国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)傘下の国立がん研究所(National Cancer Institute:NCI)は、2016年に当時のジョー・バイデン(Joe Biden)副大統領の主導により立ち上げられた「がんムーンショット(Cancer Moonshot)」プログラムの下での助成受給研究の論文に関し、直ちに広く一般によるアクセスを可能とすることを義務付ける新規則草案「NCIがんムーンショット一般アクセス・データ共有方針(NCI Cancer Moonshot℠ Public Access and Data Sharing Policy)」を発表した。
欧州では、研究結果のオープンアクセス化が進む一方で、米国では、NIH助成受給研究も、論文発表後1年間は、学術誌定期購読者のみがアクセスを保有するという方針が継続されている。
NCIが発表した新規則案では、「がんムーンショット」助成受給研究論文執筆者は、完全オープンアクセス学術誌、もしくは、無料アクセス提供論文と購読料を必要とする論文の両方を掲載するハイブリッド型学術誌のいずれかで論文発表が可能としている。
また、受給を申請する助成予算に、オープンアクセス学術誌に投稿する際に執筆者が支払う手数料(通常、論文1本当たり2,000~3,000ドル)を含めることができるという。
「がんムーンショット」助成を受給して大規模研究プログラム「ヒト組織アトラスネットワーク(Human Tissue Atlas Network:HTAN)」を共同で主導するオレゴン健康科学大学(Oregon Health & Science University)のジョー・グレイ(Joe Gray)氏は、自身も共同研究者らも新規則案は理に適ったものと評価しており、同プロジェクトによるインパクトを最大化するためにオープンアクセス論文発表を強く支持するとコメントしている。
NCIは、「がんムーンショット」の下でのオープンアクセス要件をパイロットプログラムとして捉え、同プログラムの成否の如何を見て、他のプログラムにも同様の要件を拡大するか否かを検討するとしている。
なお、本規則草案は、こちらから閲覧可能。
Science: In departure for NIH, Cancer Moonshot requires grantees to make papers immediately free