【ニュース・イギリス】イングランドの高等教育機関の財政的持続可能性に対する規制 

 
2022年3月9日、英国会計監査院 (NAO)は、高等教育機関の規制局である学生局(OfS)の責任を追及する新しい報告書を発表した。

 
報告書の背景

 
高等教育機関が研究や教育のために政府資金を利用したり、学生が政府による学費や生活費のローンを受ける場合、高等教育の規制局である学生局(OfS)の登録が必要である。OfS は教育省(DfE)によって出資されている。2021年7月、イングランドの254の高等教育機関が OfS に登録されており、およそ230万人の学生が(継続教育やシックスフォームカレッジを除く)学んでいる。そのうち180万人が英国出身者で、160万人が学部生である。2019/2020学事年度の高等教育機関の総収入は361億ポンドで、36%が公共財政から出ている。

 
学生の高等教育への参加の支援、高等教育の高い質の経験ができるようにすること、学生が大学の勉学中の利益を保護すること、学生が将来就職または研究を続けていくことができるようにすること、大学での教育がその価値に見合う対価を得られるようにすることなど、OfS の目的は多岐にわたっている。もし高等教育機関が財政的に持続可能でなく、存続不可能になった場合、学生やそれらの分野において悪影響が及ぶことになる。財政的な圧迫は教育機関の破綻、キャンパスやコースの閉鎖、教育の質の低下、高等教育進学の制限などのリスクを高める可能性がある。

 
報告書の対象範囲

 
NAO の報告書は、2018年に活動を開始した OfS に関する初めてのものである。初年度は高等教育機関の登録に費やし、2019年8月には規制当局として本格的に活動を始めた。つまり2020年当初から COVID-19 が始まった時点ではまだ比較的新しい機関であった。高等教育機関の財政的な持続可能性に対するリスクはすでに高まってきており、COVID-19 によって高等教育機関に新しい大きな混乱とリスクを付け加え、OfS に新しい課題をもたらした。

 
この報告書は高等教育機関の財政危機の影響から学生の利益を保護するという OfS の責任に焦点を当てている。OfS の他の責任でもある教育に関しては考察はしていない。OfS は若い組織なので、NAO は今後成長し続けるにつれてその分野に焦点を当てるべきかを特定するためにその実績を検証した。

この報告書は高等教育機関の財政危機の影響から学生の利益を保護するというOfSの責任に焦点を当てている。OfS の他の責任でもある教育の質などの問題に関しては見ていない。OfS は若い組織なので、NAO は今後成長し続けるにつれてその分野に焦点を当てるべきかを特定するためにその実績を検証した。

 
報告書の結論

 
高等教育機関の財政的な持続可能性は、毎年200万人の学生に対する教育の質とその価値の費用対効果に大きな影響を与える可能性がある。OfS が中心となった現在の規制制度は学生の利益を保護するために成立されたものである。これまで、OfS の規制の方針においてこれまで教育機関における失敗というものは見受けられなかったが、赤字の機関が増えてきているので、高等教育機関の中で財政的な緊迫が増していることを示している。規制局としてはまだ発展途上である OfS は COVID-19 の流行によって、大学教育の費用対効果に対する学生の満足度が急激に低下し、この時期、課題に対処しなくてはならなくなった。財政リスクの評価をするためにデータを重視するやり方はまだすべての機関から信頼を得ているわけではない。

 
学生と納税者の利益を適切に保護するために、政府と OfS は効果的な規制の優れた実証原則から学ぶことを今一度熟考する必要がある。それらを実施することで、学生にもたらす機関の財政的持続可能性に関する圧力のリスクについて OfS 側の理解が強まる。また、OfS が規制局として高等教育の信頼性を高め、高等教育の財政的持続可能性に対する増大するリスクに対処するための体制を作り上げることにもなる。

 


英国会計監査院 (NAO): Regulating the financial sustainability of higher education providers in England


地域 西欧
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組
学生の経済的支援 学費、学生向け奨学金