国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)傘下の国立薬物乱用研究所(National Institute on Drug Abuse:NIDA)で2010年から科学ディレクターを務めたアントネロ・ボンチ(Antonello Bonci)氏は、2019年8月に辞任したが、同氏の辞任前に、研修生を性的対象とする行動を取ったり、別の研修生と親密な関係にあったりした疑いが内部から告発されていたことが判明した。
NIHは、ボンチ氏の辞任に関して言及することはできないとしているが、同氏の離職に対してNIDAから公式説明はなく、NIDAの透明性の欠如に困惑しているという。
NIDAディレクターのノラ・ボルカウ(Nora Volkow)氏は、NIDA内部研究プログラム(intramural research program)職員宛に2018年11月9日にEメールを送付し、ボンチ氏はリーダーシップスキルをブラッシュアップするために最高1年間の長期有給休暇を取ると通知していた。
その後、ボンチ氏が、長期有給休暇中に同氏と親密な関係にあったとされる研修生に対してプロジェクトと研究資金の指示を与えていた疑いがあるとして、2019年3月にNIDA上級科学者がNIHに告発した。
また、ボンチ氏が性的対象と見ていたとされる別の研修生は、NIDA内部研究プログラムの上級職員から、研修生自身の今後のキャリアのことを考えるのであればNIHへの報告を控えた方がよいと助言されていた疑いもあるという。
NIHは、上級科学者からの告発を受けて外部機関に調査を要請しており、調査完了後の2019年8月21日に、ボルカウ氏からNIDA職員に対し、ボンチ氏がNIDA科学ディレクターを辞任して、依存症グローバル研究所(Global Institutes on Addictions、フロリダ州)所長に就任したと通知していた。
また、ボルカウ氏は、同9月4日にNIDA職員とのタウンホールミーティングを開催したが、ボンチ氏離職の詳細は提供できないと発言している。なお、NIDAによる対応に関しては、ボンチ氏を離職させたとしてその功績を認める意見と、性的不適切行為の事実を隠蔽したとして非難する意見が両方聞かれる。
Science: Science chief at NIH drug abuse institute resigned after sexual misconduct probe