2018年7月10日、米国科学工学医学アカデミー(National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine)はヒトの生物検体の検査を含む研究を実施する場合の研究参加者に対する検査結果の報告に関する指針を提示した報告書「参加者に対する個々の研究結果の報告(Returning Individual Research Results to Participants)」を発表した。
本報告書は、研究者及び研究機関に対し、個々の研究参加者の検査結果を報告するか否か、報告する場合はどのような手段で報告するかを、定期的に検討すべきと提案している。被験者の参加を含む生物医学研究において、個々の被験者に対して検査結果を報告すべきか否かに関しては、参加者の要請があれば無条件に結果を報告すべきという意見と、信頼性の高い認可された研究機関で行われた検査結果のみを報告すべきという意見が対立している。
連邦規則においても、例えば、メディケア・メディケイドサービスセンター(Centers for Medicare&Medicaid Services:CMS)は、「1988年臨床検査室改善修正法(Clinical Laboratory Improvement Amendments of 1988:CLIA)」の下で認可された研究機関以外で行われた検査結果については、患者への報告を禁じている一方で、「1996年医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(Health Insurance Portability and Accountability Act of 1996:HIPAA)」では、研究機関に関係なく、参加者からの要請があった場合には検査結果の報告を義務付けるなど、一貫性がないものの、最近では透明性を向上させる傾向にある。
本報告書を作成した委員会の委員長を務めたユタ大学(The University of Utah)教授のジェフリー・ボトキン(Jeffrey Botkin)氏は、CLIA法及びHIPAA法に縛られるのではなく、参加者との間で結果に関するコミュニケーションをとる方向に移行すべきとしている。また、研究者に対し、コミュニティグループ及び患者擁護団体と協力し、参加者の社会・経済的地位に関わらず、個人の検査結果報告に関する決断を下す上で、参加者のニーズ・価値を勘案することを提案している。
なお、本報告書は、以下より閲覧可能。
National Academies Press:Returning Individual Research Results to Participants
National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine:Individual Research Results Should Be Shared With Participants More Often, Says New Report;Recommends Framework for Decision-Making