【ニュース・アメリカ】STEM博士号保有外国人、ベンチャー企業への就職率が低いのは米国のビザ政策が原因(8月15日)

コーネル大学(Cornell University、ニューヨーク州)とカリフォルニア大学サンディエゴ校(University of California San Diego)の研究者らは、米国のビザ政策が原因で、米国大学で博士号を取得した外国人がベンチャー企業よりも大手企業への就職を好んでおり、ベンチャー企業が優秀な人材を獲得する機会が限定されていることで、イノベーション及び経済成長への貢献が阻害されているとの研究結果をまとめた論文「STEM博士号保有外国人が米国技術ベンチャー企業に就職する確率が低い理由(Why foreign STEM PhDs are unlikely to work forUS technology startups)」を発表した。
 
本研究では、米国でSTEM分野博士号を取得した外国人2,324人のキャリア選択を追跡した結果、就労ビザ取得にあたってスポンサーを必要とする博士号保有者が、卒業後最初の就職先にベンチャー企業を選択する確率は、米国人博士号保有者の約半分であることが判明した。
 
この格差に関し、本論文執筆者は、博士号取得者の「H-1B」就労ビザスポンサーとなるにあたり、ベンチャー企業と大手企業との間での違いが原因となるもので、ベンチャー企業がスポンサーになる可能性が低い、もしくは、ベンチャー企業は事業失敗のリスクが高いためにビザ取得に悪影響を及ぼす可能性があると外国人博士号保有者が考えるためと分析されている。
 
また、実際に、就労ビザでの滞在後に永住権を取得した外国人博士号保有者の転職先は、別の大手企業よりもベンチャー企業である確率が高い他、大学卒業時に既に永住権を取得している場合は、米国人同様に、ベンチャー企業に就職する確率が高いことから、高額給与の優先などといった他の要因によるものではないと考えられている。
 
さらに、「H-1B」ビザスポンサーとなるために要するコストは5,000~1万ドルで、手続きには数カ月を要することに加え、一定金額以上の給与を支給するよう義務付けられていることから、ベンチャー企業にとっては不利であることも指摘している。
 
これらの背景を踏まえ、本論文は、永住権取得のための規制を緩和することにより、ベンチャー企業によるSTEM博士号保有者の採用が容易になるとしながら、不正予防のための規制・監査システムが必要と主張している。
 
なお、本研究で追跡サンプルとなったSTEM博士号保有外国人の24%は、オプショナル・プラクティカルトレーニング(OPT)中にベンチャー企業で働いていたのに対し、OPT中に大手企業で働いていた者は全体の12%に留まることも判明した。

 
本論文は、こちらからダウンロード可能。
 

The PIE News: US H1-B policies put startups at a disadvantage, study finds

地域 北米
アメリカ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
統計、データ 統計・データ