【ニュース・イギリス】欧州研究評議会:スイス拠点の資金獲得者には他のホスト機関を探すように通達

 
2022年1月11日、Science Business は 欧州研究評議会(ERC)がホライズン・ヨーロッパの第1回目の資金提供が予定されている若手研究者への6億1,900万ユーロを支給する中、スイスの対象者である28人は、他から資金調達を行う必要があることを報じた。また、英国拠点の対象研究者は参加国の交渉が失敗すれば、同じようなことが起こると警告されたことを伝えた。

 
スイスおよび英国を拠点としているホライズン・ヨーロッパの資金提供の対象となった若手研究者は、研究のため他の国に移動する可能性が出てきた。EU の研究プログラムであるホライズン・ヨーロッパの第1回目の資金提供は、EU もしくはホライズン・ヨーロッパの関連国内で研究が行われる限りあらゆる国籍の研究者が参加可能である。しかし、プログラムが開始して1年経過した今、ホライズン・ヨーロッパはスイス及び、英国の政治闘争に巻き込まれ、どの国が確定した「関連国」かについてまだ不透明な部分が残っている。

 
スイスと EU の、EU の研究プログラムへの参加に対する合意が成立していないために、スイスの研究機関で研究を行うことを選択した28人の採択研究者は、ホライズン・ヨーロッパに参加している諸国のうちいずれかの国を拠点にする新しいホスト機関を探さなければいけなくなるだろう。

 
つまり現在スイスは関連国とみなされておらず、スイスの研究機関は ERC の資金を受けることができなくなった。ERC の公募は交渉が打ち切られる前に締め切られた為、スイスを拠点として考えていた研究者に対して、他の新しい研究機関を探すように例外な措置が取られた。

 
英国を含むホライズン・ヨーロッパの参加を交渉している国の研究者は、まだ資金を手にしていない。ERC は資金提供をする予定であっても、助成金の契約締結までにその国との提携が合意に達していない場合、関連国の候補者と同等に扱われないとしている。

 
英国とスイスは長期に渡り ERC の受益国であり、研究者が毎年、新しい助成金を始めるため何百ものプロジェクトを申請している。今年はその数が僅かに減少し、英国を拠点としている研究者の申請は、昨年370件に対して今年は359件であった。今回46人の研究者が助成金の対象となっている。

 
地理的なバランスの悪さ

 
若手への助成金の平均は150万ユーロで、若手の研究者がチーム構成し、独自の基礎研究プロジェクトを行うことを可能にする。

 
資金提供対象者の43%が女性で、フランスの地震予知研究、イスラエルのムチン産生性杯細胞の機能不全のメカニズム研究、イタリアの地球の水の起源を解明するダイヤモンドの研究などが含まれている。

 
今回、4000人以上の応募から9.8%が資金提供の対象となった。前回の研究プログラムであったホライズン2020の最後の応募では13%であったことを考えると、競争は激しかったようである。

 
今回の応募では西ヨーロッパを拠点としている研究者が資金提供の最大の勝者となった。ドイツの大学や研究センターは ERC の資金提供をする397件のうち72件を占めており、第2位のフランスは52件であった。英国の研究機関は昨年の62件から減少し46件となり、3位であった。

 
東ヨーロッパ・中央ヨーロッパに対しては、極めて少ない資金配分となり、依然として卓越した研究成果に関して地域バランスが悪いことが示されている。

 
ポーランドでは8件、チェコ共和国では4件、スロベニアおよびギリシャからそれぞれ1件ずつが採択され、非 EU 圏でからは2名の研究者がトルコで行う研究で資金提供の対象となっている。このほか、アメリカの研究者13名が EU に移り、研究を開始することになっている。

 


Science Business: ERC grant winners based in Switzerland are told to find host institution in another country


地域 西欧
イギリス
取組レベル 国際機関レベルの取組
研究支援 研究助成・ファンディング