英国だけではない
EIT はこのような困難に直面しているのは英国の研究者だけではないことを指摘している。トルコのように他の非EU圏からのパートナーは、参加国になることに合意しているが、まだ正式な締結までに及んでいない。彼らは技術的な資金の支払いがすぐに行われないことを承知の上で契約をしている。
「提携していない国からの参加グループは(まだ参加協定が締結されていない)EIT からの資金を受け取ることができない。これに関しては EIT の知識・イノベーションコミュニティ(KIC) に伝達されており、パートナーには伝えられている。EIT はすべての第3国の参加グループに対して同様な過程を取っている。」と広報官は話す。英国の69のグループがこの参加協定の泥沼に陥ってしまっている。
しかし英国の研究者たちはトルコの研究者とは違って、いつ参加協定が締結されるか、政治的な不確実性があるため、その立場はもっと不安定であるという。UK の研究者は現在でもHorizon Europe に申請することを英国政府に奨励されており、今月初旬にテキスト UK リサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation: UKRI)は申請書提出の支援として5000ポンドの特別基金を設定した。
しかし EIT のプロジェクトに対して緊急支援基金を設置する様子はない。もし必要であれば政府は介入するのか、ビジネス、エネルギー、産業戦略省の広報担当者に尋ねたところ、「英国の研究開発分野を支援していくことが我々の優先事項であり、将来もそれを続けていく。英国はできるだけ早い機会で Horizon Europe の参加協定を行う準備はできているが、残念ながら、EU から継続的な遅延が発生している。」と答えた。
2019年の時点で英国の EU 離脱の可能性が問われていた際、英国は Horizon Europe の前身である Horizon 2020 においてEU離脱前に英国研究者によって提出され、資金を確保したすべてのグループに対して資金提供を約束した。
僅かな希望として EIT の広報担当者は、例外的なケースとして、資金提供機関は資金を受ける側が第3国の参加が目的達成のため欠かせない存在であることを証明できれば適性を承認することができる、と述べている。
一方で、EU と英国は北アイルランド議定書に関して何も合意に至っていないため、提携が頓挫している原因である政治状況は未だに解決されていない。欧州委員会はこの政治問題が解決されるまで参加提携の保留を撤回する様子はない。
先週、フランスの欧州委員会書紀長の Clement Beaune 氏は英国が漁業権の許可をもっと出さない限り、英国の研究部門、金融部門、電力供給部門に対して報復処置を取るべきだと述べた。
英国では新しい科学大臣である George Freemans 氏が Horizon Europe 参加に対する自身の希望を何度も述べた。10月15日の Twitter で、「我々は長く待たされている英国の産業/大学/研究開発プロジェクトの契約締結・有効化を求めている。しかしもしEU が北アイルランド議定書の政治的な決定により英国の Horizon Europe の参加を妨げているのであれば、我々には思い切った違う方法がある。」と述べた。実際にその方法の詳細は不明ではあるが、英国は2021年に Horizon Europe の関連で10億ポンドを支払い、この研究プログラムの7年間の実施期間中に140億ポンドを支払うことになっている。
スイスは Horizon Europe からの離脱の影響を緩和するために違う方法の検討を始めている。英国と同様にEUとスイス間では新しい関係の枠組みに関して交渉が決裂しているため参加協定は凍結されている。
10月20日、スイス連邦参事会は同国の研究部門に対して、「長期的に参加協定が成立しない場合可能な補完・代替措置の検討」を指示したが、スイス政府の一番の優先事項は未だに Horizon Europe への参加である。
「Researchers go unpaid as delay to UK association to Horizon Europe starts to bite」:
Researchers go unpaid as delay to UK association to Horizon Europe starts to bite
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