【ニュース・イギリス】Horizon Europe への加盟の遅れで研究費が支給されず、英国関係者に影響(1)

 
2021年10月21日 Science Business は英国 の5つの研究チームに聞いたところ、今年の欧州イノベーション・技術機構(EIT)に関するプロジェクトからの報酬を受け取っていないことが明らかになった。そのため研究チーム内での研究者の解雇や Horizon Europe から撤退を余儀なくされる可能性が出てきた。

 
英国の研究者や企業は英国と EU の政治的対立の影響を受けて、英国の正式な研究プログラムへの参加が阻害されており、Horizon Europe のプロジェクトに対する報酬をまだ受け取っていない。

 
そのため重要な健康研究に関して規模の縮小をしなければならないところも出てきており、もしすぐにでも支払いがなければ、研究者の解雇、もしくは完全撤退の可能性がある。現在、英国の69のチームが報酬の保証なく活動をしている。

 
英国政府は Horizon Europe への参加に関しては締結させる準備はできているので、EUの送金はするべきであると主張している。しかし先週、欧州イノベーション・研究・文化・教育・青年委員の Mariya Gabriel 氏とScience Businessの対談で、北アイルランドの議定書問題を始めとする政治的な問題の解決に至るまで Horizon Europe への参加の締結は延期されることを述べている。

 
「重要な問題である。」と Imperial College London の麻酔・救急救命の Anthony Gordon 教授は述べた。同教授はまた患者の免疫システムを診断するテストを開発するプロジェクトで Horizon Europe に参加しているグループのメンバーでもある。

 
Gordon 教授は「現在の研究が必要不可欠であると信じているので、報酬がなくても危険を承知で続けている。もし支払いがなかった場合、研究を中止しなくてはならず、これまでの研究が無駄になり、最終的には患者がその被害を受けることになる。」と述べた。

 
資金提供の遅れについて欧州委員会の広報担当を訪ねた際、「グラントの合意や Horizon Europe の資金利用は、個別の合意が適用された後からである。」との回答があった。

 
影響を受けるすべてのプロジェクトはEITによって資金提供されており、新しい製品やサービスを開発する大学、研究機関、企業を支援している。EIT の資金は Horizon Europe から提供されており、英国はまだ正式な研究プログラム参加国ではないため、英国のパートナーには資金提供ができない。

 
英国の研究者は Horizon Europe の助成金に申請できるが、助成金契約を締結するときまでに英国が提携していなければ、独自の資金源を探さなければいけない。6月に公募が開始された通常の研究助成金は、来年の春からこの危機的な状況が訪れるが、EIT にとっては非提携ということが英国のパートナーへの資金提供を妨げていることになる。

 
GE Healthcare の主任研究員と King’s College London の客員教授である Florian Wiesinger 氏 はガン放射線治療の精度と副作用の軽減について共同グループで研究に携わっているが、この遅延は大きな問題と不確実性をもたらし、計画を立てることが非常に困難となり、臨床研究を行っている Newcastle University の研究規模を大幅に縮小することとなる可能性がある、と語った。同氏は「政治的な交渉や駆け引きの犠牲になった気がする。」と述べている。

 
Newcastle University のガン画像診断の専門家である Ross Maxwell 氏によると、プロジェクトの他のパートナーがかなりの犠牲を払って、EU 離脱救済パッケージに関わってくれたことで、Newcastle University は「縮小されたとしても」意味のある貢献ができると述べた。

 
「我々は英国政府が12月31日に Horizon Europe に署名し、資金の利用ができることを前提に研究をしてきた。今となってはこれを楽観視することは困難である。」と述べた。


「Researchers go unpaid as delay to UK association to Horizon Europe starts to bite」:
  Researchers go unpaid as delay to UK association to Horizon Europe starts to bite


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