【ニュース・イギリス】イングランドの2021年教育費に関する年次報告書

 
2021年11月30日、英国財政研究所(IFS)はイングランドの2021年教育費に関する年次報告書を発表した。英国において、教育費は公共サービスの支出において医療分野に次いで大きな割合を占めており、2020/2021 年度は990 億ポンド、国民所得の約 4.5%である。効果的で正当な政策を選択するためには、教育の段階における支出のレベルや変遷、どのように発展していくか、変化をもたらす要因などについて、明確で一貫したビジョンを持つことが重要である。これにより、政策立案者や一般の人々に対して現在の財政の優先順位や将来の課題を知ることができる。この問題は、教育政策の議論やライフサイクルの異なる段階での支出が長期的にはどのように成果に結びついているかを示すエビデンスの重要な構成要素である。ここでは全体のうち、総支出と高等教育機関について紹介する。

 
総支出額

  • COVID-19 以前の2019/2020 年度の総支出額は1,040億ポンド、国民所得の4.4%であった。(学生ローンの費用も含む)この数値は国民所得の 5.6%であった2010/2011 年度と比べて8%低い。
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  • 財政危機以前、教育費は国民所得の5%弱であった。この基準を保っていたのであれば 2019/2020年度では 160億ポンド多くなっていたであろう。
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  • 過去 30年間、教育費は国民所得の 4%から 5%の間で変動しているが、医療費は大幅に増加している。1990 年初頭では国民所得の4%でCOVID-19直前には7%を超えた。高齢化社会を反映していると言えるが、歴代の政府の支出や政策の影響もある。
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  • 最新の年度(2020/2021年)では教育費は実質3%増加しているが、これは COVID-19 の影響による一時的な追加支援の影響である。

高等教育

  • 2012 年の大改革で学費が 9,000ポンドに値上がりし、学費は現金ベースで一定を保ち、時間経過とともにその価値が減少している。その結果、2020/2021 年度の学部学生一人当たりの先行高等教育支出は2012/2013年度と比べて 9%減少した。
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  • 高等教育機関の大きな課題は、学生数の増加であり、2019/2020 年年度と2025/2026年度の間で 13%の増加が予想されている。
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  • 最近の歳出見直し予算では驚くほど高等教育の関することが述べられていなかったが、学費が 8,500ポンドに値下がりし、学生ローンの返済開始年収額が 22,000ポンドに変更されるなどいくつかの変更が噂されている。
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  • 学費の上限の 8,500ポンドへの値下がりは高所得者にしかメリットがない。政府財政への影響は、学費収入の減少分の埋め合わせのため教育助成金を同時に増加するかどうかによる。もしそうなれば、コストの高い学科に対して教育助成金を再調整する良い機会になるであろう。

学費返済開始年収額の引き下げは、現在の基準額では最終的にローンの返済が完了しないと予想される約80%の卒業生にとって増税となり、年間 20億ポンドの増加となるであろう。中程度の収入の卒業生は年間約 500ポンド多い返済となる。学費ローンの返済期間を40年に延長すれば、だいたい同額の増加となるが、影響を受けるのは、中高年となった卒業生のみとなる。

 


英国財政研究所(IFS)2021 annual report on education spending in England


地域 西欧
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組
行政機関、組織の運営 予算・財政
大学・研究機関の基本的役割 教育
学生の経済的支援 学費、学生向け奨学金