【ニュース・イギリス】英国はスイスとの重要な科学協力に調印

 
2022年11月10日 、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(Department for Business, Energy and Industrial Strategy: BEIS)は英国はスイスと世界のトップにある研究とイノベーションコミュニティの2国間関係を深める基本合意書(覚書)の調印を行った。

  • 英国はスイスと世界のトップを行く研究とイノベーションコミュニティ間の2国間関係を深める覚書の調印を行った。
  • この覚書では特に「ディープサイエンス」や「ディープテック」、また、イノベーションを通じた商業化、そして科学やイノベーションの政策や外交に重点を置くことを奨励するものである。
  • この協定は英国科学・研究・イノベーション担当大臣であるGeorge Freeman議員とスイス連邦の経済問題・教育・研究省の大臣であるGuy Parmelin連邦評議員によって調印された。

 
スイスは過去10年連続でイノベーションの世界ランキングで首位を維持しており、ヨーロッパの上位10位内の2大学がスイスの大学であり、数々の世界クラスの研究所やRoche、Novartisなどの企業、また商業宇宙衛星技術の企業もあるため、英国にとってパートナーとして適任国である。

 
この2国間でヨーロッパの上位20以内に入る研究集約大学が10大学も存在しており、この協定によりディープサイエンス、産業の商業化、国際的標準規制という3本柱を軸として、相互に関心のある分野で2カ国間の意欲を深めていく。

 
英国ではヨーロッパの上位10以内に入る大学が7つもあり、また、英国の研究はその他のG7の国よりも世界で引用されている研究成果が多く、自国の優れた研究やイノベーションの強みを提供する。覚書では両国の関係、具体的な協力形態に関し下記の通り挙げている。

  • 協調的もしくは2カ国共同主導権、プログラム、プロジェクト
  • 会議、ワークショップ、大会議またはシンポジウム
  • 情報及び文書の交換
  • 移動、訪問、代表団
  • 戦略と調整の会議
  • 活動の監視のため、閣僚による定期的な年次会議Anglo Swiss Research Collaboration Councilの開催を計画

覚書の署名を行ったGeorge Freeman 科学担当大臣のコメント:

 
科学超大国であるためには、スイスのような研究開発の活動が活発な国際関係を深め、気候変動、バイオセキュリティ、宇宙の持続可能性など、世界的な緊急課題に取り組むための多国間協力を追求する必要がある。

 
研究は基本的に共同作業が必要であり、世界的に優れた研究所と国、産業界とのパートナーシップを深めるということは、英国が抱いている国際的な研究開発の実現のもう一つの重要なステップである。

 
スイスは生物科学、特に神経科学とワクチン、量子、宇宙、フィンテック、クリーンテックなどにおいて、世界トップクラスの研究を行っており、英国との長年の関係もあり、我々にとって重要な戦略パートナーである。

 
この協定はただの紙切れではなく、スイスの大臣と私自身とで研究奨学金、産業革新、新しい技術分野の規制基準などの具体的な協力を推進していくことを明確にしている。

 
覚書は、特に「ディープサイエンス」や「ディープテック」(生物科学、エネルギー技術、人工知能、宇宙も含む)やイノベーションを通じた商業化、科学とイノベーションにおける政策と外交協力に焦点を置くことを奨励する。

 
Guy Parmelin連邦評議員のコメント:

 
英国とスイスは研究において両国とも世界のトップである。我々が理念、価値、科学的な卓越性を共有することはお互いのパートナーとしての適任者である。

 
世界の競争力のある国々との研究やイノベーションにおける二国間協力を強化することは、スイスの目標と一致しており、英国との覚書調印は両国のパートナーシップのさらなる発展に向けた仕組みを提供するであろう。

 
国際的な科学提携は世界の課題解決のために重要なことである。我々はさらに前進し、もっと早く、もっと多くのことを達成することができる。

 
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2022年11月10日、Science Business「UK and Switzerland sign bilateral research deal – but there’s no new money」 (英国とスイス、二か国研究に関する協定― しかし新しい資金はなし)

 
ロンドンとベルンは生物化学や宇宙に関する分野でのより強い提携を望んでいる。しかし研究者たちはこの二か国間研究協定はホライズン・ヨーロッパ参加の代わりとしては劣っているとみている。英国とスイスは研究提携の強化を約束する新しい協定を結んだ。しかし、科学者たちはホライズン・ヨーロッパに代わるものではなく、新しい資金もないと警告している。両国は広範囲な政治的争いのためEUの研究・イノベーションプログラムから除外されているままである。

 
しかし、今回、両国は生物科学、エネルギー技術、人工知能、宇宙の分野において提携の強化を約束する覚書の調印を行った。今のところ両国が具体的にどのようなプロジェクトに着手したいかについて、その詳細は明らかにされておらず、この協定はどの資金とも関連していない。

 
Open Universityの政治・国際研究のSimon Usherwood教授は、「この協定でEUやスイス、英国にとって実質的に大きく変わるとは思えない。」という。「新しい資金がなければ、どちらも新しいリンクを構築するような動機付けが起こるとは考えにくい。」と述べた。「これはホライズン・ヨーロッパの代わりになるものではなく、EUがホライズン・ヨーロッパの参加について平等に扱っていないという議論を英国とスイスが強調しているに過ぎない。ロンドン(北アイルランドを巡る緊張を切り離したい)とベルン(自由な移動を巡る緊張から切り離したい)の両国には適しているが。」と述べた。

 
英国は、EU離脱後の関係を保つための貿易協定である北アイルランド議定書を覆すと脅迫したことで、欧州委員会は未だに英国のホライズン・ヨーロッパへの参加を阻止している。
スイスとの提携でも、ベルンとブラッセル間の広範的な関係の枠組みの協議が合意されなかったため、凍結状態である。

 
「英国とスイス間の研究・イノベーションコミュニティーでより強い提携が行われていることは良いことである。しかし、英国のホライズン・ヨーロッパへの参加を保証することが最良であることは変わらない。」と研究集約大学グループのラッセルグループは述べている。

 
最新の発表には詳細がなかったが、英国とスイスの資金調達機関は合成生物学、材料の分野などでいくつかの共同公募の強化を始めている。先月は30件のプロジェクトで資金を獲得し、英国側だけでおよそ50万ポンドを投資している。ホライズン・ヨーロッパから離れていることで、英国政府はシンガポールとの関係強化も試みており、昨年、研究開発イニシアチブを発表している。

 
科学担当大臣であるFreeman氏はBBCのインタビューで、スイスとの協定はいくつかある中の一つにすぎず、次回はイスラエルであろうと述べた。今年初めにFreeman氏は欧州委員会に対して、英国のホライズン・ヨーロッパへの参加を拒むのであれば、英国は独自の「プランB」という代替案を開始すると警告した。

 
また英国の科学界は、11月17日に発表される秋期財政報告を前に、予算削減を心配している。「研究開発費は簡単に出す、出さないと切り替えることができるものではない。利益を得るためには、この状態を維持し、以前からの取組を助長する必要がある。」と今週初めにCampaign for Science and Engineeringが警告した。

 


ビジネス・エネルギー・産業戦略省(Department for Business, Energy and Industrial Strategy: BEIS):
UK signs major science co-operation agreement with Switzerland

Science Business:
UK and Switzerland sign bilateral research deal – but there’s no new money


地域 西欧
イギリス、その他の国・地域
取組レベル 政府レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究