【ニュース・イギリス】ラッセルグループに関して話し合いを持つ時

 
2022年8月20日、高等教育政策研究所(HEPI)HEPI の理事で、UPP 財団学生未来委員会の議長である Mary Curnock Cook 氏のラッセルグループに関するをレポートを発表した。以下がその内容。

 
年間を通して、特に Aレベルの結果発表日辺りに目立つようになるが、大学進学に関する多くの報道では、あたかも全ての大学に起こっているような見出しである。しかし、現実にはラッセルグループの大学でのことが多い。自己選択で、自己宣伝する24の大学から成るラッセルグループは、よく国内の「エリート」もしくは「トップ」大学といわれているが、実際はかけ離れている。

 
ラッセルグループには、もちろん Oxford や Cambridge など、4つか5つの優れた大学がある。しかし、その他の大学は学生の成績や満足度に関する多くの指標において、トップ40から50位に入ることが難しい大学である。いくつかの大学では教育の質に関しても低い評価を受けている。

 
学生が大学を選択するときに「大規模な研究集約大学」を指標とする調査はまだ見たことがないが、これはラッセルグループの大学に共通する内容でもある。市場、学生の選択肢、政治的思考を歪めている、空虚な「ブランド」として成功している。

 
最近 ConHome(保守党のウエブサイト)で David Willetts 氏が「「トップ」の大学とは世界クラスの研究を行っている大学で、だからといって教育が優れているとは限らない。」と述べている。

 
ラッセルグループの大学は、白人中流階級の学生に対し極端な印象を持つ傾向があり、これは私立校で教育を受けた学生の割合が非常に高いことも含まれる。大学進学推進のためのリップサービスをする一方で、低所得者層の学生に高等教育の機会を与えるという難題を、その他の大学に任せている。「トップ」の大学に多様性を高めれば、大学全体の多様性が高まり、全大学で社会経済的背景を混ぜることで、全ての学生がより良い成果をだせる。

 
一方で、政府、メディア、リベラルな人々は、ラッセルグループ以外の大学、特に前身が技術系の大学に対して特に軽蔑している。これは率直で伝統的なお高くとまった最も悪質な態度である。政府は低質のコースを閉鎖しようとしているが、それはある種類の大学に限られている。(神聖で世間から隠れたラッセルグループのコースは含まれていない)ジャーナリストは、質に対する疑問も持たずにラッセルグループの広報内容を信じ、中流階級の父兄たちは、街で唯一の高等教育ゲームであると間違って考えて、子供が入れなかったことを恥じてしまう。もっと重要なことは、父兄たちは自分の子供が何を見逃しているのか全くわからないでいる。とはいうものの、ラッセルグループの個々の大学において素晴らしい面もあるが、ブランドとしてひとまとめにしたことが、高等教育機関に損害を与え、需要を歪めている。ラッセルグループのコースの需要の集中は、今年の学生にとって不必要な落胆を与えることになった。

 
今夏、A*の成績を予想された学生がどの大学からもオファーがもらえなかったという新聞見出しは、ラッセルグループの大学から1つももらえなかったということを意味している。もしこれらの優秀な学生が24大学以上に出願するようにアドバイスされているのであれば、問題はなかったであろう。Lancaster、Bath、Portsmouth、Loughborough や Hull、East Anglia、Sunderland、Edge Hill、などの新設医学部など、ラッセルグループではない大学も恐らく「トップ」かもしれない。もしくは Dyson Institute、London Interdisciplinary School、TEDI: London など、後者は King’s College、Arizona State University、University of New South Wales がスポンサーとなっている。残念なことに排他的で私利私欲に走るラッセルグループの支配は、英国の高等教育を弱体化する保守主義を定着させてしまった。

 
ラッセルグループの個々の大学は、グループからの解放を考えているかもしれないが、ラッセルグループの集団意識そのものが害を及ぼしているのかもしれない。高額な会費を支払っているこのグループは、個々の大学よりもブランドとして広報をした方が良いと考えており、政策焦点は「持続的な資金調達」としている。あらゆる背景を持つ者の世界クラスの教育への進学は、第4番目で取り組んでいるのである。

 
ラッセルグループの自己欺瞞を我々が助長する理由はない。ますます空虚となるブランドによる害に関して、真剣に取り組む時が来ている。ラッセルグループの大学が全校的な議論で目立っていることを考慮して、能力のある大学が新たに加入し、そうでない他の大学が降格することを可能にする何かしらの基準を公表し、維持するべきである。そうすれば、少なくともラッセルグループのブランド価値は、進学希望の学生にとってより意味を持つようにかもしれない。

 
高等教育政策研究所(HEPI) : It’s time to talk about the Russell Group

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2022年8月20日 Russell Group

 
Response to HEPI article on Russell Group:HEPI の記事の対する回答

 
ラッセルグループの最高責任者である Tim Bradshaw 博士は下記の通りコメントしている。

 
「ラッセルグループの半分以上の大学は、独立評価機関であるQSランキングにおいて世界トップ100位入っている。また、最近のREFの結果では91%の研究が「世界をリードする」もしくは「国際的に優秀」と評価され、我々はこのような情報を、学生に提供する教育経験の根拠として広範囲に活用している。

 
我々のメンバーは、大学に進学する意欲と決意をもったすべての人々にその機会を提供するため、懸命に努力している。今回の記事内容は、学校、父兄、地域団体、若者を支援する活動をしている者に対しての不公平な攻撃である。

 
大学進学の促進やアウトリーチのプログラムだけでなく、我々の大学は、学校、カレッジと協力し、リソース訓練を提供し、アカデミートラストの経営を通して成績を向上し、より多くの若者が人生で成功するための支援を行っている。

 
最も恵まれない地域から、イングランドのラッセルグループへ進学する18歳の割合は、7年連続で増加し、この傾向を維持することを努力していく。昨年だけでも、我々の大学は最も高等教育参加率の低い地域から学生を20%多く受け入れている。

 
一旦、我々の大学に入学すれば、若者は学位を取得するために様々な支援が与えられ、卒業後のキャリアも充実するものとなる。これは、あらゆる背景を持つ学生の高いレベルの大学継続率と将来の収入に反映されている。

 
更なる情報

 
イングランドのラッセルグループの大学は、最も恵まれない背景を持つ地域(POLAR Q1 地区)出身者の学部生は、1年生以降も継続する確率が94%である。つまり、ラッセルグループの大学では、POLAR Q1 地区からの学生は、他の大学で学ぶ最も恵まれない低い地区(POLAR Q5)の学生と同じぐらい1年生以降も継続する可能性が高い。

 
総合すると恵まれない環境にいる学生(POLAR Q1出身者)の89%がラッセルグループの大学でFirst および、2:1の優秀学位を取得している。最も恵まれている学生と最も恵まれていない学生の間で、学位号の成績の格差はあるが、2016/17年度の7%ポイントから2019/20年度の5%ポイントにまで狭まって来ており、今後この格差を長期的になくすことを目標としている。

 
イングランドのラッセルグループ全体で、最も恵まれていない(POLAR Q5)と最も恵まれている学生のうちフルタイムの学部生の比率は、2013/14年度から6.9:1から2019/20年では4.8:1と減少した。この傾向が継続すれば、差が縮まり2025/26年度では3:1比率になると予測されている。

 
今後5年の間にラッセルグループの各大学では平均で1,100万ポンド以上が大学進学・参加プログラムに出資され、英国の最も恵まれている地区と最も恵まれていない地区の進級の格差を減らしていく。

 


Russell Group: Response to HEPI article on Russell Group


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