トランプ政権は2017年5月23日、2018年度大統領予算案を発表した。本予算は、教育に関する決定権を、本来あるべき親・教育者・州政府リーダーの手に戻すというトランプ大統領のコミットメントを反映したものとしており、教育省(Department of Education)のベッツィー・デボス(Betsy DeVos)長官は、障害者教育法(Individuals with Disabilities Education Act:IDEA)や歴史的黒人大学(Historically Black Colleges and Universities:HBCU)を含む重要なプログラムの予算を確保しながら、学生・生徒の支援を優先した予算を作成したとコメントしている。
2018年度予算案の主要イニシアティブには、
① | 学校選択を通した新たな教育選択肢の作成 |
② | 貧困層・障害者・英語学習者などを支援するプログラムへの予算レベルを維持 |
③ | 高等教育予算の簡素化 |
④ | 教育イノベーションに関する証拠の構築 |
⑤ | 既存プログラムの合理化 |
などが含まれている。但し、学資援助プログラム及び大学研究に対する予算が大幅に削減され、連邦学資ローンプログラムが大きく改革されることから、高等教育団体及び政策アナリストは、これらの予算削減によって大学はさらに手の届きにくいものとなり、医療・技術分野における新たな科学者輩出やイノベーションを妨げることになると警告している。
なお、2018年度教育省大統領予算案の概要は、以下よりダウンロード可能。
Department of Education:Fiscal Year 2018 Budget Summary and Background Information[PDF:429.55KB]
2017年5月23日
Department of Education:Education Budget Prioritizes Students, Empowers Parents, Saves Taxpayer Dollars
高等教育に関連する主要な予算内容は以下の通り:
- 現在複数存在する、収入に基づく学資ローン返済プログラムが1つに集約され、学士課程でのローン利用者については、ローン返済免除までの期間が20年から15年に短縮される一方で、月々の返済額上限は、自由裁量収入の10%から12.5%に引き上げ、また、修士課程以上でのローン利用者については、返済額上限は12.5%、返済免除までの期間は30年に変更。
- 「パーキンスローン(Perkins Loan)」プログラムの廃止。また、2018年7月以降は、「公職ローン返済免除(Public Service Loan Forgiveness)」プログラム及び「スタフォードローン(Stafford Loan)」プログラムを廃止。但し、現在これらのプログラムを利用している者には現行システムを適用。
- 低所得層学生を対象とした「ペルグラント(Pell Grant)」の年中支給を再開。但し、学生1人あたりの上限は前年と同額で、ペルグラント剰余金約40億ドルを同プログラムから他の用途へ移行。
- 「補助教育機会助成(Supplemental Educational Opportunity Grant)」プログラムを廃止し、働きながら学ぶ学生のための「連邦ワークスタディ(Federal Work-Study)」プログラム予算を約半額の5億ドルに削減。
- 大学進学準備プログラムの「トリオ(TRIO)」及び「ギアアップ(GEAR UP)」プログラム予算をそれぞれ10%と30%削減し、「マクネア学士号取得後達成プログラム(McNair Postbaccalaureate Achievement Program)」及び「教育機会センター(Educational Opportunity Center)」を廃止。
- 米国科学財団(National Science Foundation:NSF)予算11%減、国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)予算22%減、エネルギー省科学局(Department of Energy Office of Science)予算17%減。
- 「アメリコア」(AmeriCorps)プログラムを廃止し、全米人文科学基金(National Endowment for the Humanities)及び国務省(Department of State)国際交流プログラム予算を大幅に削減。
2017年5月24日
Inside Higher ED:Trump Budget Would Slash Student Aid and Research