2019年1月7日、Onward(英国の独立系非営利シンクタンク)は、高等教育への資金配分に対する新しい政策提言の報告書を発表した。この報告書の中では、大学卒業生の学生ローンを半減させるための卒業生への新しい税制優遇や、卒業生の収入が薄弱で、納税者にとっても税金を投じる価値が低い大学の課程への資金配分を減らすことが論じられている。
報告書はNeil O’Brien国会議員、Will Tanner 氏、Guy Miscampbell氏の共同著作で、(卒業生の)長期的な収入という高等教育の成果に関するデータを新たに教育省(DfE:Department of Education)が公式に分析したものが含まれており、以下のことを明らかにしている:
- 卒業生の18%から25%は、5万ポンドに及ぶ学生ローンの返済を正当化しうるだけの生涯収入の増をもたらすことができない課程で学んでいた。
- 2015/2016学事年度において、40%の卒業生は、卒業5年後に収入の中央値が学生ローンの返済開始収入である25,000ポンドを下回る課程に入学していた。10%の学生は、卒業10年後でも収入の中央値が25,000ポンド未満であった。これは、卒業後10年を経ても学生ローンの返済をしておらず、かなりの利子がたまってしまっている学生が毎年134,000人いることになる。
- それまでの収入や、アプレンティスシップ(注:見習い制度)が持つ特典を考慮に入れると、卒業5年後の時点で、5人に1人の卒業生は、大学進学の代わりにアプレンティスシップなどの大学に行かない進路を選んでいたような場合よりも収入が低い。
- この報告書が独自に行った世論調査によると、大学に行く学生の数が十分ではないと考えているのはわずか25%であったのに対し、44%の人々が、“あまりに多くの学生が大学に入っている”と考えている。学士課程について大学の受け入れ先が多すぎると考えている人は47%に達し、大学に進んだ者が進学から受ける利益を得ているとは感じていないということを示唆している。
報告書では下記のことを勧告している:
- 学生をより高い見返りのある進路に誘導するために、課程が持つ将来の収入の見込みに応じて9,250ポンド(注:現行の上限額)の学費を課すか、または価値が低いとされる学部に対して必要な成績の下限を作ることで、卒業生の収入増との関係で低い経済的価値しかもたらさない課程へ入学をしにくくする。
- 学生が、より良質で多岐に渡る技術教育制度、特に高等レベルの技術資格やアプレンティスシップのような、多くの大学の学位よりも高い収入増をもたらすようなものを通じて資格を取得することを奨励する。
- 200万人の卒業生の学生ローン返済を半減するため、1ポンド当たり50ペンス(注:1ポンドは100ペンス)を減税する、大卒者への税制優遇措置を導入する。これは、若者の手にお金を戻しつつ、過去、現在、未来において学生ローンを返済する全ての者に適応されるため、費用の削減や将来の返済条件に関し利点がある。