【ニュース・イギリス】Horizon Europe への加盟の遅れで研究費が支給されず、英国関係者に影響(2)

 
なんのために研究しているのか?

 
EIT の初期のプロジェクトで、水中ロボットの商業化を目的として、2020年1月に開始した3年計画の UNEXUP にも影響が出ている。このロボットはヨーロッパで点在する何万もの浸水している鉱山の探査のためのものである。ヨーロッパでは鉱物原料を輸出にほとんど依存しているため、放置された鉱山の再開発の声が高まってきている。

 
しかしこのプロジェクトの英国側のパートナーである、ソフトウエア開発とロボットの潜水を専門とする Resources Computing International は2021年の報酬をまだ受け取っていない。同社のオーナーである Stephen Henley 氏によると、結果として研究者に支払いが行われていないことで、同社は旅費、機材費など10000ユーロ以上の自己負担を強いられているという。

 
「9ヶ月間かけて行った研究が台無しになり、研究者たちの我慢にも限界が来ている。」と Henley 氏は語った。同社は現在ポルトガルの研究所助成金機関からつなぎ融資の可能性を模索しているが、もし解決策が見いだせないのであれば、チームに研究の中止を通達しなくてはならないと述べた。もしHenley 氏のチームが提携のチームから離れることになれば、2022年にコーンウォールの錫鉱山で2つのロボットを潜水させる計画が台無しになる可能性がある。

 
「それらの研究者の知識の代替をすることは困難で、このままでは遅延せずにプロジェクトを終了させることは不可能である。」とハンガリーの University of Miskoic の地層学者であるプロジェクトコーディネーターの Norbert Zajzon 氏が語った。

 
EIT のデジタルプロジェクトで他の英国からの参加者である匿名希望の関係者の話によると、自分の会社では50万ポンドの負債を抱えており、「このプロジェクトを無料で行っていることになる。」と述べている。かといって、他のプロジェクトのパートナーとの関係を考えるとプロジェクトからの撤退は不可能で、板挟み状態にある。

 
報酬のない仕事ということは会社として最低でも人事整理を行わなければならず、最悪の場合は倒産すると警告している。資金提供の遅延のため、通常の研究等を継続するためのエネルギーや資金不足により、プロジェクトそのものに遅延がでてきている。

 
鉱山を抽出する機材を提供する英国の Gravity Mining 社の創設者である Bolin Collino 氏は、アルミニウム製造の工程で発生する廃棄物から貴重な鉱物を取り除くプロジェクトに参加しているが、今年は全く報酬が入らなかったという。時間や予算をすべて費やしたにもかかわらず、現在会社は約10万ユーロの資金が不足している。

 
Gravity Mining 社 はこのまま未払いが続いても、プロジェクトから撤退することはまだ計画していないが「そのうち決断を下す時が来る。」と Collino 氏は言う。同社は他に資金源とするものはあるけれども、学術助成金の世界のこれまでの異常な経緯を鑑みると今後は距離をおくことを考えていると語っている。

 
EIT の支援を受けているエネルギー会社の最高責任者は匿名を条件に、会社を英国からルクセンブルグに移動することで支払い問題を避けることができたと語った。

 
Science Business との連絡の応じた数チームは2021年に支払いがなければ、この先も支払われる可能性は低く、過去に遡っての支払いは見込めないと言われた、と語った。EIT の広報担当者は「助成金合意の署名をする段階で参加合意がなければ、規定にもよるが、グループの構成や利用可能な予算は変更することが可能である。」と述べている。


「Researchers go unpaid as delay to UK association to Horizon Europe starts to bite」:
  Researchers go unpaid as delay to UK association to Horizon Europe starts to bite


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イギリス
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