【ニュース・アメリカ】NIH、TCGAによる詳細ゲノム解析プロジェクト「パンキャンサー・アトラス」を完了

 
国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)は2018年4月5日、NIHからの助成を受給する研究者らが、33種類のがんの腫瘍1万件以上の分子に関するデータセット及び臨床情報を使用した詳細ゲノム解析プロジェクト「パンキャンサー・アトラス(PanCancer Atlas)」を完了したことを明らかにした。
 
これは、複数の研究機関による協力の下でNIH傘下の国立ヒトゲノム研究所(National Human Genome Research Institute:NHGRI)及び国立がん研究所(National Cancer Institute:NCI)が支援する「がんゲノムアトラス(The Cancer Genome Atlas:TCGA)」によって行われたもので、総額3億ドル超の資金を投入し、全米の研究機関二十数組織に所属する研究者約150人が10年以上をかけて取り組んだ研究結果は、論文27本にまとめられている。
 
本プロジェクトは、①起始細胞、②発がん過程、③発がん経路、の3つの主要カテゴリーに分類されており、それぞれのテーマに関する主要な結果をまとめたサマリーペーパーと、各カテゴリー内の個々のテーマに関して掘り下げた研究結果をまとめた複数の付随論文が発表されている。
 
①に関するサマリーペーパーは、分子クラスタリングという技法による分析結果をまとめたもので、起始細胞に基づく腫瘍の種類のクラスタは、起始細胞の腫瘍組織ががんの特徴に及ぼす影響の理解に役立ち、様々な種類のがんに対するより具体的な治療に繋がる可能性があるとした。
 
また、②に関するサマリーペーパーは、がんの増殖・進行に繋がる過程に関する発見事項の概要を提示したもので、

  1. 生殖系列細胞(先天的)及び体細胞(後天的)の突然変異、
  2. 腫瘍の原因となるゲノム及びエピゲノムによる遺伝子・タンパク質発現に対する影響、
  3. 腫瘍と免疫細胞の相互作用、

の3つの重要な発がん過程を特定している。
 
一方、③に関するサマリーペーパーは、細胞周期の進行、細胞死、及び、細胞増殖などに影響を与えるシグナル経路におけるゲノム変化に関する研究の詳細を提示したもので、様々ながんにおけるこれらの過程の類似点と相違点を明らかにしている。
 
なお、TCGAによる取り組みの集大成として、2018年9月27日~29日にシンポジウム「TCGAの遺産 ~がんにおける複数のオミクス研究~(TCGA Legacy: Multi-Omic Studies in Cancer)」がワシントンDCで開催される。
 
2018年4月5日
 
National Institutes of Health:NIH completes in-depth genomic analysis of 33 cancer types

 

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