【ニュース・イギリス】研究担当欧州委員:北アイルランド議定書問題が解決しなければ英国のHorizon Europe の参加は不可(2)

 
提携なしならば、ERA への参加なし

 
Gabriel 氏は現職に就任して以来、各国の研究開発政策と研究課題を調整して、公共及び民間からの投資を拡大するという20年前の計画である単一のERAを改革するということにも取り組んできた。

 
欧州委員会は提案をまとめ、現在各加盟国で議論されている。11月末までに欧州委員会はどの国がERAに参加するか、どの国が利害関係のある提携国として関与するか合意に達しなければならない。

 
加盟国の中でスイスのような第三国を含めることを希望している国もあるが、一方で Horizon Europe に問題なく関連している国のみで活動するべきだと考えている国もある。スイスと UK が Horizon Europe の参加国になる前に ERA の一部になることができるのかと Gabriel 氏に尋ねたところ、議論される必要がある、との返答であった。

 
「提携に関して何も進展がなければ、当然ERAの参加に関して影響が出てくる。利害関係者の参加は加盟国の大学や研究団体がERAの構造の中で意味のあるやり方で代表されるようにするべきである。ただ参加数の帳尻を合わせるための参加にするべきではない。」と答えた。

 
続けて、Gabriel 氏は「欧州理事会が鍵を握っている。加盟国は現在、ERA の将来の構造について合意に達する過程にあり、10月26日にスロベキアで開催される会議で、EU研究大臣が ERA の枠組みの中でいかに各国の研究政策課題を調整するかを話し合う。つまり現在は加盟国がどのように行動で自分たちの言葉が裏付けされるかを知る重要な段階に入っている。」と述べた。

 
欧州員会は ERA の計画の中で、加盟国は GDP の3%を研究に投資するという目標に署名することを希望している。これによって、研究やイノベーションのシステムが不足している国が、先行している国に追いつき、優秀な科学技術をEU全体に均等に広げることができる。

 
Gabriel 氏はこの目標の達成が困難な国があることは承知しているが、各加盟国の政府が EU の COVID-19 の復興基金などを利用し、将来の研究開発の投資の呼び水とすることを望んでいる。3%という目標は20年前に設定されたが、2008年の財政危機より、各国の予算が枯渇し、ほとんどの加盟国の研究開発費は目標を下回っている。

 
Gabriel 氏は研究開発費投資の進展があと20年もかからないことを願っている。「3%の目標が達成できる可能性は以前よりは高くなっている。そのためにも2022年1月に EU 理事会の持ち回りの議長国としてフランスが就任するとき、ERA は政策課題の上位に位置する必要がある。もし来年フォローアップがなければ、復興基金等を獲得するチャンスを得られるかわからない。」と答えた。

 
新しいイノベーション課題

 
欧州委員会は EU の優れた科学を経済利益に転換すると同時に、重要な技術の海外供給への依存の軽減を目指すため、新しいイノベーション課題と行動計画を立ち上げることを計画している。

 
その計画は2022年当初に開始できる見込みであるが、Gabriel 氏にはまだ明確なスケジュールはない。さらに、イノベーション戦略がEUの議会と委員会において立法通過をしなくてはならないかも明確でない。

 
Gabriel 氏はディープテック(科学的な発見や革新的な技術に基づいて、世界に大きな影響を与える問題を解決する取り組み)企業への投資を促進し、10億ユーロ以上の市場評価に拡大する新興企業の数を増加し、女性のイノベーターの数を増やすため、EUは何をすべきかについて、草の根団体組織から情報を得た。

 
一方で、EU は 欧州イノベーション会議(EIC)欧州イノベーション・技術機構(EIT) を通して革新的な新興企業を支援する2つの特化したプログラムを持っている。Gabriel 氏はその範囲に限りがあることを認め「欧州すべての新興企業の成長を支援することはできない。」と述べている。

 
新しいイノベーション課題は、資金をより協調的に利用することで EIT と EIC のモデルをすべての加盟国や地域に広げることを求めるものとなる。「このモデルを広げたいのであれば、共同ファンドと地域のファンドとの相乗効果が必要である。」と同氏は述べた。

 
研究ミッション

 
他の任務として、欧州委員会の5つの研究ミッションの実施に向けて加盟国や地域を説得することが必要である。それらは、以下の5つである。

  1. ガンとの戦い
  2. 気候変動の適応
  3. 海や河川の保護
  4. 温室効果ガス排出量をできるだけ削減し、可能な限り実質ゼロにする(カーボンニュートラル)100の都市での促進
  5. 土壌の健全な育成

 
欧州委員会は正式な研究ミッションを発表したが、Gabriel 氏はプロジェクトが開始され結果を出すまでには更に多くの作業が必要であると述べている。

 
大きな課題は加盟国の協力を得て、ミッションの目標に沿って、投資を支援するように説得することである。「そのためこのような予備段階がある。その後、例を上げて説得する事が可能となる。」と Gabriel 氏は語った。

 


「Gabriel confirms UK can’t join Horizon Europe until row over Northern Ireland Protocol is settled」:
  Gabriel confirms UK can’t join Horizon Europe until row over Northern Ireland Protocol is settled


地域 西欧
イギリス
取組レベル 国際機関レベルの取組
行政機関、組織の運営 政策・経営・行動計画・評価
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