【ニュース・イギリス】イングランドの教育歳出に関する年次報告書

 
 2019年9月19日、英国のシンクタンクである英財政研究所はイングランドの教育歳出に関する年次報告書を発表した。

 
 教育歳出は英国では医療についで2番目に大きな公共サービス支出であり、2018/2019学事年度ではおよそ910億ポンドで、これは国民所得
の約4.2%に相当する。教育歳出は近年大幅に上昇しており、特に1990年代後半から2000年代後半にかけて急速に増加したが、2010年以降
は減少の一途を辿っている。重要なことだが、全体的な教育歳出の流れは、教育歳出の各分野で何が起こっているかについては何も語っていない。

 
 イングランドの教育歳出に関する第二回年次報告書は1990年代初頭の就学前教育、初等教育、中等教育、継続教育および高等教育の一人当たり
の支出を算出している。生徒一人当たりに対する日々の支出を分析することで、政策決定が、長期的に学生の様々な教育課程段階において、
どのように学生が利用できる資源に影響したかを理解できる。またIFSは、2019学事年度の歳出全体の影響や、政策立案者のための長期歳出
オプションを分析した。
 
<調査結果から抜粋>
 
〇継続教育*について

  • 継続教育と6thフォーム*については、近年最大の歳出削減に直面している。2010/2011学事年度から2018/2019学事年度の間に、学生一人当たりへの歳出額は16~18の継続教育カレッジで実質12%減少し、6thフォームでは23%減少した。1990年代の大幅な削減と、2000年代、他の教育段階と比較すると低成長率だったため、継続教育と6thフォームは予算の増額幅が少なく、継続教育の16~18歳に対する支出額は、30年前の1989/1990学事年度と比較すると約13%しか増えていない。
  • 一人当たりの政府支出は6thフォームカレッジでは4,800ポンド、6thフォーム学校では4,900ポンド、継続教育(カレッジ)では5,900ポンドであった。この額の違いは、職業訓練や複雑なコース、および貧困地区の学生に多く出資する資金提供システムに原因がある。

 
〇高等教育について

  • 大学は現在、フルタイムの学部学生一人当たりに対し、27,500ポンドを全課程(通常は3年間)の教育費に充てている。これは、2012年以降5%減少しているものの、1990年代半ばの一番低かった頃よりは約50%増えている。
  • 学生一人当たりへの歳出は、1990年代初期と今日では似ているが、学部生を教育するための総費用は、この期間で実質的に2倍と
    なった。これは、学生数がほぼ倍増したことに起因している。資金の性質は大きく変化しており、現在は主に教育助成金ではなく
    授業料から構成されている。
  • 現在のシステムにかかる総費用は、高等教育に入学する一学年当たり約170億ポンドである。費用の半分以上は、特に高所得者層の卒業生からの寄付金(約90億ポンド)によって賄われていると予想される。政府の長期的な歳出は約80億ポンドで、未返済の学生ローンからの返済約74億ポンド、前払い交付金が約7億ポンドと予想される。
  • Augar Review*については、学費を7,500ポンドに削減し、生活費助成金を再導入し、学生ローンの返済条件を変更するよう提案した。これにより、政策立案者は、異なる学科への支出をより細かく制御できるようになるが、現時点の資金は授業料が大半を占めており、
    学生数の制御も不十分であるため、現時点ではほとんど制御できない。

 


*継 続 教 育: 中等学校卒業後、特定の職業に就くことを目的にする場合に学生が在籍する学習課程。
 
*6thフォーム:中等学校卒業後、大学進学を希望する場合に学生が在籍する2年間の学習課程。
 
*Augar Review:2017年の保守党大会において、当時のメイ首相が公約として発表した「大学生が負う高額の負債や学費を調査する」こと
        を目的に、Philip Augar氏が責任者として作成した報告書。


<出典> Institute For Fiscal Studies: 2019 annual report on education spending in England

地域 西欧
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組
行政機関、組織の運営 予算・財政
大学・研究機関の基本的役割 教育
統計、データ 統計・データ