【ニュース・イギリス】ホライズン・ヨーロッパからプランBへ:英国は苦境を機会に変えることができる

 
2022年9月29日、高等教育政策研究所(HEPI)はホライズン・ヨーロッパの参加とその代替となるプランB(代替案)に関する新しい報告書を発表した。EU 連合の研究・イノベーションプログラムであるホライズン・ヨーロッパは、近々3年目を迎える。しかし、英国の参加については不確実なままである。

 
この不確実性は元来、EU 連合からの離脱を巡る国民投票の結果から派生するが、現在は北アイルランドの議定書を巡る論争のため長期化し、英国の EU 資金プロジェクトへの参加が減少している。参加への希望が急速に失速している中で、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は、移行措置の詳細とホライズン・ヨーロッパに代わる長期的な代替案、俗に言うプラン B の概要を発表した。

 
2021年にホライズン・ヨーロッパもしくはプランBのために70億ポンド近くが確保されたが、この不確実な状態が長く続けば続くほど、一部の資金が危険な状態になることが恐れられている。

 
HEPI から発表された「Horizon Europe and Plan B research funding : Higher Education Policy Institute: Turning adversity into opportunity」の著者で、スイスの Universita della Svizzera Italiana の Marco Cavalaro 氏は、ホライズン・ヨーロッパへの完全な提携が最も良いものではあるが、プランB の成功のためのチェックリストを紹介している。

 
その一部は:

  • 人材交換スキームを利用し、英国の大学であまり資金力のない大学に対してヨーロッパの研究やイノベーションの参加を奨励する。
  • 個々の研究者に自身の研究テーマを考案するための自由度を高める。
  • 応用研究プロジェクトのために英国政府と民間部門の間で共同資金スキームを行う。
  • 短く、簡素な申請書で官僚主義的なやり方を最小限にする。
  • EU を拠点とする研究に対して、少なくとも特定の分野において、英国の資金援助の対象とすることを保証し、完全な参加を目指すための道を開く。

報告書の著者である Marco Cavallaro 氏のコメント:

 
ホライズン・ヨーロッパに完全に参加することが一番よいことではあるが、プランBは研究資金に関する文献から学び、より魅力的で包括的でまた負担のない資金提供スキームを作り出す機会でもある。

 
HEPI の所長である Nick Hillman 氏のコメント:

 
この夏の間、政府には専任の科学大臣が不在であったことは驚くことである。新政権はホライズン・ヨーロッパと代替であるプランBに関する不確実な状態を終わらせることが大変重要となっている。

 
英国の研究界のはっきりとした最優先事項であるにも関わらず、もしホライズン・ヨーロッパの参加が不可能であれば、プランBを最大限活用しなければならない。この HEPI の新しい報告書は、それをどのように実施するかを説明している。

 
英国の研究状況は大変危険な状態にある。つまり、プランBを成功させる必要がある。ダラダラと先延ばしすることはこれ以上できない。誰もプランC やプランDなど絶対に見たくないからである。

 
University College London の科学・研究政策の議長であり、研究開発の国際提携に関する科学大臣の前アドバイザーである Graeme Reid 教授のコメント:

 
大変関心が高く重要な問題に関して時宜にかなった報告書である。研究・イノベーション界では一貫してホライズン・ヨーロッパの英国の参加を呼び続けてきた。

 
英国政府は英国の参加に関して、断固とし支援をし、一方、参加不可能になった場合の代替のために資金提供もしている。

 
参加の見込みが次第になくなってきている現在、プランBの実現に向けた話し合いが重要である。この報告書はその話し合いに向けた良い資料である。


高等教育政策研究所(HEPI): from horizon europe to plan b how the uk can turn adversity into opportunity


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