【ニュース・イギリス】2022年9月 EU連合プログラム参加に関する英国-EU特別委員会の協議会開催

 
2022年9月22日、外務・英連邦・開発省(FCDO)は、英国政府からの要請により英国政府と欧州委員会の共同議長を立てて第二回の特別委員会がブラッセルで開催されたことを伝えた。

 
この協議における EU 連合プログラムの参加に関する英国政府の声明は下記の通り。

  • 英国政府および欧州委員会の共同議長により、英国のEU連合のプログラム参加に関する第2回目の特別委員会がブラッセルで開催された。分権行政国と EU のメンバー国からも代表者が参加した。
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  • 2022年8月16日に英国からの正式な協議を要請したことを受けて実施することになった。協議では英国と EU 間の問題解決するため、英国―EU の貿易・協力協定(TCA)の過程について話し合いが行われた。
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  • 英国および EU 全体の研究者や企業の利益追求のため、英国は EU のプログラム(ホライズン・ヨーロッパ、ユーラトムの研究と研修、コペルニクス欧州宇宙監視・追跡プログラムのサービスの利用)に参加することで、相互に有益な協定の実施を目指している。
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  • 本日の協議において、英国は再度 EU に対して、16か月も遅れている英国の EU プログラム参加の最終決定の義務を果たすことを求める。EU がこの要請に関して継続的に拒否していることを大変残念に思う。
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  • 英国は、EU のプログラムへの参加を第一の希望としており、EU が終始一貫して英国参加の最終決定を遅らせることは、TCA 違反を意味することになる。この遅延が、我々の研究界やビジネス界に多大な不確実性を招き、英国および EU 連合国の両方の科学的な協力に対して悪影響をもたらしていることを強調する。
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  • 英国政府は次の段階を緊急に検討している。世界の先駆けをしている英国の研究開発分野を支援することが我々の優先事項であり、そのために実行可能な選択肢の概要を既に出している。

外務・英連邦・開発省(FCDO)UK-EU Specialised Committee on Participation in Union Programmes consultations meeting, September 2022: UK statement

 
関連記事:2022年9月23日、Science Business:ホライズン・ヨーロッパ英国参加の行き詰まり続く

 
最新の協議では全く成果を得ず、英国は自身の代替プログラムを設立するか、数か月に及ぶ仲裁にするか決断を迫られている。

 
英国は、今週の EU との会合が数か月に渡る行き詰まりに終止符を打つことができなかったため、ホライズン・ヨーロッパのために戦い続けるかどうかについての選択肢を「緊急に」検討している。

 
「英国政府は緊急で次のステップを検討している。英国の優先順位は英国の世界のトップを行く研究開発部門を支援することで、すでにその可能性のある選択肢を出している。」と政府の声明文にある。

 
数か月の遅延を経て、9月22日の協議は、英国の955億ユーロのホライズン・ヨーロッパ研究プログラムへの参加を巡る行き詰まりの解決のための試みであった。英国は、EU 離脱全体を網羅する2020年の英国-EU貿易・協力協定(TCA)の一環としてホライズン・ヨーロッパの参加の交渉に挑んだ。ホライズン・ヨーロッパは、EU のブログラムのうち英国が執拗に参加を望んている数少ないものであり、過去にはドイツに続いてEU 研究助成金の獲得第2位の国であった。

 
しかし、欧州委員会は、このプログラムの参加と北アイルランドの議定書に関してより幅広く政治的争点と結び付けている。16 か月経ち、どちら側も全く意見を変えずにいる。現時点では、今後の会合は予定されておらず、「この議題に関する協議も予定されていない。」とEUの当事者が述べた。

 
今、英国は次のステップに関して慌てている状態である。9月22日の会合は、TCA の闘争解決として英国が要請したものであった。北アイルランドの議定書に関する突破口がない場合もしくは、EU がホライズン・ヨーロッパに関して態度を譲歩しない場合、英国は現在2つの選択肢がある。1つは英国が国内で代替研究プログラムを設立するか、EU を仲裁に持ち込むかである。

 
仲裁は、今週終了した協議で結果を得ることができなかった場合の法的手段である。これは、英国から一人の指名者、EUからも一人の指名者、英国と EU から合意した議長から成り立っており、独立した仲裁裁判を設立することになる。TCS の規定では、法廷では130日の間にその不合意に対し解決策を出すこととなり、日程は160日まで延長することが可能である。

 
もし仲裁が却下された場合、英国は今年7月に発表された第2のプランを進めることを決定するであろう。政府関係者によると、もし必要であれば、その準備はできているという。しかし、代替プログラムを開始するということは、欧州共同研究という枠組みから分岐することになる。長期的にはホライズン・ヨーロッパへの参加の見込みが全くないということではないが、プログラムを別々に開発する時間が長くなればなるほど、のちに協力し復活することがますます難しくなる。

 
英国政府が検討する中、研究者は長引く不安定さの中で耐えきれない状態にある。英国大学協会(UUK)は、引き続きホライズン・ヨーロッパの参加を呼び掛けているが、「有害」な不確実性のため、被害に関してますます懸念が出ている。

 
「UUK と高等教育界全体でも、英国の大学や研究者が限られた混乱の中で研究を継続できるよう、ホライズン・ヨーロッパとの関係を継続することを望んでいることは明白である。」と UUK は会合の反応として声明を発表した。しかし、「ホライズン・ヨーロッパへの参加の終了による損害の可能性は、現在研究界が直面している継続的な不確実性と比べれば大したことはない。」

 
英国は、ホライズン・ヨーロッパ、ユーラトム核研究プログラム、コペルニク地球観測プログラムなど EU のプログラムを完全な優先事項としている。

 

Science Business: Stalemate continues over UK bid to join Horizon Europe

 
関係記事 2022年9月23日、Russell Group :英国-EU 委員会のホライズン・ヨーロッパに関する会合に関して

 
2022年9月22日の EU のプログラム参加に関する英国-EU の特別委員会の開催を受けて、ラッセルグループの最高責任者である Tim Bradshaw 博士はコメントを出した。

 
「ホライズン・ヨーロッパやその他の EU プログラム参加に関する英国からの正式な協議の要請を受けた会合は、進展に欠くものであったことは残念であった。海峡を隔てている両側の科学・研究界が断言するように、英国のホライズン・ヨーロッパへの参加が、英国及び EU にとって最良の結果となることははっきりとしている。政治的闘争を取り除くことで、我々の研究能力の回復の強化を図り、我々が共有する経済的、環境的そして社会的な課題に共に協力するためにも、我々は EU からの早急で建設的な関与を求める。」

 
「とはいえ、まだ参加する可能性は残っている。我々や全大陸にいる研究者は、引き続き、全ての政党に対してEU離脱の際に交わした同意事項を実行するため要求していく。しかし、この不確実性の中では、政府が代替を検討するということは正しいことであり、ホライズン・ヨーロッパのための全資金を確保することが保証され、歳出の見直しの中で明記されることが大変大切なことである。」


Russell Group: comment following uk-eu committee meeting on horizon europe


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イギリス
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