【ニュース・アメリカ】NSF OIG、研究助成事業の審査委員会の開催様式(オンライン・対面)を比較

 
米国科学財団(NSF) 監察総監室(OIG) は、新型コロナウイルス感染症パンデミック収束後の事業運営方法を検討する中で、研究助成事業の審査委員会をオンラインで開催する方が、対面式開催よりもコストを抑え、より多様且つ包括的な選考を行えるとの調査結果をまとめた報告書を発表した。具体的に、対面式会議をオンライン会議に移行した2020年4月~2021年3月と、対面式会議を行った2019年4月~2020年3月とを比較すると、審査した申請件数は5%減、採択した件数は2%減であったが、同審査委員会開催に伴う審査委員の旅費及び謝金は約1,350万ドル節約され、67.5%減になった。OIG は、同報告書草稿を2021年12月8日に NSF 幹部に提示し、NSF は、2022年1月19日に OIG にフィードバックを提供した。本調査の主な結果は以下の通り。

  • 2020年度には、助成のための審査プロセスに科学工学コミュニティから約2万9,000人が関与して、申請書4万2,000件超を審査し、約1万2,200件を採択。また、2019年度に行われた審査では、88%の申請書の審査において NSF 外部の審査委員が関与。
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  • 審査委員は任意参加ではあるものの、審査に要した時間への手当及び旅費をNSFが支給。オンライン会議に参加した委員には1日当たり200ドルを支給したのに対し、対面式会議では、会議開催場所に応じて1日280~480ドルを支給。1日当たりの支給額は審査する申請件数に関わらず同額。対面式会議においては、それに加えて旅費を支給。
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  • NSF は、研究助成事業の審査委員会の経費として、パンデミック前の2019年4月~2020年3月には約2,000万ドルを支出したのに対し、オンライン会議切り替え後の2020年4月~2021年3月は、旅費・謝金支出が削減されたことから支出額合計は650万ドル。
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  • ① 小さい子どもや高齢者の世話をする研究者、② 障害があって会議参加のための移動が困難な研究者や、障害支援のテクノロジー設備が自宅にある研究者、③ 大学講義指導などの理由で、会議参加のために2~3日不在にすることが困難な研究者、などは、審査委員会のオンライン化によって恩恵を受ける可能性あり。但し、オンライン開催が参加者拡大を支援するか否かを特定する上で十分な統計データをNSFは保有せず。
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  • OIG は、NSF 統合活動局 責任者に対し、① NSF研究助成事業の審査委員会招集に要する経費の記録を残す手段の開発、② 審査委員の人口統計学的データを改善するソリューションの特定・実施、③ 今後の審査委員会開催方法に関する決定事項を連絡するために、旅費・謝金などの複数の事項に関して調査、の3点を提案。NSF はこれらの提案に同意。

 
1月20日


National Science Foundation: OIG Report No. 22-6-003, Remote Versus In-Person Merit Review Panels


地域 北米
アメリカ
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