【ニュース・イギリス】REF2021: 英国の大学研究の質が世界のトップであることを示す新たな証拠(3)

 

参考記事:

 
①2022年5月12日Guardian 紙:Oxford and UCL tipped to win lion’s share of grants in UK research audit (Oxford 大学と UCL が助成金の大部分を獲得する結果が出た REF)

 
76,000人の研究者が年間20億ポンドの配分のため使用される研究評価で、Northumbria University は順位を急上昇した。

 
英国の大学は、これまで考えられてきた以上に世界のトップレベルの研究成果を挙げていることが分かった。これは英国の76,000人の研究者の研究成果と実社会の影響を調査した大規模な結果から見られる。

 
2014年から2021年までの研究を評価する研究評価制度(REF)はおよそ186,000件の研究を評価したもので、その結果は年間約20億ポンドの政府助成金の配分に利用される。

 
専門家によると、この結果では University of Oxford、University College London は「世界レベル」と評価した割合が高かったので政府助成金を最も獲得する可能性が高いことが分かった。

 
全体的に「黄金の三角地」といわれるCambridge、Oxford および、ロンドンの大学群、によるトップクラスの研究の割合が若干減少し、小規模な研究機関における高質な研究の部分が大きくなってきていることを示している。

 
Northumbria University は看護学、工学など健康に関する研究成果が評価を受けて最も飛躍した大学の一つとなった。

 
Northumbria University の学長である Andrew Wathey 氏は、将来の資金調達における市場占有率が52位から28位に上昇したことに対して、「世界的な研究力を持つラッセル・グループがかつて鎮座していた領域に我々は食い込んだことなる。Northumbria University は研究における新旧の大きな隔たりを超えた最初の近代的な大学であり、他の大学も続いている。」と答えた。

 
2年間にわたる評価の結果、提出された研究の41%は「世界レベル」という4つ星を獲得、43%が「国際的に卓越」の3つ星を受けた。REF2014 では22%の研究が世界レベルと評価されたが、トップのリーダーは、提出書類の改善と実施方法の改定により評価が上がったと述べている。

 
2014年以降の改定は研究に大きく貢献している全ての研究者に書類提出を大学に強制させた。またその期間に研究が中断された研究者のために提出する研究の数に関してより柔軟さを与えた。

 
REF2014 では、およそ52,000人が190,000件の研究を提出したが、REF2021 では76,000人の研究者は研究および書籍、論文雑誌も含み185,600件提出した。

 
リサーチ・イングランドの首席議長である David Sweeney 氏は、この改定により前回のREFと結果を比較することが不可能になったと述べている。「英国における研究は引き続きとても強く、今後もさらに強くなっていくとみているでしょう。しかしこれは別の尺度によるのである。」と述べた。

 
REF の芸術・人文学の評価委員の委員長である Dinah Birch 教授は、その違いは広範囲に及ぶと述べている。「これは全く別物であり、REF2021 の結果をREF2014 の結果と比較すると誤解をを招く。」と述べている。

 
Birch 教授は「驚くほど多彩な」研究が提出された。「Anthony Trollope の小説から宇宙の物質を構成する粒子の性質や製造革新の新材料の特定まで、とにかくあらゆるものであった。」と述べた。

 
研究および大学の資金調達に関する専門ウエブサイトである「Research Professional News」が算出したランキングによるとOxfordの「市場シェア」の資金提供額は前回のREF2014の発表後の6.24%から5.7%へ減少する可能性がある。

 
ランキングでは、University of Lancaster とUniversity of Loughborough が研究集約大学のラッセルグループの2つの大学より良い結果を出しており、University of Lancaster はQueen’s University Belfast とLondon School of Economic より上位であった。

 
Research Professional News の編集者である Sarah Richardson 氏は、「REF の結果は大学にとって長期的で、もっと柔軟な資金調達の流れをもたらすので大変重要である。大学や研究者にとって給与や初期段階のプロジェクトの資金など、現在かかっている費用を賄い、一つ一つのプロジェクトに投資するというのではなく、今後の計画や研究の可能性のための投資に役立つため大変重要である。」と述べた。

 
英国学生連合(NUS)の書記長である Jo Grady 氏は

 
REF は、職員の時間や各機関の負担であり、「機関や学部における勝者か敗者を気まぐれに指定することに執着している研究文化の象徴」であると言われていると語った。

 
Guardian 紙:
https://www.theguardian.com/education/2022/may/12/oxford-and-ucl-tipped-to-win-lions-share-of-grants-in-uk-research-audit

  
②2022年5月12日 Times Higher Education: ゴールデントライアングルの大学は研究資金調達の配分が減る。

 
ロンドンの大学、Oxford 、Cambridge のゴールデントライアングル外のいくつかの大学は、前回のREFに比べて全体的な実績が改善し、REF2021 の結果により資金が増えるようである。

 
University of Birmingham, University of Manchester, University of Glasgow, University of Liverpool など、主要都市にある大規模研究機関や小規模の研究機関および、地域の現代大学は、Time Higher Education が算出した平均成績(GPA)によるとランキングが上昇している。

 
しかし、REF の結果を基本として資金を配分する現在の方法論に基づいて、質関連(quality -related :QR)の資金の配分を予想している、THE の市場シェア測定基準による資金の増加が確実視されているように見る者もいる。

 
市場シェア分析では REF2014 と比べて市場シェアで大きく%ポイントを下げた4つの機関は Oxford , Cambridge, Imperial College London, UCL である。前回のREFでは4機関のシェアは約22%であったが、今回は19%に下がった。

 
リサーチ・イングランドの首席議長である David Sweeney 氏は、同誌に対して「REF2021 の結果において最も覚えておく必要のある重要な点は、今回研究に対して「多くの責任」を持つといわれる全ての研究者を対象とする規則変更により、REF2021 に参加した多くの追加的な研究者はロンドンと南東部以外から参加している。

 
過去において我々はかなりえり好みをしていた。多くの研究集約大学は南部に多くあり、質という問題を見落としていた。研究は我々が考えているより少し基準が上がっているようである」と答えた。

 
しかし、ロンドンや南東部もしくはゴールデントランアングルが「少し劣っている」ということではなく、我々が考えていたより他の地区は少し良かったということであると付け加えた。

 
市場シェアの%ポイントが最も上昇した Northumbria University の研究・イノベーションサービスの部長で、Association of Research Managers and Administrators の議長を務める Jennifer Stergiou 氏は、REF の結果はゴールデントライアングル以外の研究機関群の重要性を具体化した。

 
「北東部はロンドン以外の都市で最大の研究者のグループであることは提出書類の数からみてもすでに明らかである。」

 
「(政府の)レベリング・アップで言われている様々なこととは対照的で、他の方法で検証することができない重要な情報である。」と述べた。

 
University of Manchester の科学・技術政策の教授である Kieron Flanagan 教授は、この結果によってREFの将来に対する新しい疑問が上がってくる。なぜなら、以前の評価において「暗黙の了解」では、主に南東部内で「できるだけ少ないところに資金を集中させること」であったからである。

 
「REF とは、できる限り少ないところに資金を集中するため資金提供方法の基本方針を提供するために導入された。」とFlanagan 教授は述べ、「1980年代の最初に実施されたとき、限られた研究予算を優れた研究に集中することが目的であった」ことを説明した。

 
「もし結果が大きな再配分につながるのであれば、REF の論理を弱体化することになる。質関連の資金提供はレベリング・アップとは全く逆のものである。」

 
「REF の根底にある目的は資金の集中である。これを我々が国として臨むことなのか考える必要がある。」と Flanagan 教授は述べた。

 
GPA では Imperial College London が最も高く3.63で、最も専門性の高い Institute of Cancer Research (ICR) を抜いて首位に立った。ICR は REF の34あるユニット評価のうち、異なる分野を網羅する2つのみ提出した。

 
Times Higher Education: REF 2021: Golden triangle looks set to lose funding share

 
REF 2021::Times Higher Educationランキング表(Times Higher Education より)

 
その他参考記事: REF 2021: Don’t go compare


 

地域 西欧
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組
研究支援 研究助成・ファンディング、研究評価