【ニュース・イギリス】高等教育独立調停局が2021年の年次報告を発表

 
報告書の概要:

 
2022年5月4日、高等教育独立調停局(OIA)は2021年の年次報告書を発表した。

 
苦情件数とその結果

  • 2021年において新規の苦情を2,763件受けた。2020年(2,604件)より6%上昇し、過去最高記録となった。また1つの苦情内容として多人数の学生グループから出ていた。
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  • 2021年に受け取った苦情で Covid-19 に関連する苦情は全体の37%を占めている。これは12か月間の期間に及ぶため、Covid-19 の流行初期段階や最近の経験までの苦情が含まれている。
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  • これらの苦情は学生の所属大学内で対処したが、結果的に学生がその結論に対して不服があった場合OIAに持ち込まれる。
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  • 大量の件数および COVID-19 がまだ継続的であるにもかかわらず、我々の目標とするスケジュール内で処理されており、すでに2,654件が処理済みとなっている。またこれは我々にとって記録的な処理件数で2020年(2,597件)の処理件数より2%上昇している。
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  • 合計で、全体の27%は正当と判断されている。(正当(3%)、部分的に正当(9%)、学生側に有利に和解(15%))。この数字は昨年と比べて若干高く、和解となった割合は過去最高となった。
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  • 我々が推奨した多くの実用的な救済策と同様に、総額792,504ポンドの財政的な救済策を推奨した。さらに、最終的に和解成立になったことで、合計511,875ポンドが学生に支払われている。2021年に財政的な補償額の合計は1,304,379ポンドで、前年に比べて大幅に増加した。これは Covid-19 の影響により、いくつかのケースでは通常より実用的な救済処置を見出すことが困難であったことが理由としてあげられる。もっとも1つのケースで高額だった財政的補償は68,000ポンド、また63人の学生は5,000ポンド以上の金額を受け取った。

苦情の本質

 
2020年において高等教育機関は Covid-19 の継続的な影響の対応がほとんどであった。Covid-19 も2年目を迎えると、学生や高等教育機関が直面する問題は発展し続け、我々への苦情にも反映された。

 
苦情内容の多くの割合は、サービス関係(45%)で2020年(43%)と同様に高い割合を占めた。その苦情内容としては、授業、授業のやり方、指導、授業関連施設などの問題に関連している。

 
学術的な要請(29%)に関する苦情数は2020年(33%)と比べて若干減った。学術的な苦情内容として評価、進級、成績が含まれる。(追加的な検討要求も含む。)

 
その他の苦情内容は比較的少ないままではあるが、全体的にも27%を占めており近年の苦情より高く、その上昇はほぼ均等に分布している。

  • 財政問題:6% (2020年:5%)
  • 均等法/人権:5% (4%)
  • 生活関連/授業以外の問題:5% (4%)
  • 懲戒問題(学術系):5% (4%)
  • 懲戒問題(非学術系):4% (3%)
  • 学部授業の適合性:2% (1%)

苦情から学ぶことの共有

 
我々は苦情から学んだことを共有するため、情報やガイダンスを公開し、ウェブナーや仮想ワークショップで成功を収めたアウトリーチプログラムを引き続き開催した。我々のプログラムは、イングランドとウェールズ全体の学生団体や高等教育機関やその他様々な組織から参加者が集まった。また学生から直接経験談を聞くため学生討論会も開催した。

 
苦情内容の実例の概要:

 
2021年に受けた苦情の一部を挙げる。

  • 新しい芸術修士課程の2年生の学生グループからプログラムとその広報の方法に関して苦情を受けた。1年生の学生も同様に我々は苦情を受けた。2年生は Covid-19 の深刻な影響を受けており、大学は実践モジュールを延期しなくてはならなかった。大学はいくつかの問題に対しては認めており、解決のため実践的な方法を計画していた。しかし Covid-19 のためそれらの計画を実施することができなかった。我々は大学からの補償は十分ではなく、苦情は部分的に正当化されると判断した。大学側は学生に対して謝罪し、学費の50%の返還、またグループに対してこの問題によって生じた苦痛や不都合に対してさらに6,250ポンドの支払いを提言した。そのほかいくつかの実例推奨を行った。
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  • BSc の勉強をしていると思っていたが、BA (文学士号)を授与された学生。学生は誤解を招く情報を提供され、今後、大学院に進むにあたり影響が出ると感じた。大学は入学前の情報はもっと明確であるべきであったことは認めたが、学位に関しては UCAS のウェブサイトと学部ハンドブックに正しく記載していることを説明し、学生に対してこの問題に対して生じた苦痛に対して1,000ポンドの補償金を提示した。大学側はBAはBScと同様な専門的認定があり、同様な価値があると述べた。我々は混乱させるような情報に対する学生の苦情は有効であるが、大学側の対処は妥当と判断し、この苦情に関しては正当化されなかった。
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  • 学業中に大怪我をした学生。学生は大学側に対して、怪我が学業に及ぼす長期的な影響に対して今後のサポートを求めた。大学はいくつかの支援をしたが、障害学生手当(DSA)に関する情報を翌年まで提供しなかった。つまり学生は学部終了の数か月前までそのサポートを受けられなかった。学生は学位号成績で2:2(Lower Second-Class Honour) を習得したが、2:1(Upper Second-Class Honour)のボーダーラインに近かった。もし DSA のサポートを早く受けていたのであれば2:1の成績を収めることができたと主張した。我々はこの苦情は正当であると判断した。また大学側は学生がまず、当初サポートを求めてきた時点でDSAを紹介するべきで、もしそうしていたのであればもっと早く学生は必要なサポートを受けていただろう、と考えた。我々は大学がこの状況を考慮し成績をもう一度に直すように勧告した。大学の判断で学生は2:1を授与した。

平等・多様性・包括性

 
今年も平等、多様性、包括性は引き続き重要な焦点となり、今後も我々の報告書には民族性別ごとにケースワークデータのいくつかの要素も調べ、我々の組織内でも多様性と包括性の強化に努めていきたい。

 


高等教育独立調停局(OIA): OIA publishes Annual Report for 2021


地域 西欧
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組
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大学・研究機関の基本的役割 教育
統計、データ 統計・データ