【ニュース・イギリス】大学入学方法に関する検討が進行中

 
英国大学協会(Universities UK:UUK)は、2019年7月22日に「公正な入試の再検討」を公表した。これは、大学進学課程の再検討によって、大学進学課程の運営が公正で透明性があり、学生の最善の利益になるよう実施されていることが保証されるであろう。その内容は、

  • 大学入学制度がどのように機能しているか、大学進学課程と関連する主な課題を突き止め、*無条件許可(unconditional offer)や*社会的背景を考慮した許可(contextual offer)などを含む入学許可を出す方法の証拠を集める。
  • 2004年に出された、高等教育での公平な入学許可に関する「*Schwartz principles」が現在も有効なのかどうかの評価を行う。
  • 合格者選抜に関する最も良い方法を推奨し、大学入学制度が進学希望者の最善の利益になるよう機能し、急速に変化する18歳以降の教育環境の目的と合致することを保証する変更案を提案する。

「公正な入学許可の再検討」の諮問グループは、*大学入試サービス(Universities and Colleges Admissions Service :UCAS)、学校、学生、大学の代表者で構成される。グループの勧告は、2020年春までに、最良の入学許可方法として英国中に公表される。

 
UUKのAlistair Jarvis会長は、以下のように述べた。

 
「この再検討は、大学入学許可に関する証拠と最も良い方法を確立し、大学入学許可に関する議論を広く知らしめ、異なるタイプの入学許可制度が学生の最善の利益になるのか、全進学希望者に対して公正なのかを決める。大学は、入学許可について独自の決定をし続けるが、この再検討は入学許可制度に関する透明性、信頼性、世間からの理解をさらなるレベルに引き上げる。」
 
 
また、UCASのClare Marchant会長は、以下のように述べた。

 
「我々は、UUKによる大学入学許可制度に関する再検討を歓迎し、意味のある勧告を作成するプロジェクト諮問グループと働くのを楽しみにしている。入学許可における学生の最善の利益は、大学とカレッジに対する最高の配慮とならなければならない。」

  
Queen Mary’s Collegeの学長補佐で、UCASの中等教育諮問グループ議長であるBeth Linklaterは以下のように述べた。

 
「大学の学部を選ぶことは、多くの若者が下す非常に大きな決断のひとつである。この再検討は、全ての進学希望者にとって正しい大学を見つけられるよう、大学入学許可制度をいかに修正すべきかを示す良い機会になる。」

 
【英国における大学入学制度について】

イングランドでは、大学進学を目指す学生は義務教育修了後に2年間のSixth Form(シックス・フォーム)課程に進学する。大学進学の最低必須条件はGCSE(義務教育を修了するときに受験する全国統一試験)、GCE Aレベル(通称Aレベル)の結果とUCASへの登録である。

 
出願から合否決定までの諸手続きは、学生ではなくUCASが行う。したがって、学生は各大学の入試試験を受験するのではなく、共通試験であるGCE Aレベルを受験する。最高5つの異なる学部、大学、もしくは異なる5つの学部で同じ大学に志願することが出来る。

 
受験科目は最低3科目である。希望進学校の基準に達し、大学からオファー(入学許可)がくれば入学が可能となる。Aレベル結果は通常8月中旬に発表され、発表は学校で、もしくはUCASのWebサイトからであれば成績とともに大学からの入学許可が出ているかも同時にわかる。

 
*無条件許可(unconditional offer):
英国の大学入学許可システムにおいて、大学側は出願者の所属する学校があらかじめ提出する「予測成績」に基づき、試験の前に合否判定を行う。この時に、志望する大学が指定する科目において基準に達している、面接を受けるなどの条件をクリアすれば合格を認められるのが「条件付き許可(conditional offer)」であるが、「予測成績」のみによって合格が決まるのが「無条件許可(unconditional offer)」である。本来は、

 
1) 大学合格レベルに達している成人学生 2) 一芸に秀でた学生 3) 受験の過度のプレッシャーを和らげる必要のあるメンタルに問題を抱えた学生、を想定したシステムであったが、大学が入学定員を埋めるために乱発しているとの指摘もあり、また無条件許可によって入学した学生が、入学後に学力不足により大学の授業についていけないなどの問題も起きていることから、この方法を用いない大学も出てきている。

 
*学生の経済状況など特別な事情を考慮した許可(contextual offer):
学生の経済状況、出身校、家庭環境等を考慮し、成績は合格に足りないが、将来的に高等教育において学力を伸ばす可能性があると考えられる学生に対して出される入学許可。米国の積極的格差是正措置(Affirmative Action)は人種的にマイノリティ的な立場にある学生を積極的に受け入れるものであり、経済的事情などに配慮するContextual offerとはその点で異なる。

 
*Schwartz principles:
2004年に、当時ブルネル大学副学長であったSteven Schwartz氏が責任者として執筆した公正な大学入学許可に関する提言。提言には、公正な入学許可に必要な要素として、1) 透明性の確保 2) 高等教育機関のプログラムを完了できる学生を、高等教育機関が選択できるようなシステムであること 3) 学生の成果と可能性によって合否が判断されること 4) 信頼性が高く有効な評価方法が用いられること 5) 入学希望者の障壁を最小限に抑えるよう努めること 6) 適切な組織構造に支えられたプロセスが存在すること、が盛り込まれている。

 
*大学入試機関(Universities and Colleges Admissions Service :UCAS):
英国の大学入試は、受験生が日本のように各大学に願書を提出するのではなく、一度UCASに願書を提出することになる。UCASは受験生から提出された願書を処理し、各大学に送付する一連のシステムを運営する機関。

 

Universities UK: Major review of university admissions underway

地域 西欧
イギリス
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
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