【ニュース・アメリカ】NIH助成受給臨床試験件数、2005年以降は減少傾向

 
ジョンズホプキンス大学のブルーンバーグ公衆衛生学部(Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health)疫学科教授のカーティス・マイナート氏(Curtis Meinert)らは、国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)による助成に関する研究結果をまとめた論文を、学術誌「クリニカル・トライアル(Clinical Trials)」2018年2月号で発表した。
 
本研究結果は、NIHによる臨床試験に対する助成件数が2005年以降減少しており、臨床試験の規模も縮小し、2005年以降に実施された臨床試験で参加者500人以上が登録したものは、全体の10%のみであることを明らかにしている。
 
具体的に、2005年~2015年の間にデータベース「ClinicalTrials.gov」に登録されたNIH助成受給臨床試験を分析した結果、上記期間中の総数は1万2,987件であったが、年間助成受給件数は1,580件から930件に減少しており、減少率は40%超であることが判明した。マイナート氏は、助成受給件数の減少は、大規模で質の高い試験の件数が増加したためであることを期待したというが、実際には、初期開発段階にある最小規模のフェーズ1試験の年間件数は僅かに増加しているものの、中期開発段階のフェーズ2及び3と後期開発段階のフェーズ4試験は、継続して減少しているという。
 
臨床試験では、医薬品候補やその他の介入の有効性及び安全性に関する証拠を提示するフェーズ3試験が特に重要となるが、NIH助成を受給するフェーズ3試験件数の減少が最も顕著で、2005年の受給件数は230件であったのに対し、2015年は62件のみであった。また、10年間での臨床試験の平均サンプル数は64人(治療グループ32人、対照グループ32人)と非常に小規模であることも明らかにされ、マイナート氏は深刻な問題とコメントしている。
 
なお、上記10年間でのNIH助成受給臨床試験数は、NIH傘下の各研究機関によって大きく異なり、例えば、国立がん研究所(National Cancer Institute)は、10年間で合計4,987件の臨床試験に助成を支給し、他の研究機関を大きく上回っているが、NIH全体では助成件数減少傾向が続いている。
 
マイナート氏は、助成件数減少の原因としてNIH予算を挙げており、2015年度のNIH予算は300億ドルで、2005年の290億ドルと数字の上では大差はないが、インフレを考慮すると約20%減になることを指摘した。
 
2018年2月13日
 
Newswise:NIH Funding Fewer Clinical Trials, Study Suggests

 

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