【ニュース・イギリス】大学の研究に対する投資はレベルアップを促進する

 
2022年5月19日、Times Higher Education は REF2021 の結果で躍進した Northumbria University の学長である Andrew Wathey 教授が同誌に寄稿し、研究能力の成長は教育、ビジネスや雇用に利益を持たすことを強調している。

 
多くの政府閣僚が言っているように、イングランドの地方のレベリング・アップは高技能と高賃金経済への移行がカギである。この移行は、定義上、生産性のある伝統的な地区における集中化や独占化ができない投資やイノベーションなしでは不可能であり、かなり困難である。そして大学はその変革の原動力であり続けなればならない。

 
政府が求めている「レベリング・アップ」の目標を達成するために大学は重要な役割を担っている。大学は、雇用者として、また他の地域ビジネスの収入源として、地方経済の中心的な柱となっている。これは学生の教育、労働市場の参加に備える準備、研究を通して新しい知識の創造と応用など大学の基盤となる目標の前に来るものである。Oxford 、Cambridge 、ロンドンの大学で形成するゴールデン・トライアングル以外の大学にとって、歴史的に地域生産性の低さやスキルの格差に取り組む能力は、大学の研究能力と密接に関連している。

 
先週、英国中の機関が学術研究の質と量、そして同様に重要である社会的、経済的な影響を評価する研究評価制度(REF)の結果が出た。このような評価は不適当であり無用なものであるというものもいる。しかし、廃止することは政府の道具箱からレベリング・アップの達成と、英国の研究における高い国際競争力を維持する道具を取り除くことになる。

 
大学で勤務をしながらその結果を待つということはミシュランガイドの星を受賞したかどうかを待つシェフのようである。評判とは一夜にして作り又なくすこともあり、良い評価は大学にとって変革をもたらす可能性がある。学生経験を豊かにする才能のある学術職員を引き付け、維持し、地域経済に利益をもたらしイノベーションを推進する投資や、提携、ビジネスパートナーシップを確保することに役立つ。

 
歴史的に、研究評価が高い業績はラッセル・グループの大学、特にゴールデントライアングルの大学といくつかの小規模の研究集約型の機関であった。しかし、他の機関での業績でもレベリング・アップが見受けられ、近代的な大学が多く所在している歴史的に経済成長や生産性の低い地区における高給と高スキルの格差を埋める橋渡しに役立つかもしれない。

 
私が率いた Northumbria University の変革は以前から進行中であった。英国における研究力で23位の地位(研究の質と量の産物)は研究を利用し、大学全ての活動、学生、経済、社会へ大学の利益を増強することに焦点を絞った14年間のビジョンの賜物である。

 
どのように行われたかは1冊の本に値するぐらいで、その要素はたくさんある。いくつか挙げてみると、やる気を起こさせる教師であり優れた研究者である研究者を任命する、施設、機会、文化に関して官僚主義的な手続きを削減し、投資を節約、講師職への昇進を保証する若手研究者のポストの開設などである。大部分において、我々の成功は既存のものを再利用することで達成された。つまり費用は変革のコストであった。研究資金の取決めの安定化や、研究評価のための動機付けも個人や学部、機関にとって重要である。

 
REF2021 ではいくつかの重要な傾向が分かった。国際基準において英国はすでに科学超大国でイノベーションの国であることを示している。6,781件の影響のある事例は英国の知識産業にいる関係者が徹底的な研究に報いている豊富な要覧を提供している。また今回の結果はすでにレベリング・アップが始まっていることも示している。

 
Newcastle という都市は現在、Manchester およびゴールデントライアングル以外で研究者が集中している都市となった。Northumbria University、University of Newcastle および Durham University の能力を合わせると、英国北東部はロンドンを除く最大の研究拠点となっている。我々は、以前はより裕福な地区に限られていた投資を引き付ける北部の研究大国を築いている。また、我々はイノベーションを推進し、高スキルの職を創出する企業との提携も築こうとしている。そして、成長や生産性に関する歴史的な課題、つまり、地域における職や機会の欠如による地方労働市場からの人材流失を止めるための環境を作り出している。

 
これは、大学の研究能力に対する計画、持続的な投資により可能となった。Northumbria University は英国北東部においてラッセル・グループの大学すべて合わせた数よりも多くの卒業生が専門職や管理職に就く。継続的な研究への投資はいかに教育の質や雇用機会に貢献して、意欲的で急成長にある企業との長期的な提携を築くかを象徴している。

 
もちろん、成長を遂げた大学がもっとレベリング・アップに貢献するためにやるべきことはある。成長する大学が英国の研究基盤の中で役割を果たすことができるように、政府全体で配分される研究予算の配分について、より厳格に精査される可能性がある。将来の評価においては、研究プロジェクトが地域の利益になることにもっと注意を払う可能性がある。これは、大学は追加投資の獲得に役立つであろう。

 
ゴールデントライアングル以外の地区での大学研究能力の成長は、社会的、経済的利益をもたらすだけである。我々 Northumbria University はミシュランガイドの星を獲得したようなもので、他の大学は既に我々に続いている。

 


Times Higher Education: University investment in research can drive levelling up


地域 西欧
イギリス
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
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