【ニュース・イギリス】成人教育:過去、現在、未来

 
2022年6月13日、 英財政研究所(IFS) は、政府が提案する成人教育である 生涯学習資格(LLE) に関して検証した。

 
過去10年間で、成人教育に関する支出が大幅に削減され、成人学習者の数、特に低レベル資格取得者が激減した。政府は、技術教育の改善と貧困地域のレベルアップのための幅広い計画の一環として、過去の削減を逆転させることを計画をしている。この計画の一環として、政府は成人に対して、時間や異なるコースを柔軟に利用可能とする18歳以降の教育として、4年間の高等教育ローン資金への権利を提供する 生涯ローン資格(LLE) の導入を公約している。この要約は、これらの改革の背景やすでにわかっているその潜在的な影響について述べている。

 
主な調査結果

  • 過去10年間で、成人学習者数とそれに対する支出が大きく減少している。成人教育および技能訓練制度への総支出額は、2010/11学事年度から2020/21学事年度にかけて38%減少し、教室で実施される成人教育への支出は50%減少している。また、成人学習者も大幅に減少し、特に低レベルであるレベル2以下の取得者は50%減少し、レベル3の成人の取得者は33%減少した。
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  • 過去の削減を一部取り戻すことになる。成人学習の削減は2024/25学事年度において9億ポンド追加されるため、一部取り戻せることになる。この追加額は成人が初めてレベル3資格を取得にするための公的資金の復活資金も含まれる。しかし、成人教育および技能訓練制度の総支出額は、2010/11学事年度と比べて2024/25学事年度は25%低い。
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  • フルタイムでの学位取得レベルの学生は増加。2010年以降フルタイムの学部生は25%近く増加した。これは学費や生活費を対象とする学生ローンによって促進された。フルタイムの大学院生の数は2016年に大学院ローンが導入されてから60%増加した。
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  • 他の形態の高等教育では、数が減少している。パートタイムの学士号コースの学生(ほとんどが成人)は2010年からおおよそ50%の減少があり、レベル4とレベル5の準学士コースの人数は2015年から2018年にかけて28%減少している。両グループは、学生ローン制度において比較的低いレベルの支援を受けている。
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  • 技能訓練制度は、より高度で高いレベルに焦点を合わせる。2010年以降、成人(19歳以上)の技能訓練制度を利用する人数は、当初、年間35万から40万人に増加した。しかし、2017年4月に技能訓練制度税が導入されて以来、年間約25万までに減少した。同時に成人が参加する技能訓練制度の内容の変化が見られた。2020年には、最も低レベルの技能訓練制度(中級訓練制度)の参加者も、10年前の20万人と比較して、5万人を切った。高等技能訓練制度に参加する人数は2010年当初は数百人程度だったが、2020年には10万人急増した。
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  • 新しい生涯ローン資格を設定する。政府は18歳以降の教育として、4年間の教育ローンを成人に適用する新たな生涯ローン資格を成立することを公約としている。ほぼ全ての18歳以降の教育に関して現行と同様な融資もしくはそれより良い条件の融資を受けられ、この「新しい」資格制度は現行の制度をより透明化しようとしている。この改革は賢明でかなり多くの変更をもたらすことになる。他の方法では対象とならない高等技術資格の取得を目指す者に対して生活費全額支援の拡大、また同レベルか、すでに取得している資格より低いレベル資格獲得を目指す者に対してローン資格の緩和なども検討されているようだ。しかし、18歳以降の教育を4年間と制限することで、特に長期のコースやファンデーション・コースにおいて免除対策が導入されない限り、いくつかの18歳以降の教育にある学生の資格が減少することになる。
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  • 何も資格を取得せず学校を出た者に対するよりよい支援を行う。総合的に考えてみると、この計画は GCSE や同等の資格において、よい成績を収めた人たちに対する更なる支援となる。資格を持たない成人を支援する主な計画は、スキル特訓トレーニングや「マルチプライ」プログラムを通してとなっているが、まだ実績がないため正式な資格に発展することはないようである。効果的な支援やトレーニングをこの層の人々に提供することは、大きな課題であるが、国内の貧困地区のレベルアップの鍵でもある。

英財政研究所(IFS)Institution for Fiscal Studies

参考:Adult education and apprenticeships budget will be 25% down since 2010


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