【ニュース・アメリカ】NIH、飲酒の健康への影響に関する研究の資金調達支援をNIH職員がアルコール産業に不適切に要請した疑いを調査

 
国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)は、研究経費1億ドルの適度な飲酒による健康への好影響に関する10年研究に関し、NIH職員がアルコール産業に対して資金支援を不適切に要請した疑いに対する調査を開始した。また、NIHは、現在はハーバード大学(Harvard University、マサチューセッツ州)の研究者が主導する、同研究の科学的価値に関しても検証するという。
 
これは、NIH傘下の国立アルコール乱用・依存症研究所(National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism:NIAAA)が2018年1月に立ち上げた研究で、複数の国に在住する50歳以上の被験者約7,800人を対象に、全くアルコールを摂取しないグループと、被験者が選んだアルコール飲料を6年間に亘って毎日摂取するグループを比較するというものである。
 
同研究に対しては、NIH財団(Foundation for the NIH:FNIH)を通して、アンハイザー・ブッシュ・インベブ社(Anheuser Busch InBev)及びペルノ・リカール社(Pernod Ricard)を含むアルコール飲料製造企業が研究資金を提供していることが、2018年3月17日付のニューヨークタイムズ誌(The New York Times)で報道されており、NIHは、同報道を受けて今回の調査実施を決定した。
 
同紙の報道によると、NIAAA職員2人がアルコール企業幹部と2013年後半及び2014年前半に会合し、同研究への支援を強く要請したといい、支援がなければ恐らく研究は行われないと発言したとされているが、これは、企業に対してNIHへの寄付をNIH職員が要請することを禁じた方針に違反する可能性があるという。
 
さらに同紙は、提案された研究内容に対する科学的評価においても、ハーバード大学医学大学院(Harvard Medical School、マサチューセッツ州)及びべス・イスラエル助祭医療センター(Beth Israel Deaconess Medical Center、マサチューセッツ州)に所属する循環器疾患研究者のケネス・ムカマル氏(Kenneth Mukamal)がもう1人の研究者よりも不当に優遇され、後に主任研究員に選ばれた可能性があることを指摘している。
 
NIHディレクターのフランシス・コリンズ氏(Francis Collins)は、2018年3月20日に発表した声明において、同研究の科学的目標には賛同し、標準的なピアレビューによって主任研究者が選出されたと断言した一方で、ニューヨークタイムズ紙で報道された情報に関する懸念も表明しており、また、本件は、FNIHがNIH職員及び企業スポンサーとの間で研究資金調達に関して接触することを制限した覚書にNIHが2016年9月に署名する以前に起こった可能性があるとコメントしている。
 
2018年3月21日
 
Science:NIH to investigate officials’ role in industry funding of study on moderate drinking
 

地域 北米
アメリカ
取組レベル 政府レベルでの取組
行政機関、組織の運営 政策・経営・行動計画・評価
大学・研究機関の基本的役割 研究
レポート 海外センター