【ニュース・イギリス】大学の研究評価と公的資金配分に関する独立評価報告書を公表

2016年7月28日、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS:Department for Business, Energy&Industrial Strategy)は、Stern卿による大学の研究評価と公的資金配分に関する評価報告書を公表した。

 

ブリティッシュ・アカデミーの会長であるNicholas Stern卿は政府の委託により、研究費のより効果的な配分と各機関の事務的な負担軽減の観点から、研究評価制度(REF: Research Excellence Framework)の評価を行った。

 

REFは5~6年ごとに実施され、英国の各大学にトップクラスの研究論文を提出させ、その研究インパクトを評価するもので、結果は各大学の研究費配分に反映される。

 

今回の研究評価制度に関する評価報告書 “Building on Success and Learning from Experience”における主な指摘:

 

•各機関で研究活動をしている全ての研究者を対象とする。ただし、各自が評価対象として提出する論文等の「アウトプット」の数には柔軟性を持たせる。現在は、機関内で対象とする研究者を選出しているが、全員を対象とし、ユニット単位で評価することで研究者個人に対する評価のプレッシャーが和らぎ、研究者が新分野の研究やより長期的な研究に取り組めるようになる。

 

•研究“インパクト”の概念をより広く深くし、社会との関わりや文化、教育への影響も含めるとともに、研究分野の選択とキャリアにひずみが生じないようにする。

 

•学際分野における研究活動とその評価がより一体的になされるよう、新たに組織レベルでの評価を導入する。 

 

また、報告書は、REFは今後も研究の卓越性を支援すべきであることを強調している。

 

Jo Johnson大学・科学大臣は報告を受け、“我々の世界クラスの研究が英国に強みをもたらし、大学が質の高い教育を提供するとともに、生産性の向上や経済成長において重要な役割を果たしていることが認められた。報告をまとめたStern 卿と関係者に感謝する。”と述べた。

 

政府は今後、REFの関係機関及び高等教育助成機関とともに提案内容の詳細を検討することとしている。なお、次期のREFに関する諮問の全文は今年後半に出される予定。

 

GOV.UK:Lord Stern sets out proposals to protect and strengthen university research

 

 

報告書全文:Building on Success and Learning from Experience

 

GOV.UK:Research Excellence Framework review

 

 

他機関の反応

 

ラッセルグループ(Russell Group)

 

ラッセルグループのWendy Piatt理事長は次のように述べた。“ REFは英国の研究の質を向上させ、研究・イノベーションにおける英国の卓越性に係る国際的な評価を維持する上で重要な役割を果たしてきた。今回の報告で、職員の負担を増やすような全体的な見直しが打ち出されなかったことにほっとしている。また、確立されたピアレビュー制度を維持すべきという助言を歓迎する。

 

提案の中にある研究職員全てを提出対象とすることについては、学内選出の際のリスクやREFの負担は減るであろうが、作業量の増加に繋がるようなことは避けなければならない。

 

また、機関レベルでの評価についての提案は、ラッセルグループの大学が学内を横断して行われる優れた研究を示すとともに、そこで行う学際研究の重要性を認めることに繋がるものであり、これを歓迎する。

 

REFは、英国のデュアル・サポートシステムの基礎であり、政府によって変更が加えられる場合、各機関が必要な調整をする期間も与えられる必要がある。今回の評価、高等教育・研究法案の改正、EU離脱の国民投票結果など、大学にとっては重大な変化の時期である。これら全ての影響が現れるまでには膨大な時間がかかることが予想されるが、それらが実施され、高等教育研究の構造に埋め込まれる前に、きちんと協議・検討することが求められる。”

 

Russell Group:Stern Report on the Research Excellence Framework

 

イングランド高等教育財政会議(HEFCE:Higher Education Funding Council for England)

 

Stern卿の研究評価制度 (REF) に関する独立評価は、研究の質の評価において、また、説明責任を果たすとともに判断基準を提供し、国や機関の戦略決定を支えるものとして、REFの重要性を確認するものであり、これを歓迎する。

 

この評価は明確な指針と今後の方向性を示しているが、REFの実質的な改革は不確実さと作業負担を増すという意見はもっともである。

 

英国政府と、高等教育助成金配分機関を含む関係機関はこの評価報告を踏まえて今後の対応を示すことになる。それぞれの大臣の見解を受け、2016年末までのなるべく早期に協議を開始する予定である。

 

Higher Education Funding Council for England:UK higher education funding bodies’ response to the independent review of the REF

地域 西欧
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
研究支援 研究助成・ファンディング、研究評価