【ニュース・イギリス】ジョンソン大学・科学担当閣外相が今後の方針(教育評価制度(TEF)の創設等)を発表

2015年7月1日、ジョンソン大学・科学担当閣外相が、個別の政策と今後の方針について、英国大学協会(UUK)で演説を行った。
閣外相はこれまでの政府の取組について、高等教育における持続可能な助成システムの構築や高等教育参加機会の拡大、就職率向上などを評価し、総じて英国は世界の高等教育を主導する存在であり続けていると結論づけた。その上で、今後の主要課題として以下の3点を挙げた。

1.更なる高等教育参加機会の拡大を目指し、貧困など社会的に不利な背景を持つ若年層の高等教育参加率を、2020年までに2009年の参加率の2倍にまで増やす。

2.各高等教育機関が、産業界の期待と授業料に見合った教育の質の維持・向上に鋭意努力するための動機付けとなるような教育評価制度「Teaching Excellence Framework(TEF)」を構築する。TEFの目指すところは、

・全ての学生が自発的思考を養い、卒業後に社会人としてすぐに産業界の期待に応えることができるような素晴らしい教育を受けられることを保証する。
・研究と教育に等しい権利が与えられるように、研究者と教育者が高等教育界にとって同等に重要な存在であるような土壌を形成する。
・学生が、研究についてと同様に、教育の質で高等教育機関を選ぶことができるように必要な情報を与える。
・社会的に不利な背景を持つ学生を積極的に入学させたり、そうした学生の成功(好成績取得、更なる進学、就職)を支援している高等教育機関を正当に評価する。そのために、結果にフォーカスした指標を含み、独立した外部機関によってなされる外部評価プロセスによって補われることが望ましい。しかしながら、この外部評価は、REFのような膨大な作業量を要求しない、負担の少ないものとしたい。イングランド高等教育財政会議(HEFCE)と質保証機関(QAA)が主体となり、様々なステークホルダーと協力の上、制度を構築してほしい。学位取得については、近年の第一学位(First degree)取得率の著しい上昇は、学位の水準が今まで通り保たれているのかという懸念をもたらしている。この「学位 インフレ」とも呼ぶべき状況もTEFによって是正したい。

3.これらの改革の成功と持続を確実なものとするため、教育に「投資」する学生および納税者双方の財源を最大限に生かす。2012年に授業料の上限額の大幅値上げが行われた際に入学した学生が労働市場に参入しようとしているが、彼らは自分たちの「投資」から得たものについて批判的に捉えており、最近の学生の満足度調査でも低下が見られるので、是正の必要がある。大学卒業者の平均年収の低下は懸念事項であり、何らかの対策が必要である。STEM(科学、技術、工学、数学)学生育成と産学連携の更なる強化も重要検討課題である。

これらのことを成し遂げるためには非常な困難が待ち受けているかもしれないが、高等教育機関と協力し、上記3点について正しく遂行することが、英高等教育機関の地位の維持につながると断言して演説を締めくくった。

【英国大学協会(UUK)の反応】
Dandridge会長がコメントを発表「学生の利益を第一に考えたTEFに協力していきたい」が(演説では言及されなかった)「授業料や学生支援助成についてしっかりと考慮してほしい」(URL2)

URL1: https://www.gov.uk/government/speeches/teaching-at-the-heart-of-the-system
URL2: http://www.universitiesuk.ac.uk/highereducation/Pages/HEministerSpeechResponse.aspx#.VZ-vL2fbIdU
URL3: http://www-overseas-news.jsps.go.jp/%E3%80%90%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%80%91%E9%AB%98%E7%AD%89%E6%95%99%E8%82%B2%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%A6%E8%B3%AA%E3%81%AE%E9%AB%98/

地域 西欧
イギリス
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