【ニュース・イギリス】大学入試での背景要因データの活用

 
2018年7月10日、Fair Education Alliance (FEA、:英国における教育の不公平撲滅の活動をしている監視団体)は、高等教育機関、特に優秀大学の入試での学生の背景要因データ利用の効率性改善に関して、行動を呼び掛ける報告書を発表した。(:記事には明示されていないが、背景要因データの活用が一種のアファーマティブアクションであると考えると本記事を理解しやすい)
 
この報告書はエクセター大学の研究に基づいており、FEAのSam Butters会長は、「我々は優秀大学への学生の参加幅を広げる変化をもたらしたい。我々は、両親の所得や通った学校の質などの無数の背景要因が、試験成績や高等教育への進学可能性を含めた、若者の教育的成果に影響することを知っている。背景要因を加味した入試は、この課題を克服し、恵まれない若者が直面する余計な障壁を認識する一つの方法だが、この方法が効率的に用いられるためは多少の修正を必要とする。」と述べている。
 
この報告書で明らかになったことには、以下のものが含まれる:

  • 多くの大学が、入試の課程で「背景要因データを加味すること」を通じて、入試手続きで新しい取り組みを行っている。そういった手続きでは、志願者の学習成績とその成績が得られた状況を照合し、志願者が高等教育において成功する可能性を評価している。
  • 入試での背景要因データの利用はここ5年間でより受け入れられてきており、この取り組みは広い範囲で拡散している。
  • 広く受け入れられているとは言え、背景要因データを用いた入試は高等教育機関の間で極めてたくさんの方法で利用されており、正確にはどういった方法が取られているのかがしばしば志願者にとって不透明になっている。
  • 現在、英国全土でのデータの不均衡や、データ不足といった問題を含め、「恵まれない」ということがどう定義されるかを明らかにするため、各機関で幅広い取り組みが行われている。
  • 最も重要なこととして、様々な背景要因データのソースや手法により、能力のある志願者や、志願者に助言をする者にとって、どこで、そしてどうやって志願者の見込みを伸ばせるかの見極めが困難になってきており、また、非伝統的な出自(注:恵まれない層)からより多くの志願者が出るよう奨励することの利益が失われている。

 
明らかになったこれらのことについて、FEAは次の事項を含むいくつかの勧告を提示している。

  • 背景要因データの取り組みに対する公的な積極姿勢と学生局(OfS:Office for Students)の支援
  • 関連するデータへの各高等教育機関のアクセス改善
  • 関連するデータの利用方法に関する各機関の説明責任
  • 志願者への透明性の改善
  • 原則や専門用語の使用の一貫性向上
  • 背景要因が学生の成果に及ぼす影響を評価する上での決まりごとの共有

 
FEA:Developing teachers and leaders with Ambition Institute

 
BBCでもこのことが取り上げられ、多くの大学が恵まれない志願者に対して手を差し伸べているが、このやり方がどう運用されているかは開示されていないと同報告が警鐘を鳴らしている、として紹介された。BBCによれば、ラッセルグループ*の大学は全てこうした方法を採用している。また、トップ校は社会的な意味で排他性があり、民族的マイノリティから合格する志願者が少なすぎるという非難を浴びているが、一方で、自分よりも成績の悪い恵まれない志願者に蹴落とされる可能性がある個々の志願者にとっては不公平となるということについて監視される立場にもあるとしてBBCでは取り上げられている。
 
また、BBCは、学生局(OfS:Office for Students)のChris Millward公平アクセス・学生参加担当部長が、政府、学生や世間の期待に応じるならば、背景要因データの活用は我々の戦略の中心となるし、志願者の出自を考慮するのであれば、Aレベルの成績を取っていることが学生の能力の強固な尺度になるだろうと述べたとしている。
 
上位校における、大学進学者の少ない地域からの入学者数の割合の一例(BBC調べ):

  • ケンブリッジ大学 3%
  • ブリストル大学 3.7%
  • オックスフォード大学 4.6%
  • エクセター大学 5.3%

 
*ラッセルグループは、英国国内で最高水準の研究レベルを持つ24大学で構成される団体。
 
BBC:University entry ‘should be background, not just exams’

地域 西欧
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組
人材育成 入試・学生募集、学生の多様性
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