【ニュース・アメリカ】米国科学工学医学アカデミー、科学の開放性の推進に向けた提案事項を取りまとめ

2018年7月17日、米国科学工学医学アカデミー(National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine)は科学の開放性を推進するための提案事項をまとめた報告書「計画的なオープンサイエンス(Open Science by Design)」を発表した。

 

本報告書は、科学の開放性をさらに推進するためには、科学出版物の経済的側面や研究事業における文化的障壁などを含む様々な問題を克服する必要があり、学術コミュニティ及びその他の研究ステークホルダーが協力し、本報告書が提示する「計画的オープンサイエンス」枠組みを使用して、研究プロセス全体における開放性を促進するよう提案している。

 

研究事業体はオープンサイエンスがもたらす多数の利益を認識し、科学の開放性において既に大幅な進歩を遂げていることを認めているが、データ・コード・研究成果の共有は、より一般的になりつつあるとしながら、全分野において日常的に共有されている訳ではなく、大半の科学論文もアクセスできるのは購読登録者のみとなっていることを指摘した。

 

特に大きな障壁となっているのは、学術界における文化と、オープンサイエンスの実践が適切に評価されない奨励システムであるとしている。具体的に、研究者は、研究助成と昇進を確保するために、論文を発表しなければならないというプレッシャーに直面しており、特にキャリア初期の研究者に対するプレッシャーが強いことから、従来の閉鎖的システムが継続される可能性があると警告している。

 

この問題を解決するために、同報告書は大学等に対し、連邦政府や民間などと提携して、オープンサイエンスアウトプットのインパクトを含む研究の影響力を適切に評価するアプローチを考案することを提案している。また、もう1つの主要問題は、研究論文の無料公開で、購読登録制を採用する科学誌との間でギャップが生じていることとしている。科学学会の多くは、学術誌出版からの利益に依存していることから、一部では研究論文の無料公開が非常に困難な例もあるものの、研究普及の推進のためにはニーズの変化に対応する必要があり、専門学会は現行の出版戦略から計画的なオープンサイエンスを促進する新たな戦略へと移行すべきと提言している。さらに、大学に対しては、大学院教育の通常カリキュラムの一環として、オープンサイエンス及びデータ管理のベストプラクティスに関する訓練を提供すべきとした。

 

なお、本報告書は、以下より閲覧可能。
National Academies Press:OPEN SCIENCE BY DESIGN

 

National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine:Report Proposes Recommendations and New Framework to Speed Progress Toward Open Science

地域 北米
アメリカ
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