【ニュース・イギリス】英国の研究とウクライナとのつながり

 
2022年3月7日、Research Professional News はロシアのウクライナ侵攻を受けて、共同研究を中心とする分析で、英国とウクライナの研究開発が成長を示していることを伝えた。

 
英国とウクライナの学術的なつながりは、過去10年間の間に着実に増加し、現在ではウクライナにとって英国人研究者が共同研究者として世界で6番目の重要な位置づけとなっている。

 
ロシアによるウクライナ侵攻がますます残忍さが増す中で、両国の学術的なつながりに注目が集まってきている。

 
世界の多くの資金提供者や機関は、ウクライナとの連帯を宣言し、ロシアとの絆を切ることを求めているが、英国大学協会(UUK)は抗議の手段として、学術提携の全面禁止を支持することはない、としている。

 
Web of Science の20,000の専門誌で索引されている記事やレビューを分析したところ、ウクライナの研究者は昨年12,000の論文を発表しており、15年前の2倍となっていることが分かった。(Web of Science とResearch Professional はいずれも Clarivate が所有)ロシアの研究者はウクライナの研究者と最も頻繁に協力しており、過去10年のウクライナの総出版物95,714件のうち10%強の9,714件が共著されていた。

 
第2位はポーランドの9,190件、第3位はドイツで8,360件、第4位は米国で7,822件、第5位はフランスで5,822件、そして第6位は英国で5,362件であった。

 

 
英国とのつながり

 
英国とウクライナの関係は過去10年間の間にゆっくりと成長してきた。2012年この2国間の共同著作とする論文は391件で、2021年までにこの数は592件に達している。

 
Clarivate の主任研究員である Jonathan Adams 氏は「英国とウクライナの論文の多くは素粒子物理学と天文学の関係する専門誌に記載されている。これらの分野では研究プロジェクトが大規模な国際共同研究となり、著作者の数が多い出版物を出版する傾向がある。」と述べている。論文数の多い分野については、化学、異分野間の材料科学と医学、そして生態学、ナノサイエンス、数学と続く。

 

 
Imperial College London は英国の中でも最も共同著作を行っている機関で、そのあとに University of Bristol が続く。

 
そのほか上位5位に入る英国の提携研究機関として、UK リサーチ・イノベーション(UKRI)科学技術施設会議(STFC)ラザフォード・アップルトン研究所(RAL) STFC のがある。

 
残りの10位以内は University of Oxford, University of Birmingham、University of Southampton、University of Warwick と Brunel University である。それに続く大学は The University of Manchester、University of Edinburgh、University of Cambridge、そして University of Glasgow では過去10年間で数百の共同論文が発表されている。
 

 
Imperial College London の総長である Alice Gast と学長の Ian Walmsley 氏は共同声明で「英国、ロシア、ウクライナの科学者は医療、高エネルギー物理学、宇宙探索の分野において何十年も親密に協力してきた。紛争時でも国境を越えて活動し、その発見によって世界を改善し、分断した関係を再構築する上で重要な役割を果たしてきた長い歴史がある。このような個々の関係は継続しなければならない。しかし我々はロシアと提携するつもりはない。」と述べている。

 
英国の他の機関もこの侵攻を受けて、ロシアとの関係を慎重に検討している。University of Warwick の副学長である Stuart Croft 氏は2月28日に、同大学は「ロシアの機関との関係をすべて見直し、できるだけ関係や契約を解消する方向で合意した。」と述べている。

 
英国政府もより広範な制裁処置の一環として科学・イノベーションのロシアとの提携を見直すことも発表している。

 
その他の絆

 
一方、ウクライナ侵攻でロシア側についたベラルーシとウクライナのつながりは比較的小さい。ベラルーシは、アイルランド、メキシコに次いで、ウクライナにとって31番目の提携先であり、ロシアとのつながりが多い。ウクライナとベラルーシの論文の約3分の2は共同著作としてロシア人の研究者も含まれている。

 
ベラルーシそのものは「研究としてはマイナーな存在で研究成果もあまり伸びておらず、ウクライナの4分の1から6分の1まで減少している。」と Adams 氏は述べた。

 
「ウクライナとの共同研究が最も急増しているところは中国である。1990年代はほとんどなかったが、2021年には578件の論文でウクライナ全体の4.86%を占めている。」と Adams 氏は付け加えた。

 
ロシアにおいて、近年は国際的な共同研究が「比較的停滞気味」である。英国は5番目に多い二国間の提携先であり、1990年代には一握りの共同論文しかなかったが、2017年、2018年、2019年では400件強となった。

 
「フランスはロシアとの協力では英国に先んじているが、中国は急激な成長軌道に乗っているため、中国に間もなく抜かれるであろう。」と Adams 氏は述べた。

 
米国とドイツは依然としてロシアとの最も多い提携先であるが、ロシアの論文に占める割合は3%に過ぎない。

 
「ロシアで索引されている研究論文成果は過去25年間でほかの研究主要国ほど急速な成長がない。しかしこれはロシアのアカデミーがロシア語の専門誌における出版にこだわっているためロシア語圏以外のアクセスが難しいことが一因かもしれない。しかし、ロシアにおける科学者の数やその地位は低下している。」と Adams 氏は述べた。

 


Research Professional News: In focus: UK’s research links to Ukraine


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