【ニュース・イギリス】研究担当欧州委員:北アイルランド議定書問題が解決しなければ英国のHorizon Europe の参加は不可(1)

 
2021年10月14日、Science Businessは 欧州イノベーション・研究・文化・教育・青年委員のMariya Gabriel氏との対談で、英国とスイスの Horizon Europe の参加における問題点に関して様々な角度より語った。また 欧州研究領域(ERA) の最新情報や研究ミッションに対する支援の呼びかけも行った。

 
当然ながら、英国とスイスが Horizon Europe の提携を決着するには、政治的な相違を解消するためさらなる外交努力が必要である。

 
欧州委員会(EC) は提携交渉を進める前に、横断的な政治問題が解決することを待ち望んでいる、とMariya Gabriel氏は語った。

 
同氏は「Horizon Europe は主題であり、すぐにでも取り組める準備ができると確信しているが、話を進めるためにも、横断的問題の解決が第一である。」と語った。

 
Mariya Gabriel 氏は先月の欧州議会の会議で955億ユーロの研究プログラムに対する英国の参加が 北アイルランド議定書 に関する対立に巻き込まれる可能性を最初に提起した。

 
それ以来、欧州連合加盟国や英国の大学を含む研究関係者は遅延に対する不安が募ってきている。「このような状態であっても研究者は研究への情熱と忍耐を持ち続けてほしい。」と同氏は述べている。

 
同委員会の副委員長のMaros Sefcovic 氏は、英国と北アイルランド間で移動する貨物検査の緩和案を提示した。しかし、独立した統治システムを望む英国政府にとって望むものではないものであったため、議定書の運営上でのあらゆる紛争における、欧州司法裁判所 の監視を排除するまでには至らなかった。

 
北アイルランド議定書は EU 離脱後も北アイルランドをEUの単一市場に残しておくもので、商品や人々の自由な動きを妨げるアイルランド島内の厳しい税関検査を防ぎ、政治的、宗教的な暴動を終結させた1998年の条約であるベルファスト合意を保護するために作成されたものである。

 
英国政府は現在、この議定書は北アイルランドと英国間の貿易に損害を生じると主張している。政府高官は北アイルランドの議定書の第16条を発動し、協定の一部を一時的に停止すると脅している。

 
ポルトガル、リスボンの英国大使館で英国のEU 離脱担当大臣である David Frost 氏が行った演説の中で、現在の緊張状態の原因はEUにあると非難した。Frost 氏は今年はじめの COVID-19 のワクチンの輸出に関する問題や Horizon Europe の参加を拒んだこと(EU の衛星航法システム「ガリレオ」への参加を拒否された)ことなどを挙げて、「我々から見るとEU は建設的な協力関係に戻ることを望んでいないように見える。」と述べた。

 
Gabriel 氏は他の政治的なことが解決されることで初めて英国は Horizon Europe に参加できると語った。「提携を進めるために我々のオプションを確認することが重要であると思うが、これは双方がその体制に合意できた後のみである。」と答えた。

 
スイスの場合

 
スイス政府は新しく改善する二国間関係の交渉が難航しており、EU 結集プログラムへの滞納金支払いの動きがスイス議会内で止まっているため、EU とスイス間の科学協力も暗礁に乗り上げている。その結果として委員会はスイスの研究者の Horizon Europe への助成金申請を禁じ、Horizon Europe の交渉も延期された。

 
今月始めに、スイスは議会が結集プログラムへの支払いを決議し、交渉の再開を示唆した。一歩前進ということになるが、スイス政府と欧州員会がHorizon Europe の提携交渉の再開をするには、行動に移す必要があると、Gabriel 氏は述べている。

 
これには以下の3つの段階がある。

  1. 結集プロブラムの支払いを済ませる
  2. 国際的な合意
  3. 具体的な Horizon Europe への参加方法

現在これらは進行中であり、未だに延期されている状態である。スイス政府と欧州委員会は公式な協議を行っていないが、両方とも「適切な論調」を保っている、と同氏は述べた。

 
EU はスイスとの間に長い伝統的な科学協力があるが、2014年にEUはスイスの研究者による当時の研究プログラム「Horizon 2020」の活動を停止し、深刻な緊張状態に陥った。この危機は部分的な参加の合意により6ヶ月後にある程度は解決し、2017年には完全復帰した。

 
今回の提携でまたこのような行き詰まりが出るか不明ではあるが、委員会としては、スイスに明確で、公式な計画があることを期待している。そうすれば行動の準備ができる、とGabriel氏は語った。

 
Horizon Europe は当初、「世界に開かれたプログラム」であったが、世界的な政治的形勢の変化と、COVID-19により、EUは国際的な研究提携プログラムに対してより慎重になっている。

 
EU は近隣諸国と距離を置くと同時に、オーストラリア、カナダ、日本、ニュージーランド、シンガポール、韓国と交渉を進めている。これまで、正式に提携国になったのはカナダだけである。「現在、カナダとの交渉が最も進んでいる状態である。」とGabriel氏は述べた。他の国々にとってはEUが国際的な研究パートナーとしての期待が増してきている中で、Horizon Europe への参加にかかる費用と労力が見合うものかどうか検討中である。

 
新しい世界的な研究提携方法を模索する中で、欧州委員会はパートナー国が従うべき原則を作っている。その中には学問の自由、知的財産の明確で効果的な保護策、相互の資金提供機会などが含まれている。

 
>>>次に、つづく


「Gabriel confirms UK can’t join Horizon Europe until row over Northern Ireland Protocol is settled」:
  Gabriel confirms UK can’t join Horizon Europe until row over Northern Ireland Protocol is settled


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