期的な資金調達を提供し、官僚的な手続きなしで革新的な研究の実施のための収入を保証するものである。

 
企業を支援

研究開発への投資はまた、大学がコンサルタントや委託研究などを通して地域や国内の企業と提携し、専門家からのアドバイス、最新施設や設備の利用をすることで革新的な製品の開発支援も行っている。2020/21年度だけでも大学は企業と75,500件のコンサルタントの契約を行い、施設や設備を提供し革新的な製品はサービスの契約を17,000件取り交わした。

 
政府の野心の実現

英国が研究開発への公的投資を増加する計画を維持する場合、政府独自の調査によると、この分野において2030年までに少なくとも15万人の研究者と技術者が追加で必要であるという。それを成功させるためには英国に渡英してくる留学生、研究者、技術者に対する移民制度が重要となる。
英国は研究やイノベーションにおいて「ランクが上の国」としばしば言われており、これは2021年の研究評価制度(Research Excellence Framework: REF)の評価や世界的なランキングから証明されている。しかし、英国は研究開発に対する投資という面で他の競争国に後れを取り続けており、長期的な投資がなければ英国は遅れたままとなる。

 
我々は今後数か月間の間で予算に大きな圧力がかかることを理解している。しかし、政府に対し研究イノベーション投資の増加という以前の公約を続けることを強く求める。この公約は、安定かつ持続可能な資金調達環境と一緒に政府が求めている長期的な経済成長と生産性の推進のため不可欠なことである。

 
なぜ今投資が必要か

上記の例が示すように、財政状態がよくなった時にということではなく、今研究やイノベーションに投資することが重要である。政府は経済成長を強化したいのであれば前政権の研究開発投資の目標を前進させるための措置をしなければならない。多くの大学院研究者は重要な研究活動を実施しており、すでに生活費の増加による圧力を懸念しており、研究費の削減はこの圧力をさらに悪化させる可能性がある。

 
政府の研究開発の現在の野望と、それを支援する英国大学の重要で多様な役割を称賛する。英国の貢献を最大限にするためには、大学は地域社会での中心的な機関として重要な役割を構築し、大学、企業、産業界との提携やコラボレーションを推し進める支援的な環境での活動が必要である。
 


英国大学協会(Universities UK: UUK):
Universities call on government to back world-leading UK research and innovation ahead of autumn statement


地域 西欧
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