2022年4月20日、英財政研究所（IFS）は 教育省（DfE）の 長期的教育成果（LEO） のデータベースを基に、学位等級による早期キャリアの収入の差異を検証した。LEO のデータセットは2002年以降のイングランドでGCSEを受けた全ての人を対象とした学校の成績、大学の成績、納税記録と関連づくものである。このデータを利用することで IFS は、学校での成績なども含む様々な背景の特性を考慮しながら30歳までの学位等級の収入や報酬を推定することが可能となった。この調査での結果は：

• 大学生の学位等級の習得割合は、専攻科目、出身大学によって大きく異なる。2012年から2015年にかけて大学を卒業した者たちの中でFirst class honours（First）を習得したものは20％占める。Second class honours、upper division（2:1）は半数以上で、Second class honours、 lower division（2:2）は20％、それ以下の成績習得はおよそ5％ほどであった。数学を含む専攻科目は他のどの専攻科目より均等に収入を得ていた。優秀大学では高い学位等級であればその収入も増える傾向があった。

 

• 全ての専攻科目とその大学の優秀さで、より高い成績を習得する長期的な傾向が、2010年の卒業生から加速した。卒業生の First の習得は1999年から2015年までの間に3倍以上になった。一方で2:1の習得はほぼ横ばいで、2:2の習得の割合は最も減少した。

 

• 卒業時の学位の等級において収入の格差は大きい。卒業5年後、税引き前の収入中央値は2013年に2:2を習得した男女は、2:1を習得したものより3,800ポンド低かった。（女性は15％、男性は13％低かった）女性で First を取得したものの収入は2:1を習得した女性よりも2,200ポンド（8％）高かった。男性でFirstを習得したものは2:1を習得したものより4,100ポンド（14％）高く収入を得ている。

 

• 注目すべき特性を考慮したとしても、学位等級の相違による男女の間の収入は大きい。注目すべき特性を条件とした場合Firstが2:1より収入が多かったのは女性で3.5％、男性で7.0％であった。2:1の学位成績習得と比較した場合、それより低い学位習得は女性では14.7％、男性ではでは18.3％低い収入となる。

 

• 高い学位を習得した場合、収入は専攻科目によっても大きく異なる。学位の等級は収入に大きく左右するが、全く影響しない専門科目もある。男女とも法律学や経済学を学んだものにとって2:1ではなく2:2を習得となれば15％収入減を意味する。一方で教育学、英語学を専攻したものにはあまり違いがない。労働市場での高い見返りの専攻科目は高い学位等級となり、低い見返りの専攻科目は低い学位等級となる傾向がある。これは、高い収入の専攻科目であったものは少なくとも2:1を習得しなければ高給職に就くことができない。（医学は例外で、常に学位等級の影響のない高収入の専攻科目）

 

• 最低2:1以上の学位成績は優秀大学出身者としてより大きな収入を得ることが可能となる。注目すべき特性を考慮すると男女共に2:2の成績を習得した優秀大学出身者は30歳の時点で平均収入が2:1を習得したものより20％低くなり、あまり優秀でない大学の場合、女性は6％で男性は8％に留まる。

 

• 最も優秀とされる大学（Oxford, Cambridge, Imperial College London, London School of Economics）で First を習得した場合の収入において男女間に大きな差がある。女性の First と2:1の間ではほとんど差がみられないが、男性では14％と差が大きい。

 

• 我々が調査した期間に卒業生の平均成績が大幅に上昇したにも関わらず、その間に特性を考慮しない成績などに関して特に大きな変化がない。卒業5年後の卒業生の中央値収入は、2002年から2009年にかけて卒業したすべての学位等級および男女とも5,000ポンド低くなった。しかし、調査期間中の学位等級による収入格差は一定している。これは、学生の成績の向上と学業の水準の低下の両方の時期が一致している。学業の低い水準は全ての学位等級に影響し、成績や収入と学位等級の間の格差はほとんど変わらない可能性がある。

英財政研究所（Institution for Fiscal Studies：IFS）：　How much does it pay to get good grades at university?