【ニュース・イギリス】英国のホライズン・ヨーロッパの将来に関する懸念が広がる

 
2022年5月17日、University Business は、英国大学協会(UUK)やラッセル・グループは英国が EU の研究やイノベーションの資金調達プログラムであるホライズン・ヨーロッパからの撤退の可能性を警告していることを伝えた。

 
英国が EU から離脱し、正式なメンバーではなくなったが、EU 離脱の協定では引き続き準参加国として加わることを可能となった。

 
暫定合意から約18か月がたち、英国は EU の研究プログラムに参加継続するため年間21億ポンド支払うことになるが、どのように進めて行くかで意見の一致を得られていない状態である。

 
ラッセル・グループの最高責任者である Tim Bradshaw 博士は今週末に開催される研究大学連盟の会議において「提携参加の窓が閉じつつあり、しかもかなり急速であることを伝えたい。」と述べる予定である。

 
「我々は夏を前にして参加が奪われる寸前であると、ますます感じられる。」

 
「合意にこぎつけなかった場合、英国政府は緊急時対応策を立てることは正しいと主張する一方で、間違えてはならないのは、英国が参加することがなければ、研究にとって悪い知らせとなり、UK と EU の両方にとって決して最高の結果ではない。」と Bradshaw 博士は述べた。

 
「(英国の)科学大臣やその他からできるだけ参加するように誠実に取り組んでいる」と断言し、Bradshaw 博士は代表団に対して、「手遅れになる前に自身の政府や関係者に対して主張するべきである。」と警告する。

 
2021年11月、1,000以上の大学を代表とする25団体は、欧州委員会(EU)の委員長である Ursula von der Leyen 氏宛ての書簡で、英国のホライズン・ヨーロッパの参加に関する合意の欠如は、我々の共同体としての研究力と競争力を弱体化する危険性があることを伝えた。

 
今年2月には、ヨーロッパの指導者たちに向けて、「政治的なゲームを中止し、人々の利益をまず優先に」という Stick to Science のキャンペーンが開始された。

 
現在までに11人のノーベル賞受賞者や起業家、イノベーター、研究資金提供機関、高等教育機関や研究機関のトップを含むヨーロッパや世界の科学界からおよそ6,000人の署名者の支持を得ている。

 
UUK のブログ上では「この長引く不確実性はすでに長年培ってきた科学的な関係に被害をもたらしている。英国の科学者はリーダー的な役割を強制的に諦めたり、研究チームから去るなどして、多くの既存プロジェクトに被害をもたらす。」

 
「気候のデータの改善やサハラ砂漠以南のアフリカの貧困関連の病気の取組などがその対象となっている。」

 
「ホライズン2020では英国は参加数では第2位であったが、ホライズン・ヨーロッパの初期のデータによると今回すでに第7位に順位を落としている。」

 
欧州研究会議(ERC) は最近、英国の2021年以降の助成金受賞対象者に対して、もし受賞資格を保持するのであれば、2か月以内に EU に居住するように書簡で通知した。研究者は英国政府からの資金提供が保証されているが、UUK はこの状況は「遅れの影響で研究者と研究が厄介ごとに巻き込まれたという、嘆かわしい1つの事例」であると述べている。

 
英国がホライズン・ヨーロッパに参加することが最善策であり、「明確ではっきりとしたヨーロッパ研究と繁栄の勝利」であると主張し、もし参加することができなかった場合、英国政府がどのように最善をつくすのか短期及び長期の勧告事項を挙げた。

 
短期的な対策:

  • EU の助成金が受けられなくなる助成金入札に関して国内の評価を完了することに取り組む。
  • UKRI の Future Leader Fellowship やその他国内アカデミー制度などでこれから実施される国内助成金や特別研究員の募集に対して予算の増額。
  • 英国の参加により追加的な規則や制限はなく、また英国の入札の2次的な評価を保証する方法で、第三国の立場で参加する資金提供に取り組むことを実現する。
  • 英国の参加が第3国となり、参加者の激減を想定し、英国ホライズン2020の支出内容を基に、英国の大学に対する柔軟なブロックグラントを助成することで EU からの資金不足の緩和を行う。

長期的な対策:

  • 世界のトップレベルの研究者を誘致し、英国での滞在を維持し、世界的な研究の可動性のための新しい制度。
  • 世界の経済先進国、特に欧州やボトムアップの機会も含む更なる二か国間科学助成金の合意。
  • 英国大学の研究とイノベーションにおける新しい国際ビジネス投資を奨励する資金提供。
  • 産業界のパートナーも含めて、英国大学と海外機関間の国際的で協力的な博士号の支援。

一方で UUK は全ての関係団体は Stick to Science のキャンペーンの署名をすべきだとしている。

 
「我々はヨーロッパ研究界とイノベーション界で声を一つにして、このやり方は我々の科学の可能性に自ら深刻な傷をつける危険があることを政府に対して声を大にして伝える必要がある。」と結論付けている。

 
「しかし刻々と時間が過ぎていく。」

 


University Business: Concern grows over UK’s future in Horizon Europe


地域 西欧、EU
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
研究支援 研究助成・ファンディング